20年後の911
今年の9月11日は、アメリカで起きた同時多発テロ事件から20年目になる。
池澤夏樹は『新世紀へようこそ』というメールマガジンをまとめた同名の本の「まえがき」の中でこう書いている。
「われわれは2001年の9月11日から真の21世紀に入りました。結局のところ人間はこういう形でしか新世紀に入ることができなかった。」
20年後の9月は、その後に起きた数多くの出来事が進行している。2001年9月11日の出来事は「20年前のひとつ出来事」でしかないかのように埋もれてしまっている。あの時から、その後、あまりも多くのことが変わってしまった。
テロリストたちは4機の旅客機をハイジャックし、2機がニューヨークの世界貿易センタービルに突入し、1機はペンタゴンに同様に突入した。そして、最後の1機はホワイトハウスか連邦議会の議事堂への突入を試みたが乗客の抵抗により途中で墜落した。
これらの出来事はなぜ起きたのか。なぜ彼らは、それほどアメリカを憎んだのか、と考えるのが普通ではないのだろうか。だが、アメリカが行ったのは、テロを起こしたアルカイダを匿っているというアフガニスタンへの報復攻撃だった。この事件が起きた直後、アメリカ国内はテロと戦う団結の一色になった。リベラル系のメディアでさえも、アフガニスタンへの報復攻撃を支持した。テロと戦争は違うものである。その常識が省みられることはなかった。ハイジャック犯の19人を除くと、この日のテロ事件で2977人が亡くなったという。さらにテロ現場での負傷者や救助活動を行った消防士や警察官などが、その後、様々な呼吸器系疾患やがんを発症し、死亡した者も数多いという。もちろん、この惨劇で家族や近親、友人を亡くした人々の深い悲しみはある。しかし、だからすぐに武力で報復をするのは違う話である。このテロがなぜ起きたのか、このテロをなぜ防ぐことができなかったのか。アフガニスタンに巡航ミサイルでの攻撃やクラスター爆弾を落とす前に、それらの問いに答えるべきだったのだ。
しかしながら、池澤夏樹が書いたように「結局のところ人間はこういう形でしか新世紀に入ることができなかった」。この日からアメリカはテロ戦争の泥沼に入っていった。そして20年後の今、アメリカはヘイトクライムが頻繁に起こり、国民感情が分断した国になってしまった。
アメリカは、なぜ報復行為に出たのか。なぜならば、中東の小国に対して自分たちは軍事的に圧倒的に有利だと思っていたからだ。ところが、最後はアメリカの撤退で終わったのである。
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