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November 2020

November 23, 2020

『左翼の逆襲』を読んだ

 『左翼の逆襲』松尾匡著(講談社現代新書)を読んだ。

 「人は生きているだけで価値がある」という文言を読んだ時、ネトウヨの「日本スゴイ」を思った。「日本人は日本人であるだけで価値がある」というのがネトウヨの基本的なスタンスである。この「日本人」というのは、日本国籍を持つ者ではない。日本国籍を持つ者としてしまうと、外国人も含まれるからである。それではなんであるのかというと、よくわからない。よくわからないのであるが、いわゆるニッポン人という括りだとするのならば、これからは嫌韓・嫌中を言っていればすむ状態ではなくなる。「いわゆるニッポン人」の中で格差が進み、「いわゆるニッポン人」という括りができなくなるのである。

 いわば安倍政権時代は「いわゆるニッポン人」という括りができた時代だった。だからこそ、安倍晋三さんは「日本をとりもどす」とか言い、「日本スゴイ」のネトウヨがはびこる世の中になった。浅狭なナショナリズムがもてはやされる時代だった。菅政権になって浅狭なナショナリズムは依然として続き、ネトウヨも含めた社会的弱者の淘汰が当然のことのように行われている。消費税10%への引き上げは、個人商店や中小零細企業の大きなダメージになっている。この先、さらに格差が続き、広がる世の中になる。

 『左翼の逆襲』で書かれていた東京財団政策研究所の今年の3月の「緊急提言」は、たいへん興味深いものだったので、東京財団政策研究所のサイトへ行って読んでみた。

 東京財団政策研究所の「経済政策についての共同提言 新型コロナウイルス対策をどのように進めるか?」を読んでみると、生活支援の現金給付ではなく融資、つまり貸し付けにしているのはいかにも今の政権が好きな提言である。ベーシックインカムなどというものは、口にもしたくないのであろう。

 企業への支援政策も、今の政権向きの内容になっている。「緊急提言」はこう述べている。

 「「雇用の7割程度、付加価値の5割以上」を占める中小・零細企業への支援は不可欠とされる。しかし、度重なる天災・自然災害ごとに中小企業へ支援するのはややもすれば過度な保護になり、新陳代謝を損ないかねない。実際、国際的にみて我が国の開廃業率は低く推移してきた。廃業率は我が国が 3.5%である一方、最も高い英国で 12.2%、独でも 7.5%となっている(数値は 2017 年、独は 2016 年)。低い開廃業率は生産性の低い企業が市場に留まっていることも示唆する。」

 ようするに松尾先生が書かれているように、闇雲な中小・零細企業への支援は、生産性の低い企業を存命させているというのである。「緊急提言」はこう述べている。

 「しかし緊急時に、支援すべき(=生産性の高い)企業と撤退すべき企業を識別することは難しい。雇用を確保する観点からも中小・零細企業の資金繰り支援は当面の間の緊急措置として、やむを得ない。他方、セイフティーネットとして撤退(廃業)に対する支援も講じるべきだろう。」

 つまり、闇雲に支援はしたくないのであるが、緊急時に支援すべき企業と支援しない企業を区分けするのは難しいので、当面はやむを得ないとしている。その一方で潰れるべき企業は潰し、その支援を行うべきであると述べている。

 この潰れるべき企業は潰れるべきである。潰れることについてのセイフティーネットは、十分に考えるべきであるとする主張は確かにその通りであって、正社員は首を切ることができないというのは、日本は再就職が難しいのでそう簡単には首が切れないのである。そこの対応をきちんとつくり、さあ、バシバシ会社を潰しましょうと言っているのである。このセイフティーネットの議論がベーシックインカムにまで話が進んでいくとおもしろいのであるが、そうした「社会主義」的な政策が出ることはないだろう。生産性の低い企業は潰し、円高で商売をやっていけない企業は海外に出て行けるのならば出て行って欲しいというわけである。

 松尾先生のヨーロッパのレフト3.0の動きについての説明は、大変勉強になる。松尾先生は講演で使用した資料を公開されておりダウンロードができるようになっている。ナマ資料がダウンロードできるのはたいへんありがたい。このダウンロードができる資料も読むことで初めて松尾先生の言われていることがわかると言っても良い。

 福祉、医療、教育、保育、貧困者支援、労働者支援などにMMTを背景にした本格的な大規模な投資をする政策を掲げる政党や政治家が欧米では数多く現れている、と同時にまだまだ課題が多い状況になっていることは、日本にいて日本語のメディアから情報を得ているとなかなかわからない。興味深いのは、松尾先生が言われているように、彼らの主張は極めて古き社会主義、レフト1.0に似ているということだ。レフト1.0の主張に戻り、レフト2.0の過ちを正していくことがこれからも続いていく。

 上にネトウヨがいう「日本スゴイ」はこれから成り立たなくなると書いたが、実際のところ格差はさらに進み、「いわゆるニッポン人」という括りができなくなるのであるが、右派ポピュリズムが成り立つためには「いわゆるニッポン人」の浅狭なナショナリズムが必要であるため、マスコミは拡大していく格差の実体を隠し、「いわゆるニッポン人」というものがあるものとして、「日本スゴイ」と嫌韓・嫌中を煽ることをこれからも続けていくだろう。

「私たちは「左翼」を忘却のかなたから呼び起こさないといけません。」

「昭和の大女優山田五十鈴が戦後レッドパージの時代にアカ呼ばわりされ、「貧乏を憎み、誰でもまじめに働きさえすれば、幸福になれる世の中を願うことが、アカだというのなら、わたしは生まれたときからアカもアカ、目がさめるような真紅です」と言ったという逸話を思い出しました。まさにそうこなくっちゃですよ。」

 こうした文章を読むと、おおっと高揚する。その通りである。松尾先生はいいわー。

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November 15, 2020

アメリカ社会の分断は続く

 日本では安倍政権が終わり、アメリカではトランプ政権が終わった。この二人は「同じ」ところが数多くあり、安倍が終わりトランプも終わるだろうなと思っていたら、その通りになった。そして、安倍時代が終わってもなにも変わらないように、トランプ時代が終わってもアメリカはなにも変わらない。人々の分断はさらに進行していくであろう。

 バイデンでは分断をなくすことはとてもできない。今回の選挙はトランプかバイデンかという、どちらを選んでもアメリカの未来はない選挙であった。日本の政治の劣化も著しいが、アメリカの政治もまた劣化が激しいものになっている。次期副大統領のカマラ・ハリスも、若い世代にはあまり評判は良くない。女性として初、またアフリカ系・アジア系としても初の副大統領が誕生するのは確かなことであるが、何ができるのか、何をどうしようとしているのかということとは話は別である。

 なぜアメリカの政治は国民の声が届かないものになってしまったのか。例えば、アメリカは大学の費用が高額であり、学生たちは卒業時に膨大な借金を抱えて卒業をすることになる。しかるべき給与の職業に就職できたとしても返済には何年、あるいは10年以上も月収の四分の一から半分をローンの返済にしなければならないという。そうした状態であれば、当然のことながら結婚をして新居を築こうという気にもならず、また結婚したとしても子供を作る余裕はなく、かくて少子化が進むのである。

 さらには、就職すらできない者たちはホームレスになる危機と隣り合わせになることになる。教育費が異常に高額であることと、奨学金という学生ローンが巨額になることは、若い世代にとって切実な問題である。民主党の大統領候補であったバーニー・サンダースや、エリザベス・ウォーレンらは、高等教育のほぼ全額無償化と、学生ローンの免除を提案していたという。高等教育を受けた者たちがホームレスになるような社会では、国の将来が危ぶまれるからである。

 しかしながら、バーニー・サンダースも、エリザベス・ウォーレンも、合衆国大統領候補にすらなれず、高額な教育費に対してとても何かするとは思えないジョー・バイデンが大統領になるのである。学生ローンについて何かするとは思えないということでは、トランプもまた同じだ。バーニー・サンダースのような人物もいるのだから、政治は若い世代の声を聴かないのではなく、若い世代の声を聴く政治家は大統領にはなれないということなのであろう。かくてアメリカ社会の分断は続くのである。

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