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August 04, 2019

映画『新聞記者』を見た

 少し前の日になるが、話題の映画『新聞記者』を見た。

 この映画は作品としては、わかりにくい。

 この映画を見るには、ふたつの前提がある。ひとつ目は、今の2019年の日本の政治とマスメディアの状況を理解していなければ、この映画の内容は理解できない。もうひとつの前提は、マスコミは権力と対峙しなくてはならない、マスコミは権力を監視し、その不正義を社会に告発しなくてはならないという意識があるということである。

 今のこの国では、政界と経済界とマスコミと学会の4つは結託と忖度と癒着の温床の場といっても良い。新聞社もまた、いち企業であり報道機関としての社会倫理よりも営利目的が優先されている。新聞は権力を監視するものであるべきだという。しかし、新聞社自身がいち企業である以上、スポンサーなり購買数なりを意識しないと商売として成り立たないということはある。

 また、数多くの分野が高度な専門知識で動いているこの現代社会をマスコミが監視するというのは困難であろう。読者もまた紙面の全部が調査報道や権力の不正弾劾記事になっていることを求めているわけではない。しかしながら、そうした記事がまったくなくても良いというわけでもない。

 情報テクノロジーが一般化した現在、政府も情報操作を行っていることは当然であり、政府なり官庁なりがフェイク情報を流すことはあるだろう。問題なのは、それがなにを目的としているのかということだ。

 安倍政権の「悪さ」とは、やっていることが国民全体の利益ではなく、特定の者たち、オトモダチだけの利益になっているということだ。もはや、利益とは国家全体の利益ではなく、特定の集団なり、組織なり、人々だけの利益しか得ることができなくなっている。この国の政府は、国民全体が豊かになるということを放棄したというか、そもそもどうすればそれができるのかまったくわからない者たちの集団になっている。衰退していく国では、全体のパイを増やしていくのではなく、減っていくパイの中で、いかに多くのパイを獲得するかが目的になる。

 この映画の最後のシーンで内調の多田が杉原に「この国の民主主義は形だけでいいんだ」という。このコトバは、今のこの国の政治状況を表している。なぜ、形だけでいいのだろうか。この場合における国とは、ある特定の組織や集団や人々ではなく、その社会を構成する大多数の人々である。「この国の民主主義は形だけでいいんだ」でいいわけがなく、形も内容もしっかりとしている民主主義でなければ国家として脆い。国民全体が豊かでなくては、教育にせよ軍事にせよ、なにもできなくなる。

 映画の後半での、政府が生物兵器を研究を目的とした大学を設置するという話の展開には、前半は緊張感があるリアリズムの話であったのに、突然、現実からかけ離れた話になってしまった。杉原が内調の官僚である自分の名前を出して良いというが、そもそもこの大学誘致については杉原は部外者であり関係がない。その官僚の名前がこの文書の真実性を保証するものとは思えない。この展開には、いささか拍子抜けしてしまった。

 しかし、もともと官僚が偽証しない、公文書を改竄しないということは当たり前のことなのであるが、この国ではその当たり前のことがなされていないという根本的な欠陥がある以上、こうした話の展開もありだとは思う。

 この映画が扱っている題材はいうまでもなく、森友・加計問題だ。森友にせよ加計にせよ、いわばちっぽけな出来事である(だからといって正しいことではないことは当然であるが)。問題なのは森友・加計そのことではなく、本来行うべきことをせずに、森友・加計程度のことしかできないということだ。これらは新聞記者が真実を暴くというようなレベルの話ではない。

 暴くもなにも、森友や加計がおかしいのは当たり前のことであって、さっさと責任者を処罰して終わりにしなければならない。総理大臣だろうと誰だろうと責任をとっととらせて、進むべき方向へ進んでいかなくてならない。それが、そうならない。この程度のことを、官僚が命をかけて内部告発しなくてならならず、新聞記者が暴かなくてはならない。

 映画『新聞記者』が映画としてはおもしろくもなんともないのは、ようするに、もはやこういう状況なのだということである。それを表現している作品として、この映画は価値がある。

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