映画『主戦場』を観てきた
先日、渋谷のイメージフォーラムでドキュメンタリー映画『主戦場』を観てきた。いわゆる従軍慰安婦問題を扱った映画だ。
何度もここで書いていることを繰り返して恐縮であるが、私は河野談話の何がどう悪いのかさっぱりわからない。河野談話は、まっとうなことをいっている。従軍慰安婦問題については、河野談話がいっていることで、これ以上もこれ以下もなく、その通り、で話は終わると思っている。
日韓の歴史には、慰安婦問題以外にも江華島事件や閔妃殺害事件など数多くの解明しなくてはならない課題がある。日本の朝鮮統治とは、そもそもなんであったのかという歴史的な全貌はまだ明確にはなっていない。日韓の間には、考えるべきことは数多くあるのである。慰安婦問題については、河野談話で話は終わるはずだ。
ところが、なぜかこれで話が終わりにならない。韓国から何度も何度も慰安婦問題が取り上げられ、その都度、日本人は嫌韓感情を高める。日韓関係はますます険悪になるということが繰り返される。
その一方で、数多くの韓国の人々は日本に観光に訪れ、数多くの日本の人々は韓国を旅行している。日韓のお互いの経済依存度は高い。韓国では日本の話題は大きな関心になり、日本ではK-POPや韓国映画のファンは多い。険悪な関係になっているのは日韓の政府だけだ。このように日韓関係の全体像は、ねじれた構造になっている。
『主戦場』が述べる「強制連行はなかった」論のバカバカしさや、「性奴隷ではなかった」論のあまりにも人権無視の発言はその通りであり、それらを反証することは必要なことだ。しかしながら、あの時代、強制連行であったこともあれば、そうではなかったこともあったであろう、性奴隷であった者もいれば、職業としての売春婦であった者もいたであろうということにも言及すべきだとと思う。いや、そうしたキレイゴトをいっているからヘイトがはびこるのであり、ヘイトはきちんと否定すべきであるという見解があることはわかるが、河野談話にあるように「その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、さらに、官憲等が直接これに加担したこともあった」ということは、そうでなかったこともあったということだ。ただし、そうでなかったこともあったということで、日本は一切悪いことをしていないということにはならない。
日本人の多くは、日韓の歴史を知らないといわれている。なぜ知らないのかというと、中学や高校の教育で教えていないとよくいわれている。もちろん、歴史教科書の記述内容については数々の問題があるが、少なくとも高校の歴史教育は明治以降の日韓関係の歴史について教えるべきことは教えていると思う。学校の現場の都合で近現代史は教えないということはあるかもしれないが、歴史教育としては教えるべきことは教える内容に含まれている。学校で近現代史まできちんと教えることや、学校卒業後も自己の教養として歴史知識を持ち続けるということは別の話である。
高校の歴史知識を基盤として、日韓の近現代史の本を何冊か読めば河野談話のまっとうさがよくわかるし、ネトウヨがいっていることがいかに愚かしいことかはわかる。さらには韓国が日本にいっていることの極端さもわかるであろう。それで終わり、それだけですむ話であるはずだ。
ところが、そうはならない。これはもはや歴史がどうこうという話とは別のことなのであろう。
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