朝鮮戦争が終わろうとしている
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、核実験と大陸間弾道ミサイルなどの発射実験を中止し、核実験場を廃棄すると伝えたという。金正恩は27日に韓国の文在寅大統領と板門店で会談する予定になっている。
核・ミサイル実験中止と核実験場廃棄をトランプとの会談で場で宣言するのではなく、その前に自分から言ったということは興味深い。トランプとの会談の場での宣言であれば、朝鮮半島の非核化の成果はトランプの手腕によるものという声が出てくるであろうが、その前に自分から宣言ですることで、この成果は金正恩の意思と文在寅の外交によるものになったと言えるだろう。朝鮮半島のことは朝鮮民族が決めることであり、アメリカや中国が決めるものではないという想いがあるからであろう。もちろん、その通りである。
『ニューズウィーク日本版』(2018年4月17日号)でのニューズウィークのコラムニストで元CIA諜報員であったというグレン・カールのコラム「世界は踊る、金正恩の思惑で」は大変興味深いものであった。
グレン・カール氏はこう書いている。
「北朝鮮は国家として生き残りを求めている。自国に有利な条件での韓国との統一も求めるだろう。韓国は現状維持、そして北朝鮮の変化によって緊張が緩和されることを求める。中国は北朝鮮がおとなしくなることと、朝鮮半島からの米軍撤退を求めている。アメリカは、何よりも平和な現状維持を望み、そして北朝鮮の核の脅威を排除したいと考えている。日本は攻撃されないことを望み、アメリカによる地域および朝鮮半島の安全保障を維持したいと考えている。」
「結局のところ、北朝鮮は核開発やミサイル発射、核実験を当面は凍結する。アメリカは北朝鮮に侵攻せず、脅威レベルを下げることになるだろう。そして誰もが勝利を宣言する。」
「地域の長期的な力関係には変化が訪れている。中国の力は増し、韓国は北朝鮮の脅威から自力で身を守れるほど強くなった。韓国はまた、中国はすぐ隣にあり、アメリカは海の遠方で、その力の及ぶ範囲は以前ほど広くないことにも気が付いている。時がたつにつれ、韓国から米軍が撤退する可能性は高まり、それにつれて戦争勃発の危険は低くなる。」
このニューズウィークのコラムは金正恩のミサイル発射実験や核実験凍結の宣言の前のことであり、現状はグレン・カール氏が予測した通りになりそうだ。核実験の凍結については、実験場が度重なる核実験のため施設が被害を受けていて閉鎖する予定であったという情報もあるようだ。張り子の核の虎を掲げてきた金正恩の思惑通りであると言えば確かにそうであろうが、いずれにせよ紛争になることから遠ざかることは良いことである。
このブログで何度も書いてきたことであるが、単純な北と南の双方の関係だけで言えば、この双方は対立や紛争を望んではいない。アメリカや中国など周辺の国々が話をややこしくしているのだ。
もちろん、だからといって北朝鮮は核兵器を放棄するわけではなく、今後も軍事力を誇示するであろう。しかしながら、それはどの国もがやっていることである、北朝鮮(とか中国とかロシアとか)はそれを行ってはならないとするのはおかしなことである。根本的に日本での北朝鮮についての報道は、北朝鮮は悪という偏りがある。軍事力を誇示することは問題ではなく、その上で平和な状態を保つのが国際関係である。その意味では、トランプと金正恩の会談がどうなるかが気がかりである。あるいは、トランプ・金会談がどのような結果になろうとも、北朝鮮と韓国は対立回避の道を今後も進んでいくかもしれない。
今、朝鮮半島では現代史的な出来事が起きている。結局、我が国の政府は、北朝鮮は国難だと騒ぎ、核ミサイルで攻撃されると右往左往し、使いものにならない高額のミサイル防衛兵器をアメリカから購入するという無能極まりないものになっている。今の日本外交の最大の欠陥は日本が北朝鮮と直接に相対するということをしないということだ。この国の外交は必ずアメリカとの関係を経由して物事を進めようとする。それがどれだけ異常なことなのかわかっていない人が多い。
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