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April 2018

April 22, 2018

朝鮮戦争が終わろうとしている

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、核実験と大陸間弾道ミサイルなどの発射実験を中止し、核実験場を廃棄すると伝えたという。金正恩は27日に韓国の文在寅大統領と板門店で会談する予定になっている。

 核・ミサイル実験中止と核実験場廃棄をトランプとの会談で場で宣言するのではなく、その前に自分から言ったということは興味深い。トランプとの会談の場での宣言であれば、朝鮮半島の非核化の成果はトランプの手腕によるものという声が出てくるであろうが、その前に自分から宣言ですることで、この成果は金正恩の意思と文在寅の外交によるものになったと言えるだろう。朝鮮半島のことは朝鮮民族が決めることであり、アメリカや中国が決めるものではないという想いがあるからであろう。もちろん、その通りである。

 『ニューズウィーク日本版』(2018年4月17日号)でのニューズウィークのコラムニストで元CIA諜報員であったというグレン・カールのコラム「世界は踊る、金正恩の思惑で」は大変興味深いものであった。

 グレン・カール氏はこう書いている。

「北朝鮮は国家として生き残りを求めている。自国に有利な条件での韓国との統一も求めるだろう。韓国は現状維持、そして北朝鮮の変化によって緊張が緩和されることを求める。中国は北朝鮮がおとなしくなることと、朝鮮半島からの米軍撤退を求めている。アメリカは、何よりも平和な現状維持を望み、そして北朝鮮の核の脅威を排除したいと考えている。日本は攻撃されないことを望み、アメリカによる地域および朝鮮半島の安全保障を維持したいと考えている。」

「結局のところ、北朝鮮は核開発やミサイル発射、核実験を当面は凍結する。アメリカは北朝鮮に侵攻せず、脅威レベルを下げることになるだろう。そして誰もが勝利を宣言する。」

「地域の長期的な力関係には変化が訪れている。中国の力は増し、韓国は北朝鮮の脅威から自力で身を守れるほど強くなった。韓国はまた、中国はすぐ隣にあり、アメリカは海の遠方で、その力の及ぶ範囲は以前ほど広くないことにも気が付いている。時がたつにつれ、韓国から米軍が撤退する可能性は高まり、それにつれて戦争勃発の危険は低くなる。」

 このニューズウィークのコラムは金正恩のミサイル発射実験や核実験凍結の宣言の前のことであり、現状はグレン・カール氏が予測した通りになりそうだ。核実験の凍結については、実験場が度重なる核実験のため施設が被害を受けていて閉鎖する予定であったという情報もあるようだ。張り子の核の虎を掲げてきた金正恩の思惑通りであると言えば確かにそうであろうが、いずれにせよ紛争になることから遠ざかることは良いことである。

 このブログで何度も書いてきたことであるが、単純な北と南の双方の関係だけで言えば、この双方は対立や紛争を望んではいない。アメリカや中国など周辺の国々が話をややこしくしているのだ。

 もちろん、だからといって北朝鮮は核兵器を放棄するわけではなく、今後も軍事力を誇示するであろう。しかしながら、それはどの国もがやっていることである、北朝鮮(とか中国とかロシアとか)はそれを行ってはならないとするのはおかしなことである。根本的に日本での北朝鮮についての報道は、北朝鮮は悪という偏りがある。軍事力を誇示することは問題ではなく、その上で平和な状態を保つのが国際関係である。その意味では、トランプと金正恩の会談がどうなるかが気がかりである。あるいは、トランプ・金会談がどのような結果になろうとも、北朝鮮と韓国は対立回避の道を今後も進んでいくかもしれない。

 今、朝鮮半島では現代史的な出来事が起きている。結局、我が国の政府は、北朝鮮は国難だと騒ぎ、核ミサイルで攻撃されると右往左往し、使いものにならない高額のミサイル防衛兵器をアメリカから購入するという無能極まりないものになっている。今の日本外交の最大の欠陥は日本が北朝鮮と直接に相対するということをしないということだ。この国の外交は必ずアメリカとの関係を経由して物事を進めようとする。それがどれだけ異常なことなのかわかっていない人が多い。

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April 15, 2018

『オリバー・ストーンONプーチン』を観る

 先日、NHK-BSで『オリバー・ストーンONプーチン』前後編を観た。映画監督のオリバー・ストーンが、約2年にわたりロシア大統領プーチンに行ったインタビューのドキュメンタリー番組である。ちょうど同じ頃にNHK-BSで『プーチンの復讐』前後編というPBSの「フロントライン」が制作したプーチンとロシアのドキュメンタリー番組もやっていて、この二つの番組を観たことで大変勉強になった。

 なにが大変勉強になったのかというと、この二つの番組の内容がまったく正反対の内容であり、国際情報は対立している双方の国側の情報を見ることがいかに必要かであるかということがよくわかるということである。

 オリバー・ストーンの番組はおもしろかったなあと思っていたら、この番組の書籍化した本が出ているという。オリバー・ストーン著『オリバー・ストーン オン プーチン』(文藝春秋)である。なんと、そうなのかとさっそく池袋のジュンク堂本店で買ってきて読んでみた。

 読んでみると、まず、プーチンへのインタビューテレビ番組は4回のシリーズになっていて、NHK-BSでやった前後編2回の番組はそのダイジェスト版であった。日本ではNHK-BSでのこの放送の後、Amazonジャパンで4回の全話を有料で見ることができるようになり、さらにDVDが4月から販売されている。書籍版にはこの4回の番組で放送していないシーンも含まれている。Amazonで4回の全話を見てみると、なるほどこういう番組だったのかと改めて知り、この内容があまりにも興味深いものであったので、文藝春秋の翻訳版の原本の"Oliver Stone Interviews Vladimir Putin"をAmazonで注文をして入手し読んだ。本当はプーチンがなにを言っているか正確に知るにはプーチンの会話をロシア語で理解する必要があるが、オリバー・ストーンのインタビューはロシア人の通訳者が英語への通訳を介してのインタビューであったので英語でのオリバー・ストーンとプーチンの会話を読んでみたいと思ったのだ。4回の番組をまた見るのはAmazonでいつでも見れると思ってDVDを買うのは必要ないかなと思っているのであるが、これも近々に購入するであろう。それほど関心が持てるものだった。

 かつてプーチンは、ドイツのミュンヘンで開催された第43回「ミュンヘン国防政策国際会議(Munich Conference on Security Policy)」で痛烈にアメリカの政策を批判する演説を行った。この時プーチンが言ったアメリカ批判は至極まっとうで言っていることは間違っていない。多かれ少なかれ、世界の数多くの国々の外交担当者が内心思っていることであり、それをプーチンは堂々と公の場で言ったのだ。だだし、その一方で紛れもなき力関係で成り立っている国際社会で道理が通ることは大変難しいこともまた事実である。もちろん、だからと言ってプーチンの主張はその通りであって、その価値が些かも揺らぐことはない。ただし、アメリカがやっていることは常に正しいわけではないように、ロシアの側もまただからと言って常に正しいことをやっているわけではなく、このことが国際社会とロシアの間を複雑なものにしている。

 ところが、このミュンヘンでのプーチンの演説はドキュメンタリー番組『プーチンの復讐』では徹底的にプーチンは悪というように描かれている。プーチンの言っていることにも理があり、自国の外交政策にも誤りがあるとは決して思わないのである。このプーチンは悪、ロシアは悪というスタイルはドキュメンタリー番組『プーチンの復讐』の中で一貫としてある。

 欧米における国際認識では、ロシアはつねに悪役である。極東の島国の民である私からすれば、なぜそこまで最初からロシアが悪いという前提から始まるのか理解できないことがある。とにかく欧米ではロシアは悪役である。このへん、ヒトラーが率いたナチス・ドイツの扱いと同じだ。欧米にはロシアへの恐れがあるというか、ウラジミール・プーチンという人物への恐れがあると言えるだろう。

 このプーチンは悪のイメージに真っ向から反対の異を唱えるのが映画監督のオリバー・ストーンである。

 私がプーチンへのインタビューに興味を持ったのは、このブログで以前書いたことがあるが、法政大学の下斗米伸夫教授の『プーチンはアジアをめざす』(NHK出版新書)と『宗教・地政学から読むロシア』(日本経済新聞出版社)を読んで、欧米から非難されているウクライナ問題はロシア側にも言い分があるということを知っていたからだ。ロシアには、アメリカやヨーロッパとは違うものがある。そのことを理解しているといないとでは、ロシアに対するイメージは大きく異なる。そして、欧米においても日本においても、そのことを理解しているロシア論者は数少ない。このことが、オリバー・ストーンのプーチンへのインタビューの中でも語られており、下斗米先生の主張と重なるものが多い。

 もうひとつは、オリバー・ストーンは『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』の中で、ナチス・ドイツを降伏させたのは英米ではなくソ連であったことを述べていたからだ。英米の第二次世界大戦の歴史観は連合軍がファシズム国家を倒したというものである。このファシズム国家とは言うまでもなくドイツ、イタリア、そして我が国である。連合軍にはソ連も含まれるが、英米の歴史観では、我々(英米)がファシズム国家を倒したというものである。しかしながら、オリバー・ストーンは『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』にあるソ連・ロシア観とは、ソ連・ロシア側にも言い分はあるということだ。連合軍がナチス・ドイツに勝ったことについて、どちらがたいへんだったのかと言えば英米ではなくソ連であった。ソ連がナチス・ドイツを敗北に追い込んだのである、この視点はプーチンへのインタビューにも一貫としてあり、簡単に言えば、ロシアは悪くはない、ロシアは悪としているのは欧米なのであるということだ。

 ソ連が崩壊した後、もはやNATOは必要がなくなるものであった。プーチンもまた米ソの対立はなくなり、NATOはなくなると思っていたという。どころが、その後もNATOはあり続けている。なぜか。欧米の統合として敵国が必要だからであるとプーチンはインタビューの中で述べている。本当は全地球上を覆う現代の交通と情報テクノロジーによってグローバルな人類社会を作ることは可能だ。しかしながら、そうはならない。人間の社会は社会としてのまとまりを持つために「敵」を必要としているからだ。こうなると地球外生物が地球を侵略しにこなくては人類というまとまりを持つことはできないということになる。

 今起きているイギリスのソールズベリーで3月4日、ロシアの元情報機関員セルゲイ・スクリパリ氏と娘が神経剤ノビチョクで襲撃されたとされる事件は、欧米とロシアが互いに外交官追放に踏み切る事態に発展しているが、イギリスは襲撃にロシア政府が関与しているという明確を証拠はいまだに提示されていない。これなども、ロシアは悪という偏向があるからである。その中でオリバー・ストーンは単身、ロシアに行ってプーチンにインタビューをするということをやったのである。

 我々はこのインタビューから、ロシア側から見た視点という西側のメディアからは得ることができないことを学ぶことができる。

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