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March 03, 2018

国際常識を知らない国際政治学者

 先々週の「ニューズウィーク日本版」のコラム記事「北朝鮮スリーパーの虚実」は大変興味深かった。

 とある国際政治学者と称する人がテレビ番組の中で、一般市民を装った「スリーパーセル」と呼ばれる北朝鮮のテロリストや工作員がソウルや東京、大阪に潜伏していて、北朝鮮と戦争が始まり金正恩が殺害された場合、独自のテロ活動を開始するということを述べたという。

 当然のことであるが、誰が北朝鮮のテロリストや工作員であることはわからない状態にある。なにしろ、一般市民を装っていると言っているのである。そうである以上、韓国・朝鮮の人々すべてが「スリーパーセル」かもしれないと言っていることを同じだ。言った本人はヘイトではないというようなことを言っているようであるが、これはヘイト以外のなにものでもない。

 北朝鮮のというか北朝鮮以外の国々も情報関係の要員を、日本というか世界の主要国に送り込んでいるということは国家秘密でもなんでもない常識である。その意味において、この国際政治学者と称する人はだから一般市民の韓国・朝鮮の人々を疑えと言っていることになる。しかしながら、今の北朝鮮に日本の市民社会の中で破壊工作を行う長期滞在の工作員を潜伏させる程の余裕があるわけではなく、また情報収集専門の者はテロ行動を行う訓練は受けていない。そもそも金正恩が殺害された場合、北朝鮮の体制は崩壊する。その状況下で、外国でのテロ行動にどのような軍事的意味があるのであろうか。

 記事「北朝鮮スリーパーの虚実」の記者は元CIAの諜報員だったようだ。この人はこう書いている。

「日本に潜伏する北朝鮮のスリーパーは、もっと恐ろしい任務を与えられているという。その主張に裏付けはないが、北朝鮮による拉致問題や、外国での殺人や韓国への攻撃が、その主張にもっともらしさを与えている。
だが実際には、スリーパーはターゲット国に長期間滞在し、その社会と文化に深く組み込まれてしまうため、いざ作戦開始の指令が出ても「普通の生活」を続けたがることがよくある。
また、カウンターインテリジェンス(防諜)に従事する者は、複数の「もし」をつなげて考える危険性を忘れてはならない。「もしXが事実なら、Yも事実かもしれない。そしてYが事実なら、Zも事実かもしれない。そして・・・」というわけだ。こうした思考プロセスはよくあるもので、本来なら信じがたいこと、つまりスリーパー・セルが動き出して国家を脅かすというとっぴな脅威が、目前に迫っているように感じられてしまう。
だが、スリーパーはほぼ例外なく、チャップマンのように社会への浸透を図るものであり、暗殺や妨害工作をするわけではない。逆に、そんなことができる急襲チームを長年無難な仕事に就けて潜伏させておくことは極めて難しい。ハリウッド映画ではあるかもしれないが、現実にはほぼあり得ない。」

 元CIA諜報員でなくても、常識で考えればこの通りであり、現実にはあり得ない。それを国際政治学者と称する人が言うというところに今のこの国の現状がある。

 韓国には、韓国に潜入した北朝鮮工作員の題材にした映画は多い。コメディ映画が多いのであるが、逆から言えば潜入北朝鮮工作員の話などといったことはもはやコメディでしかないということなのだ。ソウルに潜入して、長い間韓国人として暮らし、いざ有事になった際、破壊工作を行うということが、そもそもなんのためなのか誰も理解できないということなのである。

 こうした韓国映画を観るたびに、北朝鮮がやってる事実はこうなんだと言って嫌悪や不安や対立を煽ることではなく、映画はこうして北朝鮮も自分たちと同じ人間なのだというを伝えていることがいかに大切なことであるかがよくわかる。相手側も自分たちと同じなのであるという意識から戦争は生まれない。今、韓国の若い世代には、こうした意識がはっきりと現れ初めている。北朝鮮も韓国も対立は望んでいない。対立を煽っているのは、朝鮮半島以外の国たちなのである。

 平昌オリンピックの後、南北の対話が始まろうとしている。どこぞの国の総理大臣は「対話は終わった」と言い、外務大臣は「微笑外交」にだまされてはならない、南北対話が制裁緩和につながってはならないと言っているが、むしろだまされたふりをしてでも、第二次朝鮮戦争を避けることの方が必要であることがわからないようである。

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