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March 2018

March 31, 2018

朝鮮半島の情勢は大きく動いている

 これからの北朝鮮については、25日の産経新聞に載っていたロシア元駐韓国大使 グレブ・イワシェンツォフ氏の記事が興味深い。

 北朝鮮はなぜ核兵器を持とうとしているのか。別に、金正恩は核兵器テクノロジーに並々ならぬ関心を持ち、軍事技術の発展の探求に生涯をささげているわけではない。核融合工学や弾道ミサイル技術が好きだからではない。どの国の為政者が同じく取り組んでいるように、自国、というか金体制下の北朝鮮という国の安全保障が目的なのである。そのために核兵器を持とうとしているのだ。国の安全保障ができるのならば、刀でも槍でも弓でもなんでもいい。それがこの21世紀の時代であるから核兵器になっているだけのことだ。国の安全を保証してくれさえすればいいのである。その保証の相手は誰なのかといえば、アメリカなのである。

 では、核兵器を持つということが、国の安全保障という目的のための手段になっており、核兵器を持つということで、相手に自国の安全を保証させるという方法が、はたして効果的、かつ効率的で有意味な方法なのであろうかという疑問は、ここでは触れない。不幸なことに、北朝鮮という国はそういう方法を選択せざる得ない国に「なってしまった」としか言えない。なぜそういう国に「なってしまった」のかを論じるには長くなるので、別に機会にしたい。この「なってしまった」というのは、周辺の国々が「そうしてしまった」という点もあり、その周辺の国々の中に我が国も含まれる。しかしながら、それはそれとして、今、目の前にある北朝鮮という国をどうするのかということを考えなくてはならない。

 グレブ・イワシェンツォフ氏はこう述べている。

「米国と国際社会にとっての唯一の出口は、北朝鮮の安全を保証することについて、具体的に、誠実かつ透明に合意することだ。安全の保証は、疑いの余地が何ら出ないような、強固で説得力のあるものでなくてはならない。」

「こうした交渉には、6カ国協議の参加国や国連安全保障理事会の常任理事国からの(北朝鮮に対する)信頼や保証が求められる。北朝鮮には、核・ミサイル関連施設の廃棄や機密情報の提供など、「不可逆的な行動」が求められるからだ。」

 まったくその通りだと思う。

 アメリカ側による北朝鮮への交渉は、これまで幾度となく行われてきたが、その成果を挙げることなく終わってきた。なぜか。グレブ・イワシェンツォフ氏はこう述べている。

「過去の交渉が失敗した理由は単純だ。北朝鮮の敵対者たちがこの国の生き延びる能力を信じず、体制の早期崩壊と、韓国による(東西)ドイツ型の吸収を期待したからだ。朝鮮問題の解決は、米国と韓国、日本が北朝鮮の存在を受け入れ、共存の政策をとるときにのみ可能だ。」

 これもまったくその通りで、ようするにアメリカは北朝鮮の今の体制が長続きするはずはない、続いてはならないとアマタから決めてかかっているのである。これはロシアのプーチン政権に対しても同様で、昔からアメリカという国は自分たちとは違う政治体制の国の存在を認めない国だったが、今のアメリカはさらにその偏向が大きくなっている。

 イギリスで起きた元ロシアスパイ殺害未遂事件の黒幕はロシア政府であるとしてイギリスはロシアの外交官の国外退去を命じたが、アメリカもそれにならい自国のロシアの外交官60人を国外追放にして総領事館も閉鎖した。5月に行われているというトランプ大統領と金正恩の会談で大きな進展があるのではないかと期待されているが、今のこうしたアメリカが果たして北朝鮮の体制を認めるかどうかはわからないというのが現実だろう。

 アメリカは弾道弾迎撃ミサイル制限条約や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から脱退したり、イランとの核合意の見直しを言っている。このことを見れば、アメリカの思惑は金体制が一日も早く国際社会から消え去って欲しいということであり、その後はドイツのように韓国による北朝鮮の吸収併合であり、アメリカが影響力を及ぼすことができる統一朝鮮の確立である。

 ただし、アメリカ政府の思惑は上の通りのものであったとしても、ここにトランプという人間のキャラクターがある。トランプ・金会談で北朝鮮の非核化という大きな進展があれば、それはトランプの功績になる。しかも現代史に残る功績になる。こうなるのに、一番手っ取り早いのはアメリカが金体制の存続を認めるということである。トランプ個人としては、自分の利益になるのならばプーチンだろうと習近平だろうと金正恩だろうと笑顔で握手をするであろう。

 もうひとつの注意すべき点は中国だ。当然のことながら中国は北朝鮮の核兵器があって欲しくないし、朝鮮半島の紛争を求めていないが、だからといってアメリカの影響力が強い統一朝鮮国家ができることは望ましくない。中国は金体制が存続して欲しいのである。このことはロシアも同じだろう。

 今、これからの韓半島・朝鮮半島がどのようなものであれば良いのかを本気で真剣に考えているのは、当事国の韓国と北朝鮮だけなのである。周囲の国々が関心があるのは自国の国益である。国際社会というものは、そういうものだと言うのならばそういうものだとも言えるだろう。韓国の国内には、北朝鮮と和解することに反対をしている勢力もある。文在寅大統領は手腕に注目していきたい。

 なお、東アジアの国際政治の中で日本の存在はまったくない。我が国は、その程度の国になってしまった。

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March 03, 2018

国際常識を知らない国際政治学者

 先々週の「ニューズウィーク日本版」のコラム記事「北朝鮮スリーパーの虚実」は大変興味深かった。

 とある国際政治学者と称する人がテレビ番組の中で、一般市民を装った「スリーパーセル」と呼ばれる北朝鮮のテロリストや工作員がソウルや東京、大阪に潜伏していて、北朝鮮と戦争が始まり金正恩が殺害された場合、独自のテロ活動を開始するということを述べたという。

 当然のことであるが、誰が北朝鮮のテロリストや工作員であることはわからない状態にある。なにしろ、一般市民を装っていると言っているのである。そうである以上、韓国・朝鮮の人々すべてが「スリーパーセル」かもしれないと言っていることを同じだ。言った本人はヘイトではないというようなことを言っているようであるが、これはヘイト以外のなにものでもない。

 北朝鮮のというか北朝鮮以外の国々も情報関係の要員を、日本というか世界の主要国に送り込んでいるということは国家秘密でもなんでもない常識である。その意味において、この国際政治学者と称する人はだから一般市民の韓国・朝鮮の人々を疑えと言っていることになる。しかしながら、今の北朝鮮に日本の市民社会の中で破壊工作を行う長期滞在の工作員を潜伏させる程の余裕があるわけではなく、また情報収集専門の者はテロ行動を行う訓練は受けていない。そもそも金正恩が殺害された場合、北朝鮮の体制は崩壊する。その状況下で、外国でのテロ行動にどのような軍事的意味があるのであろうか。

 記事「北朝鮮スリーパーの虚実」の記者は元CIAの諜報員だったようだ。この人はこう書いている。

「日本に潜伏する北朝鮮のスリーパーは、もっと恐ろしい任務を与えられているという。その主張に裏付けはないが、北朝鮮による拉致問題や、外国での殺人や韓国への攻撃が、その主張にもっともらしさを与えている。
だが実際には、スリーパーはターゲット国に長期間滞在し、その社会と文化に深く組み込まれてしまうため、いざ作戦開始の指令が出ても「普通の生活」を続けたがることがよくある。
また、カウンターインテリジェンス(防諜)に従事する者は、複数の「もし」をつなげて考える危険性を忘れてはならない。「もしXが事実なら、Yも事実かもしれない。そしてYが事実なら、Zも事実かもしれない。そして・・・」というわけだ。こうした思考プロセスはよくあるもので、本来なら信じがたいこと、つまりスリーパー・セルが動き出して国家を脅かすというとっぴな脅威が、目前に迫っているように感じられてしまう。
だが、スリーパーはほぼ例外なく、チャップマンのように社会への浸透を図るものであり、暗殺や妨害工作をするわけではない。逆に、そんなことができる急襲チームを長年無難な仕事に就けて潜伏させておくことは極めて難しい。ハリウッド映画ではあるかもしれないが、現実にはほぼあり得ない。」

 元CIA諜報員でなくても、常識で考えればこの通りであり、現実にはあり得ない。それを国際政治学者と称する人が言うというところに今のこの国の現状がある。

 韓国には、韓国に潜入した北朝鮮工作員の題材にした映画は多い。コメディ映画が多いのであるが、逆から言えば潜入北朝鮮工作員の話などといったことはもはやコメディでしかないということなのだ。ソウルに潜入して、長い間韓国人として暮らし、いざ有事になった際、破壊工作を行うということが、そもそもなんのためなのか誰も理解できないということなのである。

 こうした韓国映画を観るたびに、北朝鮮がやってる事実はこうなんだと言って嫌悪や不安や対立を煽ることではなく、映画はこうして北朝鮮も自分たちと同じ人間なのだというを伝えていることがいかに大切なことであるかがよくわかる。相手側も自分たちと同じなのであるという意識から戦争は生まれない。今、韓国の若い世代には、こうした意識がはっきりと現れ初めている。北朝鮮も韓国も対立は望んでいない。対立を煽っているのは、朝鮮半島以外の国たちなのである。

 平昌オリンピックの後、南北の対話が始まろうとしている。どこぞの国の総理大臣は「対話は終わった」と言い、外務大臣は「微笑外交」にだまされてはならない、南北対話が制裁緩和につながってはならないと言っているが、むしろだまされたふりをしてでも、第二次朝鮮戦争を避けることの方が必要であることがわからないようである。

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