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January 06, 2018

Social DemocracyではなくSaving Capitalism

 BS1スペシャル「欲望の資本主義2018~闇の力が目覚める時~」を見た。

 番組の中でいくつか印象深いものがあったが、そのひとつは資本主義ではなく民主社会主義を標榜する運動がアメリカで高まっているということだ。

 この番組は、あたかも資本主義は悪であるという見方をしている。確かに、バーニー・サンダースは民主社会主義(democratic socialism)であることを述べていた。しかし、今の資本主義の姿を見てアンチ資本主義を言うのには私には違和感がある。産業革命のイギリスに生まれた資本主義は悪であった時期もあるが、すべてそうだったわけではない。

 ロバート・ライシュにせよジョセフ・E・スティグリッツにせよ、今の資本主義の姿は間違っていると説いているが、だからといって社会主義にせよと言っているのではない。今の資本主義は、資本主義本来の姿ではなく、本来の資本主義とは21世紀の今の我々が思っている社会主義のようなものを大きく持っていたのである。労働者の権利や賃金について述べることは社会主義なのではない。そもそも資本主義にはそうしたものがあったのである。

 ロバート・ライシュは著書"Saving Capitalism"の冒頭でこう書いている。

"Simultaneously, centers of countervailing power that between the 1930s and late 1970s enabled America’s middle and lower-middle classes to exert their own influence - labor unions, small businesses, small investors, and political parties anchored at the local and state levels - have withered. The consequence has been a market organized by those with great wealth for the purpose of further enhancing their wealth."

「同時に、1930年代から1970年代後半にかけて、対抗勢力の中心としてアメリカの中間層や下位中間層が影響力を行使することを可能にしてきた労働組合や中小企業、小口投資家、地域や州レベルの政党といった組織などが弱体化し、その結果、財産をさらに強化する目的で富裕層が組織した市場が生まれた。」

 つまり、労働組合や中小企業、小口投資家、地域や州レベルの政党といった組織などが、おのおの独立した個別の見解なり意見なりを持っていたのであり、そうしたものの統合体として民主主義社会が形成されていたのである。本来、資本主義社会であっても労働者の賃金や雇用や健康など保証する制度なり法律なり仕組みなりがあるようにしてきたのである。何度も言うが、それがかつての資本主義社会であったのだ。

 しかしながら、いつしかそうしたものは不要で非効率なものと見なされ、なくなっていった。労働者への賃金を上げれば、労働者はものを買う、ものが売れれば企業は利益を得る、企業は利益を税金として社会に納め、設備に投資し、労働者により多くの賃金を支払う、労働者への賃金を上げれば、労働者はものを買う・・・・以下、このくり返し、このくり返しが続くというサイクルがあればよいのだ。景気の原理とはただこれだけのことであり、シンプルなことなのだ。アメリカでも日本でも戦後の時代にあったのはこの良いサイクルであり、今はないのがこのサイクルなのである。何度も言うが、これだけでいい。

 ではなぜこの良いサイクルがなくなったのかと言えば、お金を労働者の賃金や設備投資というカタチで回すことをかつての時代と比べしなくなったからである。企業は儲けたお金を労働者への賃金や設備投資に回すのではなく、投資家への配当や金融商品の購入に回しているからだ。これは企業だけではない。国もまた税収を教育や福祉や医療に回すのではなく、企業の減税や補助金などに回している。

 結局のところ、国民が公務員や金持ちをしっかりと監視しなくては、公務員や金持ちは自分たちに有利なことだけをやるようになるという、これもまた至極当然の当たり前のことなのである。この当たり前のことを、日本で言えば1980年代頃からしなくなった、できなくなった、ということなのである。

 ということは、国民が公務員や金持ちをしっかりと監視することをし直し、一般人が主体である民主主義を復活させ、かつての資本主義が持っていた労働者の賃金や雇用や健康など保証する制度なり法律なり仕組みなりを、今の時代の基準に照らし合わせて、改めるべきところは改め、足りないことは新たに作成することをしていなかなくてはならない、ということなのである。つまりは、これも至極まっとうな、本来の民主主義に戻りましょうということだ。

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