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September 10, 2017

プーチンが正しい

 5日の産経新聞はこう書いている。

「ロシアのプーチン大統領は5日、訪問先の中国福建省アモイで記者会見し、「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発の)計画をやめない」と述べ、北朝鮮の核問題の解決には、関係各国の対話が必要との従来の主張を繰り返した。インタファクス通信が伝えた。またロシアに制裁を科す米国が、北朝鮮への制裁でロシアに協力を求めている状況を「ばかげている」と述べ、米国を批判した。」

 これはまったくもって、プーチンが正しい。

 北朝鮮の隣国は韓国、日本だけではない。中国やロシアも隣国である。つまり、北朝鮮が核兵器を持てば、その脅威にさらされるのは韓国や日本だけではない。中国やロシアもそうなる。

 しかしながら、中国やロシアは日本のように騒いでいない。中国・ロシアにとって第二次朝鮮戦争が起きて亡命や大量の難民が発生したり、金正恩体制が崩壊して親米国家がすぐ隣にできるのは困ることなのである。核兵器の拡散については危惧しているが、経済制裁にはあまり積極的ではなく、従来から対話と協議によってこの問題を解決するとしている。

 産経などでは、中国やロシアが国連での北朝鮮への制裁決議に従わないことを咎める記事が多いが、重要なことは、国際社会のすべてが北朝鮮に対して制裁行動をとることで北朝鮮を孤立させてはならないということだ。孤立させると、もっとなにをするかわからない国になる。その意味で、中国とロシアがアメリカ主導の北朝鮮への制裁に参加することなく、北朝鮮との独自の関係を保ち続けようとしていることは、実は北朝鮮の暴発を抑えることになっている。

 脅威というのは、「脅威だと思う」ことによって脅威になる。張り子の虎であっても、それが「虎である」と相手が信じれば虎になる。ようは、相手がそのように「思う」か「思わない」かで決まるのである。小野寺防衛相は「脅威となる核兵器を持っている」と述べているが、北朝鮮側からすれば、これこそが彼らの目的であり、その目的は達成されていると言わざるを得ない。

 ことここに至っては、北朝鮮に対して有効なのはアメリカに従うのではなく、中国・ロシアと共同することだ。日中露で北朝鮮を経済援助するということでもいい。ようは自分たちが影響を及ぼすことができる関係の中に、北朝鮮を組み入れることである。排除し疎外させることではない。

 しかしながら、「脅威となる核兵器を持っている」としたことで、ではどうするのかというと、その先はアメリカまかせである。北朝鮮の脅威を煽り、なまじトランプ政権による軍事制裁を期待していて、実際のところ、アメリカはなにもしないということになった場合、どうするのであろうか。

 実質的にアメリカは、北朝鮮が核兵器を持ったとしても、広大な太平洋の向こう側にいるのであまり関心はない。だからこそ日本は「あんなものは脅威でもなんでもありませんねえ」と言っておいて、裏で中国・ロシアと対策を練ることをすればいいのであるが、アメリカとの従属構造の下にある日本は、そうしたアメリカ抜きの外交ができない。

 そもそも日本は北朝鮮をどうしたいのか、アメリカの軍事行動があった方がいいのか、そうではないのかがまったく明確になっていない。脅威は煽るが、北朝鮮とアメリカの動きを対岸の火事を眺めるようにただ拱手傍観しているだけである。

 その一方で北朝鮮のことよりも、本来、やらなくてはならないことがまったく進展していない。今朝の毎日新聞は社説でこう書いている。

「政府の文書管理をめぐり、看過できない動きが起きている。

 国家戦略特区の認定手続きの文書記録について政府は「透明性向上」を理由に新たな基準作りを検討している。だが、その内容はむしろ透明化に逆行し、情報隠蔽(いんぺい)を正当化する意図すら読み取れる。

 加計学園の獣医学部新設をめぐっては安倍晋三首相と学園理事長が親しい友人関係にあることが手続きをゆがめたとの疑いを持たれている。

 内閣府が「総理のご意向」をかさに着て文部科学省に圧力をかけたと受け取れる文書が同省内で見つかった。実際に不当な圧力があったかは「言った」「言わない」の水掛け論でうやむやにされたままだ。

 問題の再発を防ぐのであれば、利害の対立する省庁間の調整過程を記録に残すことをルール化すべきだ。行政文書を保存・公開する意義は、政策決定の結果だけでなく、その経緯を記録する点にこそある。それにより権力の行使に不正がなかったかを検証できる。民主主義の根幹だ。」

 森友・加計問題で明らかになったことは、官庁は自分たちの仕事を記録に残し、それを保存し、公開するというあたりまえの基本的なことをやっていないということだ。このままだと政府に都合が悪いことは記録に残さなくていい、残したとしても国民に公開しなくていいという社会になる。いわば近代社会、民主主義社会の基本中の基本ができていないということになる。何度も書いていることであるが、北朝鮮よりもこっちの方がもっと重要なのである。

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