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August 26, 2017

「アメリカ・ファースト」ではなくなろうとするトランプ政権

 トランプ政権は、アフガニスタンに4千人規模の増派をするとしている。

 アフガニスタン戦争は、ブッシュ・ジュニアが始めた戦争だった。公式の戦争の理由は、アフガニスタンを支配せていたタリバンがオサマ・ビンラディンの身柄を匿ったためというものでる。では、特殊部隊を使ってオサマ・ビンラディンをすでに殺害した現在、戦争を続ける理由はなんなのであろうか。

 トランプは、選挙期間中、オバマのイラクやアフガニスタンからの撤退政策が結果的にISの出現と台頭を招いたものとして批判をしていた。そして、アメリカは中東からの撤退をしないかのようなことを言っていた。トランプはアメリカの直接利益にならない派兵はしないと言い、その一方でアメリカの威信を低下させないとして中東に介入し続けるとしていた。このへん、大きな矛盾がある。大きな矛盾があるのであるが、トランプが大統領になってしまった。

 現代の戦争は、国の正規の軍隊だけが行うのではなく民間の軍事会社も行う。4千人規模の正規軍が投入されるとして、さらに民間軍事会社が傭兵が投入されるであろう。当然のことながら、その会社への支払いをするのは国である。アフガニスタンをどうこうするということではなく、こうした傭兵専門の民間軍事会社も含めた軍産複合体の利益がアフガニスタン戦争の目的になっている。だからこそ、オバマは、アフガニスタンをどうこうするということではなく、きっぱりとアフガニスタンから撤退することにしたのである。悪事に対して、明確にこれを遮断する以外に対策方法はないとしたのである。

 この(軍産複合体にとっては良いことであるが、アメリカ国民にとっては)悪事が、さらに続行されようとしている。

 中東への介入について、カネの面では反対であり、威信の面では介入を続行したがっていた(しかし、ホンネでは反対であった)トランプの側近中の側近であり、オルタナ右翼の首席戦略官バノンは、はっきりとアフガニスタン派兵には反対であった。バノンは中東への介入も北朝鮮への介入も反対であり、バノンの「アメリカ・ファースト」がトランプ政権の「アメリカ・ファースト」であると言ってもいい。

 このバノンが更迭され、トランプ政権から去っていった。今のトランプ政権の国防長官のジェームズ・マティス、国家安全保障補佐官のハーバート・マクマスター、大統領首席補佐官のジョン・ケリーの3人はみな退役もしくは現役の軍人である。今のトランプ政権は、異様な軍人政権になってしまった。

 何度も強調して恐縮であるが、アフガニスタンをどうこうしようというきちんとした政策なり方針なりがあるわけではない。彼らにとって重要なのは、とにかくアフガニスタンに軍事介入し「続ける」ということが重要なのである。軍産複合体の利益が重要なのであって、アフガニスタンに平和と秩序をもたらすとかいうことはどうでもよいことなのだ。かくてアメリカの意味のないアフガニスタン戦争は続いていくのである。

 これは北朝鮮についても同様である。北朝鮮への介入に反対していたバノンを更迭したということは、北朝鮮の危機を煽ることが軍産複合体にとっての利益になるからだ。ただし、北朝鮮の危機について重要なことは、本当の戦争状態に突入しないようにするということである。アメリカが北朝鮮へ直接的な軍事行動をとった場合、北朝鮮は韓国を攻撃するであろう。少なくとも、ソウルは戦場になる可能性が高い。日本への攻撃も起こり得る。中国とロシアも軍事行動をとる可能性はある。東アジアで戦争が起こることは、世界経済にとって好ましいことではない。

 従って、北朝鮮の脅威を煽り、北朝鮮への制裁活動を行いつつ、しかしながら、北朝鮮問題は一向に改善しないというのが最も望ましいということになる。特にアメリカはアフガニスタン介入をやめることはしないため、その分、北朝鮮への対応は片手間になり続ける。つまり、北朝鮮問題はこの先、なにがどう解決することはなく、このままで「北朝鮮の脅威」状態だけが続いていく。

 このことは、日本の軍事企業にとっても望ましいことになる。東京新聞によると、「防衛省は二〇一八年度予算の概算要求で五兆二千五百五十一億円を盛り込む方針を固めた。一七年度当初予算は五兆一千二百五十一億円で過去最大の要求額。」とのことである。

 北朝鮮問題が解決しないのは、このように国際政治や軍事といったこととは別のファクターがあるためいつまでたっても解決しないのだ。いわば、この「別のファクター」にとっては解決してもらっては困るのである。今、この国は北朝鮮のミサイルとやらのことで変わりつつある。ありもしない北朝鮮の脅威を煽り続けてきた者たちにとっては喜ばしいことなのであろう。

 しかしながら、戦争は公共事業であり、経済成長になるという考え方はもうやめるべきだ。本来、国家予算(というか、正しくはこれは国民の税金である)は、軍事ではなくもっと生産的な消費や投資などに使うべきものであり、軍事運用に多額の予算を使うことは、結局は長期的に見て経済成長の低下になるのである。

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