福島原発事故はなかったことにしたい
20日、国の原子力委員会は、原発は運転コストが低い電源であり、地球温暖化や国民生活への影響を踏まえ今後も利用を進めるなどとした原子力政策の新たな指針を取りまとめたという。
政府は21日、この原子力委員会がまとめた原子力政策の長期的な方針を示す「原子力利用の基本的考え方」を閣議決定したという。原子力委員会が長期方針をまとめるのは、2005年の原子力政策大綱以来となり。3.11の福島原発事故後では初めてとのことだ。
3.11の福島原発事故後、始めてのまとめで、この内容である。
このブログで何度も述べているが、核廃棄物の処分も含めた全体のコストで考えれば決して「コストが低い」とは言えないことや、地球温暖化への影響が少ないかのようなわけがわからないことを言い、現状では事故が起きた時の国民生活への影響など言うまでもないことを、さも安全であるかのように喧伝し、どうしても原発を推進し続けていきたいようだ。
しかしながら、国民は福島原発事故を忘れていない。原発は低コストだというウソは、もう通用しない世の中になっている。
ちなみに、原発は排出するCO2が少ない、だから地球温暖化への影響が少ないかのような声があるが、地球温暖化の主な要因であるCO2の排出は、電力発電をなにで行うかだけの話ではない。火力発電を一切やめれば地球温暖化が防げるわけでもなく、さらに言えば、日本国の産業全体が、仮にCO2を排出しなくても、それで解決するというわけではない。電力発電を原子力で行えば、地球温暖化への対策になるかのような発言はお笑いものである。
原発はコストが高く、事故が起きた際の社会的な対策が不十分である。原発の廃炉処分や核廃棄物の処分など、まだまだ工学的に未解決の問題、未開発の技術が多い、というのが現状の姿である。
それでも原発を推進したいとする理由はなんであろうか。それは短期的に見れば、確かに原発は発電のコストが低い、ただそれだけの理由である。電気料金を安くしたいということだ。
経団連の「夏季フォーラム」で、「東日本大震災以降、多くの原発が稼働を停止し、電力料金が高止まりして国際競争力を失っているとの認識で一致。政府の次期エネルギー基本計画策定の議論本格化に向け、安全が確認された原発の再稼働と同時に、「原発の増設、新設を経団連の方針として明確にすべきだ」との意見が出た」という。
そして、「電気料金が安くできる」ということを錦の御旗に立てて、原子力に関わる国と企業の体制全体、いわゆる原子力ムラの利益を維持していくということである。
原子力委員会の「原子力利用の基本的考え方」は、5年後をめどに改定するという。このへんがよくわからない。なぜ5年後に見直すのだろうか。何度見直そうとも、原発はコストがかかるという事実は変わらないではないか。その事実を公式に認めるには、5年かかるということなのであろうか。
国は「原子力利用の基本的考え方」ではなく、その前に「福島原発事故からなにを学んだのか」をまとめるべきではないのだろうか。このままでは、福島原発事故からなにも学んでいないということになる。国と財界は、福島原発事故はなかったということにしたいのであろう
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