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April 09, 2017

アメリカのシリア攻撃と北朝鮮

 アメリカは7日、シリア政府軍が北西部イドリブ県南部の空爆で化学兵器を用いたと断定し、非難するとともに、シリアの軍事施設へのミサイル攻撃を行ったという。またもや、国連安保理の決議前のアメリカの軍事行為である。もはや、アメリカは国連を完全に無視していると言えるだろう。

 シリアの化学兵器使用の有無については立証されていない。むしろ、確実に国際世論の非難を招く化学兵器の使用をシリアがするだろうかという疑念がある。

 仮にそれが真実であったとしても、では今回、ミサイル攻撃を行ったとして、この先、化学兵器を使わせないようにどうするのであろうか。このへんの展望がまったくなく、ただ、ミサイルを打ち込みました、ということをしたとしか思えない暴挙である。また、トランプはそもそもアサド政権と共同し、イスラム国を掃討することを掲げていたが、このミサイル攻撃でアメリカとシリアの関係はどうなるのであろうか。

 オバマ政権であれば、こんな愚かしいことはしなかったであろう。実際のところ、2013年、化学兵器の使用が疑われたアサド政権に対して、オバマは軍事行動に踏み切らなかった。トランプ政権になり、中東の混乱はますます深まるばかりであるとしか言いようがない。イラクに大量破壊兵器があるという捏造で、イラク侵攻を行い、今のイラクの荒廃をつくったのはアメリカであることを国際社会は忘れていない。

 これは、北朝鮮への威嚇行為なのだとする見方がある。というか、北朝鮮に軍事的圧力をかけたい者たちは、アメリカのシリア攻撃を北朝鮮への威嚇行為なのだと思いたがっている。産経新聞はこう書いている。

「トランプ米政権は、北朝鮮に対し、軍事攻撃も辞さない姿勢を見せてきた。今回のシリア軍基地への攻撃は、核・ミサイルだけでなく、化学兵器の開発にも邁進(まいしん)する金正恩(キム・ジョンウン)政権に向け、この上ない強い警告となった。北朝鮮は公式の反応を示していないが、衝撃を受けたことは間違いないだろう。」

 しかしながら、今の時代、力による威嚇は国際問題の解決にはならない。力による警告を行えば、北朝鮮は行いを改めるであろうという考え方そのものが間違っているのだ。この、力でねじ伏せれば、相手はいうことをきくという発想に基づくこの考え方は、それはつまり、自分たち自身が、力でねじ伏せれれば、相手のいうことをきくからなのであろう。

 前にも書いたが、そもそも北朝鮮は「悪い国」なのであろうかと私は考えている。

 こんなことを言うと、悪い国であることは当たり前じゃないかという声が聞こえてくる。つい最近、ドキュメンタリー映画『太陽の下で』を観たばかりだ。あの時間が停止したかのような進歩もないもない、自由がなく、人権もない国がいいわけないではないかという声が聞こえてくる。もちろん、北朝鮮の社会が「正しい社会」だとは私は思わない。

 だが、数多くの国民を餓死させ、虐待し、虐殺をしている国家体制の国は、今現在、地球上に数多く存在している。北朝鮮がけしからんというのならば、そうしたことを行っている他の国々を放っておくのはなぜであろうか。

 北朝鮮は日本をミサイルで狙っているではないかという声もあるが、何度も書くが、あんなものは兵器でもなんでもない。ミサイル兵器に必要なのは、これこれの破壊規模で、何時何分何秒にどこどこへ着弾するということであり、これができなくては戦争にならない。実験程度の打ち上げでは、アメリカはおろか、韓国や日本とすら戦争ができる国になっていない。北朝鮮の国力では、戦争は不可能である。

 北朝鮮の望みは、アメリカとの交渉であり、アメリカによる現体制の維持の保証である。以前に書いたように、この言い分には北朝鮮側にも理はある。北朝鮮を力で威嚇して、では、拉致問題はどうなるのであろうか。北朝鮮に拉致され、2002年に帰国した蓮池薫氏は、NHKのインタビューでこう述べている。

「拉致を解決すれば見返りを与えることができると伝える必要がある。例えば電力事情の改善など経済協力という形で、北朝鮮に必要なもので核やミサイルの開発につながらないものがあるはずだ」

 これは極めて重要なことだ。拉致問題の交渉には、当然のことながら見返りを与えることが必要になる。北朝鮮にとって、今の体制維持が必要なのである。仮に、軍事力により北朝鮮の体制を崩壊させたとしても、その先のことについて明快な道筋を韓国も日本も持っていない。金正恩体制は崩壊する、崩壊するといっていながら、では、実際に崩壊したらなにが起こるのか、なにをどうするのかということについて韓国と日本は現実的に考えることをしていない。実質的なことはなにも考えておらず、万事、アメリカまかせになっているのが現状である。そのアメリカは、力による安易な示威しか考えていない。となると、拉致問題の解決など永遠に不可能であろう。

 今回のアメリカのシリア攻撃で明らかになったことは、トランプ政権のアメリカは安易な軍事行動をするということであり、北朝鮮に対して力による威嚇しか考えていないということだ。つまり、アメリカが北朝鮮に攻撃する可能性が出てきたということである。軍事行動には、合理性がなくてはならない。合理性のない軍事行動は、危険以外のなにものでもない。今の国際社会で、北朝鮮やイランよりも、アメリカが危険な国になっているのだ。トランプのアメリカは、北朝鮮を攻撃することについて、韓国や日本がどうなろうと知ったことではない。アメリカは勝手に北朝鮮に軍事挑発をして、そこから北朝鮮は韓国と日本に過剰な反応をするかもしれない。そうなれば、東アジアは混乱し荒涼となった中東化するであろう。

 そうならないためには、日本はアメリカとは違う外交戦略が必要になる。アメリカがこうなった以上、北朝鮮について、日本がロシア・中国との関係において対処すべき課題であると私は考える。しかしながら、この国には、とてもではないがそんな高度な外交能力はないのである。

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