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March 18, 2017

朴槿恵大統領の罷免

 産経新聞によると「韓国憲法裁判所は10日、国会が弾劾訴追した朴槿恵(パク・クネ)大統領を罷免する決定を言い渡し、朴氏は失職した。」という。

 韓国、というか韓半島に住む人々の社会が、民主政治になったのは20世紀の終わる頃からである。大統領直接選挙制にすることを決定したのは、わずか30年程度前でしかない。

 古来、朝鮮の社会は、国や集団の利益と合理性で動く国王や政治集団や党によって構成されるグループと、儒教理念で動く在野の儒学者、士大夫、読書人らといった人々の二つのグループがあった。

 ここで話は、14世紀の李氏朝鮮の成立に遡りたい。高麗を滅ばし李氏朝鮮王朝を築いたのは太祖である李成桂(イ・ソンゲ)であるが、もちろん、彼一人で高麗を滅ぼしたわけではなく、彼は高麗を滅ぼした一群の集団の代表であった。この一群の集団こそ、儒学者、両班、士大夫のグループである。李氏朝鮮成立時の両班は、王権を支え、時に王権に朱子学の教えに反するようなことがあれば、それを咎め、諫めることをおこなった。まっとうな、社会勢力であった。

 後に、李氏朝鮮の後期になると、両班は退廃した固陋な階級になり、最終的には朝鮮国家を滅ぼす原因のひとつになる。19世紀、欧米諸国からのウェスタン・インパクトに対して、朝鮮は近代化を受け入れることができなかったのは、この両班、士大夫の階層が近代化に強烈に反対したことがその理由のひとつとして挙げられる。

 日韓併合により両班階層はなくなるが、この文化はなくなることはなかった。この文化が、民衆蜂起で対抗し、反日運動を繰り広げていった。日本の朝鮮統治は、このことを理解することがなかったということが言える。台湾や南洋諸島ならいざ知らず、朝鮮において皇民化政策など朝鮮側からすれば、お笑いものであったろう。

 日本統治が終わり、大韓民国になっても、軍人政権に対して学生運動をもって権力に抗議をしていったのが、この文化である。盧武鉉の弾劾を支持し、実兄が斡旋収賄事件を起こした李明博を糾弾したのもこの文化である。そして、今回、朴槿恵を罷免へと追い込んだのも、この文化である。権力を監視し、社会正義を訴え、政府に問題があれば行動する、かつての朝鮮の在野の儒学者、両班、士大夫、読書人の文化は、今でも韓国に生きている。

 朴槿恵の政治は、父親の朴正煕と同じく密室の独断政治であった。このスタイルは、当然のことながら現代の韓国では合わない。崔順実(チェ・スンシル)被告と、彼女を通しての財閥との癒着があったというイメージもまた現代の韓国では通用しない。朴槿恵政権の誤りは、韓国という国の今の時代状況と、自国の中のこれら反体制の社会勢力の存在の大きさを考慮しなかったということだろう。

 朴政権が日本と合意した慰安婦合意も、合意したのは「国や集団の利益と合理性で動く王朝や政治集団や党によって構成されるグループ」であって、この「在野の儒学者、両班、士大夫、読書人」たちではない。彼らからすれば、日本と合意したとは思っていない。

 ちなみに、戦後日本のアジア諸国への賠償は、その国の政府に対して行い、民間に対しては行われなかった。なぜならば、個人賠償になった場合、日本政府は、その規模と額が限度がない果てしないものになることを恐れたからである。さらに言えば、その国の政府に対し、賠償というカタチでの資金や技術での援助を行い、その結果、両国の親善と日本企業の市場進出を果たすという思惑があったからである。今に至っても、アジア諸国の民間レベルでは、日本の戦争責任の糾弾がなくならないのは、こうした背景がある。

 ともあれ、大統領が罷免された状態になっている今、韓国は外交的に孤立している。THAAD(高高度防衛ミサイル)問題により、中国との関係は悪化し、慰安婦像問題で、在韓日本大使は不在になり、ミサイル実験を繰り返し、金正男暗殺を行った北朝鮮に対してなんの対策を行っていない。アメリカのトランプ政権は、韓国に送る在韓アメリカ大使をまだ指名していないという。現状では、米日韓で北朝鮮に対応するなど無理な話になっている。本来であれば、日本が中心になってとりまとめるべきことなのであるが、そういうことができる能力がこの国にはない。

 実際のところ、在韓米軍に配備されるTHAADは、中国にとって国家安全保障上の脅威でもなければなんでもない。それよりもアメリカ軍がハワイに配置しているレーダーや在日米軍の方がもっと大きな影響力を持っている。これを考えれば、いやがらせは韓国にするのではなく、アメリカや日本に対して行うべきなのであるが、そういうことはせず、ねちねちと韓国をいじめるのは、とてもではないが世界の大国とは言えない姿である。かつて、順治帝・康熙帝・雍正帝・乾隆帝の頃の大清帝国は、朝貢国・朝鮮に対してこんなことはしなかったであろう。

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