高浜原発が再稼働可能になった
稼働中だった福井県の関西電力高浜原発3号機を、福井地裁が仮処分判断で停止してから1年がたった。28日、大阪高裁は再稼働を認める判断を下したという。
これについて産経新聞は、さぞや喜びの社説を出すだろうなと思っていたら、案の定、29日の「主張」でこう書いている。
「高裁は、抗告していた関電の主張を全面的に認めた。極めて理にかなった司法判断である。
これにより、2基の再稼働に道が開けた。電気料金の値下げが急務となっている関電には、再稼働に向けた準備を着実に進めてもらいたい。」
おもしろいのは、産経は原発の再稼働と電気料金の値下げを重ねていることである。ようするに、電気料金を下げるために原発を再稼働するとしている。このへんが興味深い。電気料金を持ち出してくることで、原発稼働の正当性を述べているのである。実際のところ、原子力発電はコストが安い電力ではない。仮に事故が起こらなかったとしても、将来の廃炉や廃棄物処理などのことまで含めれば、原子力発電は決して安くない電力なのであるが、そういうことはどうでもいいのであろう。
さらにおもしろいのは、この日の紙面のもうひとつの「主張」は、栃木県那須町のスキー場で、登山講習会に参加していた高校生らが雪崩に巻き込まれた事故についてのことで、そこは「過信と油断が惨事を招く」と書いていることだ。こう書かれている。
「事故を受けた会見で県高体連は「ベテランの先生方が状況を把握して、的確な判断のもとにやったと思う」などと述べた。そこに落とし穴はなかったか。
鳶(とび)の棟梁(とうりょう)から、こんな話を聞いたことがある。どんなに高いところで身軽に動けるベテランでも、地面が間近に見えてきたときに事故を起こしやすい。一番怖いのは過信、慢心、油断だ、と。」
しかしながら、これは原発についても言えることであろう。栃木のスキー場での事故には「過信と油断が惨事を招く」として、原発にはそうは思わないところが、いかにも産経らしい。ゼロリスクを求めるなというのならば、栃木のスキー場での教師たちについても同じことが言えるのではないかと思うが、どうなのであろうか。
ましてや、原発事故は、雪崩とは比べものにならない被害規模になる。福島原発事故がどのような事故であったのか今だ完全にわかっていない現状で、原発が安全であるという判断は誰にもできない。
火力発電と比べて、原子力発電はコストが安い(電気料金が安い)というのは、原発プロパガンダが常に言っていることである。そんなことはまったくない。原子力発電はコストがかかる電力なのだ。そのへんのことを、御用メディアは言わない。
日本経済新聞によれば、福井県の周辺の知事たちは、今回の大阪高裁の判決に異議を唱えているという。
「滋賀県の三日月大造知事は「実効性のある多重防護体制の構築が、いまだ未整備という状況下では再稼働を容認できる環境にはない」との考えを示した。独自で避難計画を策定している大津市の越直美市長は「市民が原発の安全性に不安を持っている状況では、原発を再稼働すべきではない」とコメントした。」
関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止めた判決を述べた福井地裁にせよ、先日の前橋地裁にせよ、原発について地方の裁判所は正しい判断をするが、上になるにつれ政治が優先されるようだ。もはや法律よりも、時の政権に意向に従うことが多い。この国では、司法は独立していないのである。
今回の大阪高裁の再稼働を認める判断をみて、つくづくそう思う。
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