釜山の慰安婦像設置
去年の年末に、韓国の釜山の日本総領事館前に従軍慰安婦像が設置されるということがあり、年明けの日韓関係はもめるであろうなと思っていたが、昨日の6日、「菅義偉官房長官は6日の記者会見で、韓国・釜山での慰安婦像設置を受け、「極めて遺憾だ」として駐韓日本大使の一時帰国など4項目の対抗措置を発表した」という。
4項目の対抗措置とは、「(1)在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ(2)長嶺安政・駐韓国大使および森本康敬・在釜山総領事の一時帰国(3)日韓通貨交換(スワップ)の取り決めの協議の中断(4)日韓ハイレベル経済協議の延期。その措置を採る」である。
日韓通貨交換(スワップ)の取り決めの協議の中断については、韓国の中央日報日本語版によると、「宋寅昌(ソン・インチャン)企画財政部国際経済管理官(次官補)は「現在保有中の通貨スワップが終了したわけではないため大きな影響はない」とし「通貨スワップ満期が昨年終了したマレーシアと事実上延長に合意したほか、アラブ首長国連邦(UAE)とも延長の協議をしていて、通貨スワップ規模はまた増えるだろう」と述べた。 」という。ようするに、韓国側は、日本が日韓通貨交換の取り決め協議のを中断してもなんとかなるということのである。
注目すべきことは、「長嶺安政・駐韓国大使および森本康敬・在釜山総領事の一時帰国」だろう。駐韓国大使が一次帰国したことは、2012年に李明博大統領が竹島(独島)を訪れたことへの抗議として行われている。今回、一次帰国をしたとして、では駐韓国大使が韓国に戻るのはどうするのだろうかということだ。戻るとなると韓国側は「日本側の抗議は収まった」と思うであろう。では、日本側は韓国側のなにをもって「日本側の抗議は収まった」とするのであろうか。
その一方で、韓国の朝鮮日報日本語版によると「韓国の政府当局者は日本政府の取った措置について、「少女像に関する(日本)国内の世論を意識した側面がある」として、「象徴的な面が強く、実質的に両国関係に影響を与えるものではない」との見方を示した。韓国政府は長嶺大使の帰国も長期間にはならないとみている。」とのことだ。この見方は興味深い。
北朝鮮の核実験やミサイル発射などの行為について、日米韓が連携する必要があり、そうそう日韓関係が不和になっては韓国も日本も、そしてなによりもアメリカが困るということになる。実際のところ、北朝鮮への対応については、日韓はこれまで通りの連携を保っていくとのことである。
経済関係も同様であり、先日、韓国で公開されたアニメ映画「君の名は。」は初日興行収入ランキングで1位を獲得し、初日の興行収入は1億円を超えたとのことである。日本映画が韓国の映画ランキングで1位を獲得するのは、2004年の「ハウルの動く城」以来、13年ぶりであるという。つまり、実質的な面においては日韓関係は従来通りで変わることはないということだ。日本の総領事館前に民間人が何をどう建てようとも、実質的に不利益を及ぼすものではない。
では、なにが「不和」になるのかと言えば、例によって例のごとく日韓の国民感情が「不和」になる(というか、「不和」であり続けるというか)ということである。
日韓の慰安婦合意では、日本側は慰安婦像の撤去を韓国側は約束したと思っているが、韓国側の認識では関連団体との協議などによって撤去するように努力するという程度のものである。慰安婦合意で、この点を曖昧にしたのは曖昧にしなればならなかったということがある。そして、曖昧であったからこそ、今になって問題が発生している。日韓の双方、特に韓国政府は慰安婦の方々やその支援団体への承認なしに、日本との慰安婦合意を進めたということもある。次期大統領選挙の候補者たちは、朴槿恵政権での慰安婦合意を破棄して、慰安婦についての日本との交渉をやり直す考えであるという。
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