それでも、ボーダーレス・ワールドは続いていく
以前、サンフランシスコにいた時、テレビでワシントンのニュースなどを見ていると、合衆国大統領とかワシントンDCとかは、どこか遠い国の話のように思えてならなかった。
当然のことであるが、なによりもまずカルフォルニアは広大な北アメリカ大陸の西海岸であり、大統領がどうしたこうしたとかやっているのは、反対側の東海岸の話である。同じアメリカ合衆国であっても、サンフランシスコはアジア系の人たちが数多くいて、東海岸の都市とはまったく違う。
もうひとつの点として、アメリカのIT業界は、グローバル・ワールドを相手にしていて、サンフランシスコというアメリカのひとつの都市にいたとしても、世界の情報にアクセスできるという感覚がある。アメリカは世界覇権国であったとしても、数多くのある世界の国々のひとつであり、世界はアメリカ以外の数多くの国々で成りたっていることを知っているのがIT業界である。
そして、これはITや金融業界に限ったことではなく、21世紀の今、ボーダーレス経済で動いている業界は、アメリカの大統領がトランプになろうが誰がなろうが関係はない。というか、アメリカの政治家のいうことなど、まったく影響がないのだ。情報技術と交通が全地球を覆う流れは、これからも変わることはない。
もちろん、国家が権力を持って企業の行動に介入することはできる。トランプは、外国に工場が移転することを阻止しようとしているが、生産の場を国内より低コストでできる場所に移し、そこで生産した商品を国内で販売することにより低価格で消費者に提供するというビジネス・モデルは間違ったことではない。国内生産を続けることで、結果的に商品の価格が高くなり、それを買わなくてはならなくなるのは消費者なのである。アップルは、なにも中国の労働者の雇用の場を作るために、iPhoneを中国で生産をしているのではない。iPhoneの販売価格を下げるために、中国に工場を置いているのである。
今の時代は、保護主義が国内の消費者のためになる時代ではないのである。少なくとも、解決策は、企業が工業を外国に移転させることをやめさせたり、高い関税をかけるようにすることはないことは明らかだ。そうしたことは、すべて国内の消費者に負担として返ってくるのだ。
であるのならば、ではどうしたらいいのか。これを考える方向にならなくては、アメリカ国内の白人中産階級層の現状は変わらないのである。しかし、現状を見ると、そうした方向性はまだ出てきていない。トランプが大統領になって、どうにかしてくれるだろう期待があるのであろう。
だが、世界の心ある人々は、トランプでは良くなるどころか、ますます悪くなるということを知っている。トランプがなにを言おうとも、それでも、ボーダーレス・ワールドは続いていくのだ。つまり、今、ここに歴然として存在しているボーダーレス・ワールドを見ないふりをして否定するのではなく、ボーダーレス・ワールドがあることを前提として、その上で、どうするのかを考えることが必要なのである。
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