トランプの対アジア政策
アメリカのトランプ次期政権は、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍司令官、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にマイケル・フリン元国防情報局長を起用するという。この人事について、産経新聞はこう書いている。
「軍事経験が豊富な元将官を起用されたことで、タカ派色が色濃く表れた形だ。オバマ政権から次期政権に持ち越されるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の掃討を強化する明確な意思の反映だとみられている。」
「イスラム国」(IS)については掃討しようとしているとして、では中国については、トランプはどうするのであろうか。
大ざっぱに言えば、アメリカは今だかつて中国について「よくわからない」国なのである。これは、ソビエト・ロシアについても同じことが言える。アメリカという国は、ヨーロッパから移民してきた人々が建国した国であるためか、ユーラシア大陸のウラル山脈以東のことについては理解するフレームを持つことが不得意な国なのである。
第二次世界大戦以後のソビエトについても「よくわからない」から「敵」として扱ってきた。
中国についても「よくわからない」ので、基本的に商売相手として扱うだけであり、それ以上、それ以下でもない。ようするに、アメリカの連邦政府や議会は、アジアが絡むととたんに「わからない」状態になり、本質を見ようとせず「商売相手」(中国)とか、「家来」(日本や韓国のことだ)とか、「やっかいもの」(ドゥテルテのフィリピン)とかいった見方、考え方しかできない国なのである。
さらに言えば、これは中近東に対してもそうであり、アラブやイスラムといったものがからんでくると同じだ。基本的に「オリエンタリズム」でひとくくりにくくるしかできないのである。
しかしながら、そうはいってもアメリカにとって石油資源がある中東は無視することができない場所である。だからこそ、アメリカは中東に介入し続けてきた。トランプの選挙公約のひとつに、「イスラム国(IS)」に徹底的に軍事対抗するというものがある。今回の人事も、アメリカはこれからも中東に軍事的に介入し続けるということを表している。
その反面というか、対象的な場所になっているのが、アジアである。アメリカにとって、アジアはビジネスの対象であり、それ以外は「どうでもいい」という状態がこれからも続くであろう。
トランプの中国政策は、これまで以上にビジネスに特化した関係になるだろう。トランプには、中国の国内の環境破壊とか、人権弾圧とか、言論封殺とか、少数民族への圧力とかいったことには関心はない。アメリカ国内のインフラ整備に、積極的に中国のマネーや中国企業を使ったり、貿易交渉で、アメリカに有利な条件を認めてくれるのならば、中国のアジア覇権になにも言わないかのような取り決めをする可能性は高い。トランプのアメリカは、アメリカ一国の利益しか見ない(ちなみに、ロシアについても中国と同様の「商売相手」に変わるだろう)。
結局、アジアのことは、アジアでやらなくてはならないのだ。勃興する中国に対抗するのは、大陸中国の周囲の国々がやらなくてはならない。何人もの人々が述べているように、トランプのアメリカの時代において、日本は独自の外交がしやすくなる。日本は外交をもって、東アジアの主導国の位置を占めることができる。
ただし、それは、このブログで私が何度も述べているように、この国に、アメリカ依存ではない独自外交を実行できる手腕があるのならばの話である。そして、そうしたものがまったくないのが、この国である。かくて、トランプのアメリカの時代において、中国はますます台頭するであろう。
この国は、自国にそうした力がないことをよく知っているから、ひたすら対米従属に依存しようとしている。しかしながら、対米従属をする国の言うことなど、アジアのどの国が信頼するであろうか。対米従属であるから、自分で物事を行う力が持てなくなっている。この悪の循環を断ち切らなくてはならない。これが、本当の意味での戦後日本からの脱却なのである。
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