朴槿恵大統領の弾劾が可決された
9日の産経新聞はこう書いている。
「韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人で女性実業家、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件に絡み、国会本会議で9日、朴氏に対する弾劾訴追案が野党側などの賛成多数で可決された。憲法裁判所が最長180日間の審理に入り、判断が出るまで朴氏の大統領権限は停止され、黄教安(ファン・ギョアン)首相が職務を代行する。国政混乱の長期化は決定的となった。」
次は、憲法裁判所が180日以内にこの弾劾が憲法上、妥当なものであるかどうかを決定することになる。
今日の毎日新聞によると、朴大統領弾劾案の骨子は次の通りである。
「・崔順実被告らに機密資料を提供し国政介入を許し、憲法の国民主権、代議制民主主義などに違反
・大統領府、文化体育観光省の幹部に崔被告らが推薦する人物らを任命し、公務員任命権を乱用
・企業に資金根拠を強要し財産権を侵害。拠出資金は賄賂に該当
・セウォル号沈没事故当日、積極的措置を取らず、国民の生命を守る義務に違反」
上記の内、最後のセウォル号沈没事故への対応はともかくとして、上の3つは、多かれ少なかれ、韓国の社会ではある種「常識的な」ことである。もちろん、正しいことではないが、これをもって韓国の大統領を罷免させられるというのはいかがなものであろうかと思う。国家の指導者たるものは、これらのことがあってはならないとするのならば、今の韓国で誰が次の指導者たり得るのであろうか。次の政権はこうしたことが一切のない政権になり得るというのであろうか。
崔順実の国政介入を許したというが、それでは崔順実が日本や中国やロシアやアメリカなどとの関係交渉や韓国の国家安全保証に関わったというのであろうか。自分が関係する企業への利益誘導や賄賂や資金横領、対抗勢力への政治圧力、娘の大学不正入学、等々のことをおもって「国政に介入した」というのはいかがなものであろうか。崔順実は、朴大統領との長年の交友関係を使って、私腹を肥やしてきたアジュンマ(おばさん)でしかない。
ようするに、国民の怒りがある。
潜在的にあった朴大統領への不満が、今回の崔順実の一件で表面化したと言えるだろう。また政治的に言えば、父親、朴正煕大統領への恨みを持ち、娘が大統領であることに反感を持つグループも少なくはなかった。今の日本がことあるごとに持ち出してくる、賠償や慰安婦問題は日韓基本条約で決着しているというコトバの、その日韓基本条約を批准したのは朴正煕大統領である。朴正煕が行った全ての「悪行」を朴槿恵は背負わされている。そうした勢力に対処するためにも、より一層の身辺の整理が必要であった。
9日の韓国の朝鮮日報は「「市民革命だ」朴大統領弾劾可決に多くの国民が歓迎」とし、こう書いている。
「韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾案が9日の国会本会議で可決されたことを受け、多くの市民団体や市民らは一斉に歓迎の意を示した。
朴大統領の退陣を求める週末の大規模集会を主催してきた「朴槿恵政権退陣非常国民行動(退陣行動)」は直ちに立場表明を行い、「韓国の国民が誇らしい。弾劾案の可決は広場の偉大なろうそくが成し遂げた成果」と評価した。」
全斗煥の第五共和国、さらに言えば日本による統治が終わった後の長い軍政時代を終わらせたのは、確かに民主化を求める国民の意思であった。しかし、今、起きていることは、あの時の国民の意思表示とは違うもののように感じる。
1987年6月の民主化宣言以後、1988年から韓国で始まる第六共和国の国家指導者たち、金泳三、金大中、盧武鉉、李明博、そして朴槿恵の中で、盧武鉉の時代から、さらに、よりはっきりとしているのは李明博の時代から、韓国の国民感情は変わっている。もともと、保守派の朴槿恵は格差の拡大や財閥・大企業優先の社会を変えることができない進歩派の李明博に対抗するかたちで国民から大統領に選ばれた。それが、結局、なに一つ変わっていないことへのいらだちと怒りがある。
この朴大統領を弾劾に追い込んだ国民感情が、これからの韓国を造る現れになるのであろうか。
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