トランプが大統領になった
この世の中は、大多数の人々で成り立っている。例えば、戦後の日本人がまったくといっていい程、中国や朝鮮(韓国・北朝鮮)に無関心であるのは、その背後に構造的な理由があるにせよ、間違っていることであると私は思っているが、大多数の人々がそうである以上、間違っていることであるにせよ、そうカンタンには変わることはない。つまり、国家とは、その国を構成する大多数の人々の認識や能力以上にはならないのである。
アメリカ合衆国にも、同様のことが言える。今回の大統領選挙で、アメリカのメディアのほとんどすべては、最後までヒラリーが勝つことを信じて疑わなかった。ところが、トランプ勝利となったので、ワシントンの政界は大騒ぎになっている。中間層の怒りがトランプをワシントンに送った。次は、中間層からの支持の応えることをしなくてはならない。これが何になるのか。アメリカの政界と経済界は、トランプの出方を見ている。
トランプが勝利したのは、当然のことながらトランプを支持する人が多いからである。であるのならば、民主主義であるのだから、トランプが大統領になることは当然のことであり、メディアや政界が大騒ぎになることはないはずだ。それが、そうなっていないというのは、有権者と政治がかけ離れているからだ。
有権者と実際の政治が乖離していても、政治が成り立っていたのは、体制というものはそういうものだと言えるだろう。経済がそれなりに成長していれば、有権者は遠い東海岸のメリーランド州とヴァージニア州の間のコロンビア特別区で政治家がなにをやっていようと黙っていることができた。しかし、今や、それがそうはいかないということだ。一部の富裕層が、大多数の中間層へ利潤を回すことを行ってきていれば、中間層はここまで怒ることはなかった。大統領選挙の時は、政治は一般の有権者の手に戻る。しかし、選挙が終わると、政治は有権者の手から離れ、遠いワシントンDCに移ってしまう。
メディアは、トランプを合衆国大統領の品性や知性がないと言ってきたが、これまでのアメリカの歴代大統領の中では、トランプのような人物が大統領になったこともある。それでもアメリカは続いてきた。もちろん、21世紀の現代のアメリカ合衆国の大統領がトランプのような人物で勤まるのかどうかということはある。BBCのニュースを聴いていると、ヨーロッパ各国はこれからの対米関係をどうしたらいいのかわからず混乱ぶりが垣間見れておもしろい。
では、今回のトランプの勝利は、アメリカの本来の民主主義が復活したと捉えることはできるのだろうかと言うと、そうとも言えないだろう。一言で言えば、トランプが大統領になったとして、体制は一般大衆中間層の方に向き直るであろうかという疑問がある。トランプの公約にしても、保護貿易を行えば、中間層が豊かになるというわけではない。イスラム教徒や違法移民者を国外追放すれば、彼らの仕事が増えるわけでもない。実際のところ、今のアメリカの格差社会そのものを変革するには、そうとうな大きな変革になり、4年や8年でできるものではない。
ヒラリーが勝利しても、トランプ現象は終わらないと言われていたが、トランプが勝利した今、反トランプ感情もまたなくなっていない。今のアメリカ国内は、分断し混乱した状態になっている。
トランプはロシアとの関係が深い。一部で言われ始めているように、トランプはロシアが行っているシリアとの協力や、クリミア併合を容認とまではいかなくても、かなり容認に近い対応をとる可能性が十分にある。トランプは、不動産業を通じて、ロシアの実業家や政治家と豊富な人脈を持っている。これに対して、軍産複合体やネオコン一派の残党は、ロシアのウクライナ問題を誘発し煽ることをしてきた。彼らは、米ロ関係が良好になることを望んでいない。ワシントンの体制と大統領になったトランプの対立が、これから始まるのである。
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