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October 23, 2016

南京事件を否定する人々

 前回、いわゆる「南京大虐殺」について書いた。産経新聞等が、いかにこれを認めたくなかろうが、あったことはあったと述べた。

 翌日の日曜日(19日)の産経新聞は、またもや虐殺はなかった記事が載っていた。どれどれと読んでみると、産経を代表とする「大虐殺はなかった」派の論調の特徴が出ていて大変興味深いものであった。

 この記事は、昨年10月、日本テレビ系で放送された「南京事件 兵士たちの遺言」というドキュメンタリー番組について書かれており、私はこの番組はテレビ放送時は見ていないが、後にネットで見た。この番組の制作した記者が、この時の調査過程やその後の追加調査などが加えられて書籍化された『「南京事件」を調査せよ』清水潔著(文藝春秋)を読んだことから、私はこの番組のことを知った。

 この本は、結局、あの時、南京でなにが起きたのかということについて、現存する資料を手がかりに知ろうとした試みである。政府や軍部の公式文書は、その多くが処分され、紛失、改竄されている現状で中で、何があったのかということについて、こうした「試み」が必要なのである。

 本来であれば、戦後、日本政府がしかるべき費用と人員をかけて、「公的に」こうした「試み」を行っていれば、今、ネトウヨとかが「南京大虐殺はなかった」とか言うこともなく、また中国から日本の歴史認識についてあれこれ言われることはなかったのである。

 産経は、「数少ない船を奪い合った末の同士打ちや多くの溺死者があったことが中国側の公式資料から分かる。」と述べている。もちろん、同士打ちや溺死、戦死した中国兵もいたであろう。その一方で、日本軍により殺害された中国民間人もいただろう。産経は、全員が「同士打ちや溺死、戦死した中国兵」だというのであろうか。

 産経は「『南京』をめぐる中国共産党のデマとプロパガンダを示すものだ」と述べている。もちろん、中国共産党によるデマやプロパガンダは存在する。しかしながら、それではデマやプロパガンダではない、「あの時になにが起きたのか」について説得力のある主張をしているのかというと、これがない。

 さすがに捕虜の殺害そのものを否定することはできないからか、「暴れる捕虜にやむなく発砲」したのだとしている。産経の記事はこう書いている。

「16日の揚子江岸での処刑対象は宿舎への計画的な放火に関与した捕虜だった。17日は第65連隊長、両角業作(もろずみ・ぎょうさく)の指示で、揚子江南岸から対岸に舟で渡して解放しようとしたところ、北岸の中国兵が発砲。これを日本軍が自分たちを殺害するための銃声だと勘違いして混乱した約2千人の捕虜が暴れ始めたため日本側もやむなく銃を用いた。」

 つまり、放火に関与したから処刑した、解放しようとしたら混乱したので銃殺したのだとしている。もちろん、そうしたこともあったであろう。しかしながら、このことは、その一方で無抵抗の民間人を殺害したこともあったことを否定する根拠にはならない。

「番組は「…といわれています」「これが南京で撮られたものならば…」といったナレーションを多用。断定は避けながらも、“捕虜銃殺”を強く印象付けた。」

と番組を批判している。そして、これを「中国の謀略宣伝のやり方と酷似している」と述べている。 しかしながら、産経のこの記事事態が、「こう言っているが、これはコレコレだったかもしれない」という論調であり、いわゆる「南京大虐殺」を全面的に否定できる論理になっていない。その意味では、中国の謀略宣伝と同じレベルであり、いわば、やましいことをがあるから、そんなことを言っているとしか思われないものになっている。

 ようするに、多少は民間人の殺害や略奪行為はあったかもしれないが、事件と呼ばれる程の規模のものではなく、ましてや戦争においてそうしたことは当然であり、取り立てて騒ぐことでない、という結論に産経はしたいのであろう。

 この態度そのものが、国際常識から著しく外れ、アジア諸国から反感を買っていることがわからないのであろうか。南京事件を否定する人々は、良い日本人もいれば悪い日本人もいた、悪い日本人もいれば良い日本人もいた、という複合的な視点の歴史認識ができない人たちなのである。

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