もんじゅ廃炉
政府は、21日の夕方、「原子力関係閣僚会議」を開き、高速増殖炉「もんじゅ」について廃炉を含め抜本的な見直しを行い年内に結論を出す方針を確認したという。
原発は放射性廃棄物を生み出す。このことは、原発の欠点の大きなひとつである。この廃棄物からプルトニウムを取り出し、再度、発電の燃料にしようというのが高速増殖炉である。核燃料サイクルとも言う。
戦後日本で、原発を推進してきた人々にとって頭を悩ませてきたことは、原発の放射性廃棄物をどうするのかということであった。そこで、彼らが考えたことは、上記の核燃料サイクルである。核燃料サイクルを可能にすれば、原発の放射性廃棄物の問題を解決することができると彼らは思い、いわば核燃料サイクルが可能になることを前提として、各地に原発を建ててきたのである。核燃料サイクルが可能になれば、原発で発電し、さらにその廃棄物でも発電ができるので、日本は数百年のオーダーでエネルギーの安定供給が可能な国になるということになる。
しかしながら、現実はそうはならなかった。
核燃料サイクルでは、高速増殖炉というもので放射性廃棄物からプルトニウムを増殖させ燃料とする。この高速増殖炉が「もんじゅ」である。ところが、技術的にこれは夢物語のシロモノであった。「もんじゅ」には、国はこれまで1兆円以上のを費用を投入してきたが、「もんじゅ」ができてから22年間の運転実績は、わずか250日程度のものだった。動かせば故障や事故が起こるのである。停止していても、「もんじゅ」の維持には年間200億円という費用がかかるという。
原発というものは、トータルで見ると、石油や天然ガスでの発電よりも遙かにコストがかかるものなのであると言えるだろう。決して、安くはないのである。
それでも、国は「もんじゅ」をやめることをしなかった。
なぜ、国はこれまで「もんじゅ」をやめることができなかったのかというと、これができないとなると、原発の放射性廃棄物の処理ができないということになり、原発政策そのものができないということになるからである。
処理に10万年もの時間がかかるものを、核燃料サイクルができるようになれば問題はなくなるだろうと大量に発生させてきた国の判断は理解し難い。今回、「もんじゅ」廃炉が決まったが、それでも国は、核燃料サイクルそのものについてはやめるとは言っていない。まだ愚行を続けようとしている。
原発推進派筆頭メディアとも言うべき産経新聞は、18日の「主張」で「もんじゅは不要でも高速増殖炉と核燃料サイクルは必要不可欠である。」と書いている。原発に固執する人々にとっては、核燃料サイクルができるようにならなければ困るのである。核燃料サイクルはできるようになるということが、今、大量の放射性廃棄物を発生させていることの正当性の根拠になっているからだ。
しかし、現実は「できない」のである。国民の大多数も脱原発を望んでいる。このへんに、民意を無視し、自分たちの目先の利益しか考えない原発推進派の人々の姿がよく現れていると言えるだろう。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどは高速増殖炉の実験から手を引いている。ようするに「できない」のである。
ちなみに、「もんじゅくんのブログ」の2013年5月13日に「もしも高速増殖炉もんじゅをやめたら、どんな影響があるの?が5分でわかる、25のQ&A 」というのがある。この6年後の今、これがようやく実現したわけである。
核燃料サイクルはできない。これでもう原発について話は終わっている。原発なんてものはやらない、放射性廃棄物をこれ以上増やさない、ということである。
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