どこが公平な裁判なのか
17日、福岡高裁那覇支部は、沖縄の翁長雄志知事が辺野古の埋め立て承認取り消しの撤回に応じないのは違法として国が起こした訴訟で、翁長氏の対応を「違法」と判断し、国側勝訴の判決を言い渡したという。
判決の内容は理解し難い。
この判決文の全文と骨子、要旨は、沖縄県の知事公室辺野古新基地建設問題対策課のホームページで入手することができる。この読みにくい文章を読んでみると、理解し難いことが多い。「地方自治法に照らしても、国の本来的任務に属する事項であるから、国の判断に不合理的な点がない限り尊重されるべきある」とか、「普天間飛行場の被害を除去するには本件埋立てを行うしかないこと、これにより県全体としては基地負担が軽減される」とか間違った箇所が数多くある。
例えば、上記の箇所は正しくは以下の通りである。「地方自治法に照らしても、国の本来的任務に属する事項であるが、国の判断に合理性があるかないかは司法は判断し得えない」「普天間飛行場の被害を除去するには本件埋立てを行うしかわけではなく、これにより県全体としては基地負担が軽減されるわけではない」
このブログで何度も書いているが、辺野古に海兵隊基地を置くのが軍事合理性に合うのかどうかは、日本の政治家や裁判所が判断することではない。これはアメリカが判断することである。選択肢として、グアム、オーストラリア、米本土に海兵隊基地を移転させることは、現在でも検討事項となっている。
福岡高裁那覇支部が、辺野古に基地を移転させるという国の判断に軍事的な合理性があるのかないのかの判断ができるというのであろうか。「国の判断に不合理的な点がない」というのならば、辺野古に海兵隊の基地を置くことが、アメリカ軍及び日本国の国家防衛の観点から、どのように合理性があるというのか、裁判所に答えてもらいたいものである。
「普天間飛行場の被害を除去するには本件埋立てを行うしかない」というのも、裁判所が判断できるものではない。普天間飛行場の被害を除去するには辺野古移転を行うしかないと言っているのは政府である。従って、裁判所が行うべきことは、この政府が言っている「普天間飛行場の被害を除去するには辺野古移転を行うしかない」ということが本当に正しいのかどうかということであろう。
しかしながら、そうしたことはいっさいやらず、国の言っていることが正しいという前提の下で判決をしている。これでは、なんのために裁判をしたのかわからない。
もともと、代執行訴訟で国と県の和解を勧告したのは裁判所からであった。それが、これほどの国側の一方的主張を取り上げる判決では、和解にはとうていならないであろう。
そもそも、沖縄がこれほどもめているのは、安倍政権になってから、国が沖縄に対して強権的な恫喝をするようになったからだ。今回、裁判所もまた同じことを行い、ますます沖縄問題をこじれさせている。
なぜかくも沖縄に対して、国は常識とバランスが欠落しているのであろうか。
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