海の魚を食べ尽くす
26日、北太平洋の公海上の漁業資源保護を話し合う「北太平洋漁業委員会(NPFC)」にて、日本や中国など各国がマサバ漁船の増加を抑制することで合意したという。しかしながら、中国は、「資源量の実態がわかっていない」と強く反発し、結局、「委員会として資源量を把握するまで、増やさないことを推奨する」との文言で、各国が抑制努力をすることでようやく一致したという。合意内容に、強制力はない。つまりは、なにも定まっていないということだ。
マサバとは、食卓でよく見る、いわゆるサバである。
その昔、1980年代の頃であったろうか、将来、中国の人々が日本のように車やクーラーを使い、大量消費の生活をするようになれば地球の資源はすぐに枯渇すると言われていた。その当時、そうなんだろうなと漠然と思っていた。それが今、実際に起ころうとしている。
太平洋のクロマグロは絶滅危惧種に指定されているという。もはや、大洋のマグロが絶滅の危険にさらされるようになるとは、これまでの人類は思ってもみなかったであろう。人類は海の魚を食べ尽くそうとしているのだ。あの無尽蔵にいると思ってきた海の魚をである。
毎日新聞は、こう書いている。
「水産資源をめぐる争奪戦が激化しており、資源の減少や価格の高騰などで日本の食卓にも影響を及ぼす恐れがある。中国、台湾、韓国などが大型漁船の操業を本格化し、太平洋のクロマグロが絶滅危惧種に指定されるなど、生態系にも打撃となっている。」
「「食」をめぐる争いは、海だけの問題ではない。中国などの経済発展による所得の増加により、食生活のぜいたく化と多様化が進み、世界の食糧需要は急速に拡大している。米農務省の統計によると米やトウモロコシ、小麦といった穀物の世界消費量は1970年時点から2倍以上に増加した。人が食べる分に加え、世界的な肉食の広がりで家畜飼料需要も増大したためだ。農林水産政策研究所の推計ではアフリカなどの人口増加に伴い、2025年の世界消費量は穀物や食肉、乳製品など広範な分野で拡大すると見られている。 」
20世紀のアジア諸国にとって「日本のような経済大国になること」が目標であった。しかしながら、毛沢東ら初期の中国共産党の者たちは「日本のような経済大国になりたい」とは思っていなかった。だが結局のところ、中国共産党政府は「日本のような経済大国になること」以外のことを構想することができなかった。そして、その通りの道を歩み、いまや中国は日本を追い抜き、第二位の経済大国になり、穀物を輸入する国になっている。
誰がどう悪いというわけではない。人が増え、人の暮らしの生活水準が上がってきたからにすぎない。仮に海に1000匹のサバがいて、10人がサバを食べたいと思った時、おのおの好きなだけ食べることができるが、それが100人、1000人になった時、そうはいかなくなることは単純な理屈だ。たったそれだけのことなのであるが、それだけのことでも、規模があまりにも大きいのだ。
我々は、これほどの大きな需要を、これまで抱えたことがなかった。地球の生態系には限りがあることを、人類が知ったのが20世紀後半であったのならば、その限りに直面せざる得なくなったがこの21世紀なのだろう。
限りがあるのならば、これまでのやり方を改めるのが当然の対応だ。しかし、そうはならないであろう。限りがあるからといって、そうですかと方向転換ができるほど、この文明は柔軟ではない。乱獲をすれば、やがて自分たちの首をしめることになるのは明らかなことなのであるが、だから乱獲をしないという規則なり規範なり、制度なり伝統なりができたとしても、それをことごとく破って悲劇的な結末を迎えるのが、人の歴史の常である。
かくて、資源をめぐる争奪が繰り広げられることになる。
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