2016年の民主党大会
アメリカでは価値観の変容や有権者の人種・民族構成などの変化から、共和党は大きな変化を迫られていると書いてきたが、このことは民主党も同じだ。
例えば、「同性婚」や「中絶問題」などは、今のアメリカは最高裁の判決もあり、当然の常識である価値観が確立されている。これまでは、民主党はそうしたことについて共和党との違いを主張することができたが、今の時代はそれらは政治争点にならない。そうなると、では民主党とはなにか、なにが共和党と違うのかという対立軸を明確に出すことができなくなってきている。
もちろん、トランプの言っていることにヒラリーは反対し、民主党も反対している。しかし、トランプの言っていることは、トランプ個人が言っていることえあり、本来の共和党の主張ではない。このため、今回の大統領選挙では民主党は共和党と争うのではなく、トランプという人物と選挙を争うことになっている。
ただし、トランプは共和党の大統領候補者であり、なぜそうなのかと言えば、トランプを支持する有権者が数多くいるということである。つまり、従来の共和党ではなくトランプを支持する人々がいるということだ。彼らはこれまでの共和党から取り残された人々であり、そうした人々が無視できない存在になってきたということである。だから、トランプは共和党の大統領候補者になり得た。
このことは民主党も同じだ。だから、トランプはサンダース支持者に自分に投票してくれるように述べている。民主党もまた混乱と分裂の危機を抱えているのである。
民主党大会でのオバマの演説は見事だった。この人の演説を聴いていると、問題が山積する政治課題を我々は団結して解決することができると思えてくるから不思議だ。この先もオバマが大統領を続けてくれないものかとすら感じてしまった。やはり、この人には理想主義者のカリスマがある。元々、左派の人権派弁護士だったこの人は、サンダースのようなラディカルな変革者であり、政治に「希望」を語る、アメリカ政治史上、最後の大統領になるかもしれない。現実問題として、民主党内にヒラリー嫌いの人々は多い。そうした人々にとって、今度の大統領選挙は「ヒラリー」に投票することは「ヒラリーを支する」ことではなく、「トランプを支持しない」「オバマが語るアメリカの希望」に投票するという意味になることをオバマの演説は伝えている。
しかしながら、である。
オバマの次に行われたヒラリーの指名受諾演説を見ると、オバマの演説を見た後であるからか、政治カリスマに欠けるように見える。これでサンダーズ支持者がヒラリーに投票するかというと、とてもそうとは思えない。かつてオバマの大統領選挙の時は、黒人が大統領になるということでのアメリカの有権者の底辺からの団結と盛り上がりがあったが、ヒラリーには女性初の大統領になるということでも、オバマの時のような底辺からの支持がない。一般有権者にとって、ヒラリーだと、どうしても不信感を感じてしまうからだろう。
合衆国大統領選挙は残り100日に入った。支持率は現状では双方ほぼ同じだという。
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