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May 03, 2016

経済無策の状態になったアメリカ

 アメリカの大統領選挙戦でのサンダースとトランプへのアメリカ国民の巨大な支持は、結局ところ20世紀末からのグローバル金融は、99パーセントのアメリカ国民に利益をもたらすものではなかったという結論の表れとみることができる。この格差への怒りが、グローバル経済そのものへの否定になってしまった。

 格差を是正するための教科書的な方法は、累進課税を高めるということである。

 しかしながら、これはなかなか進まない。その理由は二つある。ひとつは、パナマ文書でその一部が明らかになったように、多国籍企業や富裕層は財を国外に移動させることができ、タックス・ヘブンの対策をとることができる。タックス・ヘブン以外にも、今の法律・制度には様々な抜け道がある。

 もうひとつの理由は、アメリカでは、累進的な課税というもの、そのものに対して基本的に、これを拒否する、抵抗する感情がある。もともと、アメリカ合衆国は、政府による個人や企業への干渉を良いものとは思わない「文化」とも「社会意識」とでも言えるものがある。自分で稼いだお金を(実際のところは「自分で」稼いだわけではまったくないのであるが)政府が取り上げられる理由はないという感情である。その一方で、アメリカには共同扶助の文化もあり、助け合いや支えあいが当然のこととする文化もある。しかし、いずれせよ累進課税を上げることには大きな抵抗がある政治風土があるのがアメリカである。

 累進課税をそう簡単に上げることは政治的にできないとなると、有権者の感情をなだめるにはどうなるのかと言うと、進む方向としては、孤立主義であり、自由な貿易協定を否定するということである。外国製品には高い関税をかけ、消費者に自国の製品を買わせるようにするということだ。もちろん、アメリカ経済こそグローバル経済そのものであって、自由な貿易協定を否定したところでアメリカ経済に利益になることはない。自国の製品といっても、完全にアメリカ国内だけで完結した製品であるわけではなく、その大多数はやはり外国との交易によってもたらされるものなのである。

 しかしながら、政治は感情で動く。特に、アメリカ大統領選挙ほど、有権者の感情が左右するものはない。かつてのモンロー主義も禁酒法も、おそよ他の国々では「ありえない」ことであったが、「ありえない」ことが「ありえる」のがアメリカの民主主義である。有権者は、国家という枠組みで物事を考える人々である。このため、この有権者の上に成り立っている政治というものもまた国家の枠組みでしか物事を考えない。

 今回の大統領選挙候補者から感じることは、サンダースとトランプはもとより、ヒラリーにせよ、クルーズにせよ、格差問題を解決する道がさっぱり見えてことないということだ。選挙が目的になると、目先の票を得ることだけになり、有権者が喜ぶことをやればいいだけになる。

 その意味では、日本と同じであり、アメリカもまた巨大な経済無策の状態になってしまった。、なにをやっているのかといえば、「変えるといいながら、実質的にはこれまでと同じことをやっている」のである。

 このことが、格差はますます拡大し、これにより有権者の大多数からグローバル経済への反感を買い、そのことが自由貿易協定への否定と孤立主義を招くことになってしまった。今の状態では、誰が大統領になろうとアメリカの格差問題はなくならない。大統領候補者は、いかにも我こそが有権者の抱える問題を解決する政治指導者であるとスピーチし、有権者は新しい大統領に希望を託す。しかしながら、問題は一向に解決せず、良い方向にも向かわず、有権者の政治不信とグローバル経済への不満は、ますます高まっていくという負のサイクルになっている。

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