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February 20, 2016

アメリカは日本の戦争に巻き込まれたくない

 アメリカは、日本と中国が戦争になった場合、日本を助ける気はさらさらもない。中国軍が尖閣諸島に侵攻してきた際、今の日米安保条約では在日米軍は出動しなくても良いことになっている。昨年の安保関連法案の国会審議の時も、こんなものでは日本の防衛にはならないことを私は書いてきたが、結局その通りであることを産経新聞も認めざる得なくなったようだ。

 2月15日の産経のコラム【野口裕之の軍事情勢】にはこう書いてある。

「「米国の戦争に巻き込まれるな」とは、日米安全保障条約はじめ安保関連法の審議でも反対を続けたサヨクが執拗に繰り返す常套句だが、当の米国では「日本の戦争に巻き込まれるな」との論調が勃興している。」

 このコラムによると、米外交誌フォーリン・ポリシー1月15日号に、シンクタンクのランド研究所の著名な専門家に取材した記事が掲載され、その記事では「「日中尖閣紛争」への米国関与は超弩級の戦略的失敗を引き寄せる。尖閣に関する最善の危機管理は無視だろう」というのがランド研究所の提言であると述べられている。

 このコラムは書く。

「1月25日付米紙ウォールストリート・ジャーナルに載った論文にも、著者の狙いがそこにないとしても、日本防衛の戦略的価値を低く見積もる米国の一部潮流が透ける。」

 つまり、ウォールストリート・ジャーナルに掲載されたハドソン研究所らの専門家の論文も、結論として「日中紛争の勝者は中国、敗者は日本」であり、「米国の介入を嫌う中国と、外交解決に飛び付く日本の、双方で戦力の撤退、または縮小が図られ、国際社会も衝突回避を最優先に仲介を続ける」。そして、「調停過程で、オバマ政権は日本に対し、米国の全面介入による日米共同防衛を要請せぬよう圧力をかける」ようになるという。

 そして、このコラムも今の日米安保では、尖閣諸島での日中紛争に米軍は介入しないと述べている。

「確かに米太平洋軍司令官は1月27日、尖閣が「中国の攻撃を受ければ(安保条約に基づき)間違いなく防衛する」と、講演で明言した。バラク・オバマ大統領(54)も14年に同種の発言をしている。

 ところが、安保条約第5条が適用され、米軍出動を可能にするには《日本施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和・安全を危うくする》と認めることが大前提。ランドが絡んだ自衛隊VS中国軍交戦シナリオで、米国は腰を引き5条事態をほぼ認定しなかった。ハドソンに至っては、5条が完全に空証文だった。中国が最も望む日中軍事衝突パターンだ。」

 強調しておきたいが、日本の国会がではなく、アメリカ議会が5条事態を認定するかしないかで、在日米軍は出動動するかしないかが決まるのである。今の日米安保は、そうした一方的なものなのである。なぜ、これを改めようとしないのであろうか。集団的自衛権どうこう以前のことであろう。

 アメリカのシンクタンクでは、尖閣諸島は日米同盟にとって「厄介モノ」になっている。アメリカの最優先事項は、米中の軍事衝突を避けるということである。産経のコラムは、アメリカのこうした考え方を今に始まったことのように書いているが、こんなことはずっと前から当たり前のことであった。

 そして、このコラムは最後にこう書いてある。

「尖閣を含め国家主権を独力で守り抜く覚悟・戦力の向上に全力を挙げると共に、効果的外交・世論工作で日米同盟の空洞化が、いかに米国の国益を侵害するかを理解させ、同盟引き締めを図らねばならぬ。「米国の戦争に巻き込まれる」とあおるのではなく、「米国を戦争に巻き込む」戦略こそ、日本に求められている。」

 とてもではないが話にならない。

 本来は米国の戦争であり、米国が責任を取るべきことについては、なるべく同盟国を最前線に立たせてやらせる、アメリカはやらない。そして、同盟国の戦争であっても、米国の戦争ではないことについては、米国が介入することはしない。同盟国だけでやる。これがアメリカの同盟国への方針である。

 「日米同盟の空洞化が、いかに米国の国益を侵害するかを理解させ」るなどということは、米国議会での膨大なロビー活動費を費やしているイスラエルなどならばいざしらず、ただでさえ国際交渉力、外交力のレベルが低い日本には不可能なことだ。ネタニヤフがやっていることは、アメリカをイスラエルとパレスチナの戦争に巻き込むことであるが、イスラエルはそのためにそれ相当の労力をかけている。新安保関連法とやらが「米国を戦争に巻き込む」戦略なのだとするならばお笑いものである。

 産経は上記のように、いざとなればアメリカは日本を助けることはしないということをよく知っていながら、日本は日本人の手で守ろうということはいわず、だからアメリカに日本を助けてもらう手を考えようと言っている。ここに産経の対米従属主義がある。産経は憲法改正は主張しながらも、対米従属をやめることはしないのである。対米従属のままでありたい、日本を防衛してくれる世界の警察官のアメリカ、強いアメリカであって欲しい、そのためには沖縄に基地を置き続けるし、思いやり予算も払い続けますと言っているのである。

 これはおかしなことだ。本来のあるべき姿でいうのならば、軍事に膨大なカネがかかるというのならば、その膨大なカネを払える程の巨大な経済力を持つ国にならなくてはならない。経済は豊かで、外交交渉力は強く、軍事は自国で自国の防衛をするという国にならなくてはならないはずだ。

 ところが、実際のところ、この国は巨額な借金を背負っている。少子高齢化で若者の数はどんどん少なくなっている。つまり、不可能な話なのである。今のこの国は、中国があーとか、北朝鮮があーとか言っている場合ではないのだ。

 日本側が(日本を防衛してくれる)強いアメリカであって欲しいと願い、対米従属であり続けようとするのは勝手である。しかしながら、何度も言うが、アメリカは自国のことで手一杯なのだ。

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