日本と韓国
4月29日の安倍総理のアメリカの上下両院合同会議での演説は、新しいことはなにもなく、日本はこの先も日米関係の現状を維持し続けることを表明しただけのものであった。
この安倍総理のアメリカでの演説に対して、韓国の朴槿恵大統領は「日本が歴史を直視できず自ら過去の問題に埋没しつつある」と批判したという。毎度同じみの朴槿恵大統領の反日である。
ようするに、わからないことがふたつある。一つ目は、安倍総理はなぜここまでしてアメリカに良く思われたい、アメリカに従属したいとするのであろうかということであり、二つ目は、朴槿恵大統領はなぜここまで執拗に反日であろうとするのかということだ。このことについては、日本と韓国の国内でも疑問の声が多い。
このことについて、以下のように考えることで理解することができる。
韓国の反日は「日本への批判」というよりも、中国への従属意思の表れである。日韓の関係悪化は、中韓の関係強化を意味する。さらに、韓国が反日態度をとることは、アメリカにとっては気持ちの良いことではない。アメリカの望みは、米日韓の三国の共同で中国を抑えることだ。韓国が反日であることは、アメリカへの嫌がらせであるとアメリカは受け取る。つまり、朴槿恵大統領の反日は、米韓関係の不和になり、中国の利になる行為なのだ。
今の韓国の国内では、朴槿恵大統領の執拗な反日発言に眉を曇らせている人々は多い。同様に、日本でも安倍総理の対米従属の態度に眉を曇らせている人々も多い。安倍総理はなぜここまでアメリカに従属し、朴槿恵大統領はなぜここまで中国に従属しようとするのであろうか。
その理由は、今の時代での地政学的な置かれている位置が、日本と韓国は「同じ」だからである。細かく言うと、韓国は中国と地続きであり、アメリカは日本海(東海)と日本列島を超えた太平洋の向こう側にあり、日本は中国に対してもアメリカに対しても(ユーラシア大陸側に近いとはいえ)海で隔てられている。この地理的な違いが、両国の運命を定めているとも言えるだろう。
大変興味深いことに、21世紀初期の今の東アジアで起きていることは、日本は必要以上にアメリカに従属しようとし、韓国は必要以上に中国に従属しようとしているということだ。このことをさらに大きな枠組みで見てみると、東アジアでアメリカの覇権が衰退し、中国の覇権が台頭し始めると、その二つの大国の間にある小国の日本と韓国は、日本はアメリカ側につくことを選択し、韓国は中国側につくことを選択したということだ。
今の日本の対米従属は、戦後70年のサンフランシスコ体制下での対米従属ということである以上に、21世紀のアメリカの覇権の衰退と中国の台頭という枠組みで考える必要がある。今のこの国の政府は、戦後のサンフランシスコ講話条約とか日米安保闘争などの歴史の知識を踏まえて日米関係を考えるということをしない。今の目の前にある「アメリカの覇権の衰退と中国の台頭」に対して、どうしたらいいのかという文脈で捉え、その結論としての対米従属なのである。だからこそ、在日米軍も日本に(より具体的に言えば、なるべく本土ではなく沖縄に)あり続けて欲しいとしている。今の日本政府にとって、日米関係が親密で良好なものでなくては困るのである。
このことは、今の韓国政府が韓中関係を親密で良好なものであろうとしていることと同じだ。だからこそ、安倍総理はアメリカの大統領も議会も実質的には望んでいなかった日本の集団的自衛権の成立に力を注ぎ、朴槿恵大統領は中国が命じているわけでもない反日発言を繰り返すのである。彼らは、大国によかれと思ってやっている小国の指導者であることを忘れてはならない。
もちろん、これは日本にとっての、韓国にとっての、あるべき国の姿ではない。日本も韓国も、本来の独立主権国家であるのならば、米中のどちらに従属することなく、米中の間にあって、このふたつの大国の関係を取り持つ国であるべきなのだが、とてもではないが今の日本も韓国も、そうした高度な外交手腕を持つ国ではない。そうである以上、日本と韓国は、米中どちらかに従属して生き延びるしかない。日本は半世紀以上のサンフランシスコ体制から、そのままアメリカに従属し、韓国も半世紀以上アメリカ側であったが、ここで大きく舵をきってかつての宗主国の中国に向かっているというわけである。
ようするには、日本と韓国は「同じ」であり、本人たちは知ってか知らずか、安倍晋三総理と朴槿恵大統領は「似た者同士」なのである。
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