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February 08, 2015

テロと戦うために必要なこと

 昨日7日の産経新聞の産経抄は、産経新聞はやはりこうだなと思わせてくれる、まことにもって産経新聞らしいものだった。

 日本人二人が殺害されたことへの「仇(かたき)をとってやらねばならぬ」というのである。で、どのようにして仇をとるのであろうか。ヨルダンと一緒に報復爆撃をせよと言うのであろうか。そして、いかにも産経らしく「現行憲法の世界観が、薄っぺらく、自主独立の精神から遠く離れていることがよくわかる。」「命の危険にさらされた日本人を救えないような憲法なんて、もういらない。」と述べている。ようするに、改憲をしなくてはならないと言っている。

 こうした短絡で狭窄な考え方が日本を敗戦に落とし込めたということが、敗戦から70年という歳月をかけてまだわからないのだろうか。

 戦前の日本には、良きにせよ悪しきにせ国家の世界戦略のようなものがあったが、戦後日本には、「世界をこのようにしたい」という意思や考えはなかった。敗戦の復興から経済大国へと、とにかくひたすら世界中でビジネスをしてきた。なにしろ軍備をアメリカというよその国に丸投げして、経済大国になった国である。 

 今、中国や韓国ともめているのも、「世界をこのようにしたい」という意思があれば、こうしたことを放っておくことはなく、日本国家の威信をもって中国や韓国に圧力をかけて押しつぶし続けたか、きちんとした対応をとったか、いずれにせよ、なにもしないでただ放っておくことはしないであろう。イスラム国による日本人人質事件ついても、日本政府は中東に対してなにをすることもできず、実質的に交渉にあたったのはイギリスの民間の危機管理コンサルタント企業だったという。

 日本がこれまで、それなりになんとかなってきたのは、ようするに、日本は自分のアタマで考えることをせず、そういう外交的なモメゴトはアメリカに従ってきたからである。この仕組みを作った、アメリカの占領統治下の頃の日本の政治家たちは、いつの日か日本が復興を成し遂げた暁には、自分のアタマで考えることを取り戻したい。それまでの辛抱だと思っていたのであろう。

 しかしながら、この国は経済大国になっても、それを取り戻すどころか、安易で短絡な思考パターンになり、70年たってもまだその状態を続けられるものと思っている。だから、アメリカが介入しない日中や日韓の問題は日本はどうすることもできない。中東においては、これまでと同じく、いや、それ以上にアメリカに追従するということで、イスラエル支持とイスラム国への対立メッセージを表明した。その必然的帰結として、今回のイスラム国による日本人殺害事件がある。そして、これからどうやら政府はこの事件をもって、自衛隊の海外派兵の法制化と憲法改正の理由としようとしているようだ。

 政府は、安倍首相がイスラエル支持とイスラム国への対立メッセージを出したわけではないとしているが、そういうものであったとイスラム国に利用されたということで情報戦で負けたことになる。こうした政治的メッセージのすりかえ、でっち上げは明治の頃から大日本帝国がよくやってきたことであり、アメリカがやっていることであり、イギリスがやっていることであり、つまりはどの国でもやってきたし、今でもやっていることだ。

 だからこそ、より一層明確に、日本はテロリスト集団と戦争をする気はないし、国民の大多数はアメリカとイスラエルの側につくことを望んでいない。そのことを世界に向かって何度も何度も主張することがテロと戦うことになる。

 イスラム国の支配地域も含めて(何度も言うが、イスラム国の支配地域も含めて)、人道支援を積極的に行う。日本企業は、原発も含めて武器の販売は一切しない。アメリカの空爆やイスラエルの攻撃で民間人に死傷者が出た時は、その非道な行為をアメリカやイスラエルに抗議する。イスラム国は情報戦でやっているのならば、こちらはそれ以上の情報戦で対抗するのである。イスラム国の中で、日本にテロを行うことはおかしいのではないかという意識が出るようにイスラム国を「教育」するのである。アルジャジーラで、日本の番組を年に100本ぐらい制作して放送してもらうのもいいだろう。

 これは決して、できないことではない。もともと、中東には日本は良い国というか、とりあえずよくわからない国、良くもなければ悪くもないという透明無色のイメージがある。戦後の日本政府は、資源である石油の原産地の中東諸国との関係を良好に保とうとしてきた。日本は十字軍に参加したとか言っているのは、イスラム国ぐらいである。ただし、今回の出来事で中東諸国での日本のイメージは悪くなり始めている。

 例えば、日本は西欧列強のアジア侵略に対抗して、アジアでいち早く近代国家を樹立し、日露戦争でロシアと戦い、第二次世界大戦ではアメリカと戦ったというイメージを伝えることは大きな意味を持つだろう。首相がイスラエルの旗の前で、いかにもアメリカ・イスラエルの側に立ってイスラム国と戦うかのように思われる演説をすることは百害あって一利もない。アメリカは、別に日本のことをありがたく思うことはない。

 テロと戦うために必要なのは軍事力ではなく、知識・情報・技術の力である。中東について、それそうとうの知識と情報がなくてはならない。しかしながら、今の日本にイスラム国を「教育」することができる人がどれだけいるのだろうか。満足な中東研究機関があるであろうか。大学で中東についての研究なり教育なりが十分なものになっているだろうか。政府にはアラビア語での情報発信力があるのだろううか。

 そもそも、日本も参加したイラク戦争とは何だったのか。なぜ、いまイスラム国が台頭しているのか、そうしたことをきちんと検証し考えることを行っているだろうか。

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