香港の雨傘革命が残したもの
12月15日、香港警察により最後の砦であった銅鑼湾の占領区が強制排除され、かくて9月末に始まった道路占拠は79日目に完全に終結した。梁振英行政長官は、民主化要求デモが終わったと宣言したという。香港政府からの進展のある回答を得ることなく、香港の雨傘革命は終わった。
香港政府および大陸の中国政府がいわば「勝利」したような形で終わったわけであるが、世界はこの出来頃を見ていた。特に、この出来事が台湾に与えた影響は大きい。台湾は、明日の我が身と思って香港を見ていたことだろう。今回の出来頃は、大陸とひとつになるとロクなことにならないということを世界に向けて証明したようなものである。
台湾の統一地方選で与党の国民党が歴史的大敗をきし、その責任を取り馬英九総統が国民党の主席を辞任したわけであるが、今後、大陸と「ひとつ」になっても台湾の地位は保証されるという統一派の言葉には誰も耳を向けなくなるだろう。馬総統は習近平との会談を目指すなど、親中的に平和な統一の方向へ台湾を向かわせようとしていた。それが台湾の民意ではねのけられたのである。統一派が信頼を得るのはもはや不可能と言ってもいい。今回の出来事で、大陸中国が失ったものは大きい。
その一方で、学生側も時期尚早だった感がある。行政長官選挙は2017年なのだから、この時に「誰でも立候補できるべきだ」と占領運動をした方がインパクトが大きかったように思う。もちろん、2017年の選挙の時にも抗議運動はあるだろう。香港は普通の選挙すらできないところなのであるというイメージが世界に広がることは、香港のビジネスに大きなマイナスになるということを香港市民の意識に深く浸透させる必要があったように思う。そのためには、それなりの時間がかかる。
デモあるいは抗議運動は、当然のことながら市民生活の妨げになる。やる側は、市民生活を妨げることで意思を表明しているのである。しかしながら、市民生活を妨げることは、市民社会からの反発を受けることになる。台湾の抗議運動が成功したひとつの理由は、抗議活動場所を立法院という政治家だけにめいわくがかかる場所に限定したことだ。その意味で次回の大規模な抵抗運動をやる時は、今回の出来事は大きな事例になるであろう。
ただし、「普通選挙」があれば香港の様々な問題が解決するわけではない。 「普通選挙」だけで世の中が良くなるわけではないことは、先日、衆院選挙があったばかりの日本を見ればよくわかるだろう。大陸の息のかかった候補者だけの中での選挙など民主主義の選挙ではない、という気持ちはよくわかるが、今の香港がやらなくてはならないことは他にも山のようにある。そう考えると、今回の雨傘革命が警官隊による撤去で終わったとしても、香港の若者たちが述べなくてならないことは数多くある。オキュパイ・セントラルは、その中のひとつであったにすぎないと考えるべきだろう。
習近平国家主席は、20日のマカオ返還15年の記念式典で「『1国2制度』を維持する自信と決意は絶対に揺るがない。中央の権力を維持しながら高度な自治権を保障しなければならない」と述べたという。マカオは大陸の富裕層相手のカジノ産業で発展してきたが、中国の景気後退により顧客が減っている。マカオでも香港のような民主化要求運動が起きないように愛国教育を普及させるという。
ますます、台湾は大陸から遠ざかる。
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