オバマ民主党大敗
11月4日のアメリカの中間選挙は共和党が上下両院とも過半数を占め民主党の惨敗という結果になった。
メディアの多くは、オバマ政権はレームダック(死に体)化してしまったかのように報道している。アメリカは今後、共和党政治へとまたもや傾くことになるのだろうか。オバマによってアメリカは弱くなってしまったという声が多い。今回の中間選挙の結果は、国際社会で強力なリーダーシップを発揮する強いアメリカ、世界の警察官アメリカへと戻ることを望む感覚を反映しているのであろうか。また、オバマケアについての批判も大きかった。
オバマや民主党政権がどうこうではなく、我々はもっと本質なことを考えなくてはならない。オバマをいくら批判しても、今の複雑な国際情勢とアメリカの現状は変わることはない。レームダックしているのはオバマ政権ではなく、かつてヘンリー・ルースがいった世界覇権国アメリカを意味する「アメリカの世紀」である。このことはオバマ政権からではなく、その前のジョージ・W・ブッシュ政権から始まっている。イラク戦争は、20世紀アメリカのレームダック化の現れであったのだ。
ウクライナ情勢や「ISIL」に対して強力な指導力を発揮できないのはオバマ大統領のせいではない。本質的には、20世紀の「強いアメリカ」像を引きずっている今のアメリカ外交のあり方そのものに原因がある。もし共和党政権になれば、むしろもっと悪い結果になるだろう。
ここで問題なのは、アメリカ自身が新しいアメリカ像をまだ見いだしていないということだ。今回の中間選挙でも、共和党はオバマ批判の一点張りであって、ではどうするのかというと、なんら新しい政策はなく、昔のままの「強いアメリカ」へと戻ることである。しかしながら、現実として巨大な財政問題を抱えるアメリカに昔のような「世界の警察官」に戻れといっても、そういうわけにはいかない。共和党のオバマ批判は、オバマケアについてもオバマの外交政策についても実質的な内容がない、ただオバマを批判したいだけのものになっている。
財政以外にも様々な国内問題を抱えるアメリカは、もう以前のアメリカではない。「20世紀アメリカ」はとっくに終わったのである。アメリカはこのことに気がつき。新しい「世界の中の覇権国アメリカ」を樹立する必要がある。ヘンリー・ルースの「アメリカの世紀」は20世紀のアメリカ・イメージであった。今、必要なのは21世紀の新しい「アメリカの世紀」像なのだ。そのイメージを持って、これからのアメリカの行く先を論じる政治家が必要だ。もはや「強いアメリカ」「アメリカは世界の警察官になるべき」というのは時代錯誤な妄想である。
しかしながら、どうも現状ではそうした政治家が出ていない。本来、今のアメリカ政治が問うべきことはオバマがどうこうではなく、これからのアメリカはどうあるべきかということであったはずである。ところが、今回の中間選挙を見ると民主党は自分はオバマとは違う、共和党はオバマを批判することしかなかった。この先も議会が民主党過半数であろう共和党過半数であろうと、大統領が民主党であろうと共和党であろうと、アメリカは分裂し続けるだろう。
中間選挙で共和党が大勝したから、次の大統領選挙は共和党の大統領が選ばれるようになるわけではない。大統領選挙になると若者や女性やアフリカ系、ヒスパニック系、アジア系などいわゆる白人中高年層ではない人々の票が大きく影響をする。ただし、毎度の如く巨大メディアが投票結果を大きく左右する危険性は常にある。
今の時期のアメリカは、新しいアメリカ像を模索している時期だとも言えるだろう。本来ならば、21世紀の最初の10年間でこのことをやっておけばよかったのであるが。9.11とブッシュ政権がそれを遅らせてしまった。この政治混乱の先に新しいアメリカ像が出てくるのか。それはまだわからない。
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