米中会談での温室効果ガス削減
日本における地球温暖化の認識は「地球温暖化なんてウソだろ」という地球温暖化をマガイモノ、エセ科学とする認識である。その一方で、最近の天気はおかしいことを漠然と感じている。
地球温暖化あるいは気候変動について、当然のことながら細部において様々な議論はある。議論はあるが、人類の活動が地球環境に大きな影響を与えている、その影響により今後、人類の(人類の、である)生存に適した環境を維持することができなくなっているという認識は、21世紀の今の時代、国際社会の常識的な認識になっていると言えるだろう。
滅びつつあるのは野生のサイやゾウではない。もちろん、それらの動物は絶滅の危機にある。しかしながら、危機にあるのは人間の環境なのだ。地球温暖化は地球の危機ではなく、人類の危機なのである。
ところが、この国では「地球温暖化なんてウソだろ」の話が依然として多い。世界の先進国が今の産業や文明そのものあり方を変えなくてはならないと、実行できるのかどうか別として、少なくとも思ってはいるの対して、この国では「地球温暖化なんてウソだろ」といったレベルの話をしている。
なぜそうなのかついては、機会を改めて考えてみたい。
今月の12日、アメリカのオバマ大統領と中国の習近平国家主席は温室効果ガスの削減や非化石燃料への転換などといった温暖化対策で合意した。もちろん、アメリカと中国の首脳がそうしたことを「考えている」だけで実際のところどうなのかということはある。しかしながら、京都議定書から離脱し国際的な温暖化対策に従うことを避けてきたアメリカと、これまでCO2の削減目標を拒否してきた中国が削減の目標値(あくまでも目標値ではあるが)に合意したことに世界からは驚きを持って見られた。
言うまでもなく、世界でもっともC02を放出しているのはアメリカと中国である。特に中国は公害超大国といってもよいほど環境対策が遅れている。しかしながら、この二つの国は、まごうことなき人類の環境を破壊している国ではあるが、その一方で風力発電などにも力を注ぎ、脱化石エネルギーの先頭に立っている国なのである。このへんに大国のすごさを感じる。
シェール革命により石炭と石油から天然ガスへの転換が進むアメリカはともかく、中国はそうした脱化石燃料の方向へ切り替わろうとしている。今回、中国がCO2排出削減でアメリカと合意したのは、国内での石炭発電を大きく下げる政策が軌道に乗り始めたからだ。中国が排出しているCO2の膨大な量の大きさでは、石炭発電の規模を少なくするだけで、それだけでもCO2排出削減に成功していることを世界に示すことができる。ただし、CO2排出量を2030年頃をピークにして減らすというが、これから15年先では習近平はトップの座にはいないし、この15年間はどうなるのかということがある。この先15年間、中国が排出する量はさらに増える。温暖化はさらに進展することになる。
また、中国では化石燃料に変わる再生可能エネルギーの中に原子力発電も大きな位置を占めている。ここに中国とは違う、日本のスタンスを世界にアピールするポイントがある。
今、我々に求められているのは、大規模なC02の排出をしなくても成り立つ産業社会である。原発の稼働を求める産業界も原発が必要なのではなく、安くて安定した電力の供給が必要なのであり、いまのところそれを可能とする技術は原子力発電なので原発稼働を求めているだけだ。原発は化石燃料を使用しないといっても核廃棄物を残す以上、とてもではないがクリーン・エネルギーとは言えない。原発への過度な依存をやめる。再生可能なエネルギーの比率を高めることは、CO2排出削減への道につながる。
自然エネルギーの発電など使いものにならないという声があるが、原子力発電も最初はそうだった。日本の政府とメーカーはアメリカとの密接な関係の中、戦後まもない頃、まだ使い物になるかどうかわからなかった原子力発電に国策として取り組み、ここまで原発を増やしてきたのである。そのことを思えば、ここでまた国策として脱原発へと進んでいくことは可能だ。戦後日本の原発産業がそうであったように、新しいエネルギー産業の創出が、新たなる雇用の場と市場を増やし新しい経済成長を可能にする。
今の状況は、温暖化対策において日本は中国にすら遅れていると言わざるを得ない。この国は、ますます世界の主流から外れていく。
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