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October 12, 2014

いまさら全球凍結理論を知った

 先日、ニコニコ動画でNHKスペシャルの『地球大進化』を見た。2004年の放送というから、もう10年前の番組である。

 これをテレビでやっていた時は、この番組のことを知ってはいたが、また地球の歴史もの、生命の歴史もの番組かと思って、さほど気にとめず見ることもなかった。

 同様なテーマの番組で1987年にNHK特集『地球大紀行』があった。これは好きな番組でDVDもサントラも持っている。サントラの方は今でも時々聴くことがあるが、番組の方はほとんど見直すことはない。もはや内容についてわかっているという気分があって、もう一度見るまでもないと思っていた。そういうわけで、『地球大進化』が放送された時も見ることもなかった。

 それから10年がたった。この10年、自分の関心は自然科学から離れていた。なにやら過去に大規模な氷河期があったということが最近になってわかってきたということを、なにかで読んだことがあったが、ふーん、そうなのかと気にとめることもなかった。まあ、そうした大規模な氷河期になることはあるだろう、それよりも問題なのは地球温暖化だなと思っていた。とにかく、地球科学については『地球大紀行』で十分だろうと思っていたのである。

 そうしたある日、神保町の本屋でハヤカワ文庫のノンフィクションの棚を、なにかおもしろい本はないかと見ていたら『スノーボール・アース:』という文庫本があった。手にとってペラペラとページをめくってみて、ふーん、地球全部が凍結ねえと思い、あとがきを読むと、地球科学のパラダイム転換だみたいに書かれていた。あーそうなの、パラダイム転換なの、ふーんという感じで、さほどなにを感じることもなく、そのまま本を棚に戻して、それっきりであった。

 そうしたわけで先日、ニコニコ動画をつらつら眺めていたら『地球大進化』があったので、じゃちょっと見てみるかなと思い見てみた。見てみると、これはちょっともの凄いことなのではないかと思い始めてきた。

 神保町の本屋でハヤカワ文庫の『スノーボール・アース』をパラパラとめくった時はさほどなにも感じなかったのに、なぜニコ動で『地球大進化』を見たら大きな衝撃を感じたのか。活字と映像のインパクトの違いということもあるが、ひとつは全球凍結とは地球的規模の凍結のことだけではなく、その時期をどのように生命は生き延びたのか、全球凍結の地球はなぜその状態から元に戻ったのかということを含むものであり、この出来事がその後の生物の爆発的な進化のきっかけになったということが、本屋で『スノーボール・アース』をパラパラとめくっただけでは理解できなかった。

 もう一つは、ニコ動ではコメントがつくということだ。『地球大進化』は、ニコ動のドキュメンタリー動画の中でも人気のある動画でコメント数が多いのであるが、このコメントがまたおもしろいものばかりなのだ。巨大隕石の衝突やスノーボールアース仮説の説明のシーンでは、「うそくせー」という否定コメントも数多く、コメントにつられて自分もまた「ホントかよ」という視点で番組を見る。これがおもしろい。

 テレビの教養番組やドキュメンタリーは、そこで語られていることが真実であると思い込んで見ている。もちろん真実ではあるのだろうが、特に科学番組は本当にそうなのかと思いながら見ることが必要だ。ある学説が説明され、そこに疑問が生まれ、その疑問に答えていくのが学問の基本なのである。その点、ニコ動のコメントは最適で、ハーバードやスタンフォードの学者の語ることに「うそくせー」「ほんとかよ」というコメントがつくのは見ていて楽しく、その「そうくせー」という疑問に答えられなくては科学ではないのである。

 とにかく、10年前の番組である『地球大進化』を見て、なんと!こうだったのかと驚いた。ニコ動で見た後、NHKオンデマンドでも何度も見て、なるほど!こうだったのかと思った。

 言い訳をするわけではないが、恐竜については最新の知識を入手しようとしてきた。恐竜についての新刊の本が出ればチェックし、国内、国外の博物館に行くたびに意識して恐竜の展示を見てきた。しかしながら、恐竜学のバックボーンたる地球史、生命史において、これまでの根本を覆す新しい見方、考え方が出てきていることに自分はなぜ気がつかなかったのか。カンブリア紀以前に巨大隕石落下と全球凍結で大規模な生物絶滅があったこと、地球内部のプレートテクトニクスだけではなくスーパープルームが生物の環境に関わってきたことなど、自分はいかに最近の地球科学を知らなかったことか。現在の気候変動や地球温暖化しか考えることをせず、古い時代の気候変動に関心を持つことがなかった。学問的な大きな視野を持ってこなかった。このへんが素人の浅はかさであった。

 ジェームズ・ラブロックとリン・マーギュリスのガイア仮説は、多分に生物の側から見た地球環境の見方だった。しかしながら、今、新しく惑星地球を主とした地球と生命の歴史の見方が生まれている。人間の想像を超える寒暖の繰り返しをしてきた地球環境の変化の中を生命は生き続けてきた。ガイア仮説とは違う時間スケールと観点で、地球の自然変動と生命進化が密接な関わりをもっているという見方が生まれている。まさに地球科学のパラダイムの変換なのだ。

 10年前にこうしたことがもうわかっていたことを知らずに、今まで自分はなにをしてきたのか。とにかく今、この方面の本をいくつか買い込み、読んでいる。

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