北京事情
香港の民主化運動の先行きはいまだ見えてこないが、香港の初代行政長官であった董建華・人民政治協商会議副主席は24日、香港で記者会見し「人民解放軍が出動して対応することはない」と述べたという。元々、先月に始まった抗議運動について香港の今の行政長官の梁振英は北京に武力弾圧の介入を要望したが、習近平国家主席はこれを拒否したということだ。つまり、北京政は香港の騒動は香港当局に任せたいということのようだ
習近平は今、香港に関わっていられる状態ではない。習政権が今直面している課題は、共産党内部に蔓延する汚職・腐敗の一掃することだ。
これまで中国では、土地バブルが政治家や役人の不正蓄財のもととなってきた。共産党政権では土地の私的所有はなく、土地は人民のものということになる。人民のものというのは共産主義のタテマエであって、実際は共産党のものである。共産党は農民から取り上げた土地を民間業者にリースで転売するわけであるが、業者はその土地に商業施設や工業団地を造ったりするわけだから高額な値段で転売をする。これらのカネを投資にまわすことで、人口100万人以上の巨大な地方都市が数多く生まれてきたのが鄧小平以後の開放政策での中国経済の発展の実態である。そして、業者は開発権限を握っている地方の党書記や役人にリベートをばら撒いてきた。不正や裏取引が蔓延しているのである。
さすがにこの不正・腐敗を正さなくて共産党政権そのものへの不満が高まり続けるということで、習近平政権は「反腐敗」キャンペーンを行い、「トラ(老虎)もハエ(蒼蠅)もまとめて叩く」というスローガンを掲げて汚職の摘発に突き進んでいる。
その摘発された大物政治家が元中国共産党政治局常務委員の周永康である。これほどの上位クラスの政治家が立件されたことは大きな話題となっている。
周永康の背後には江沢民がいる。習近平と江沢民一派との権力闘争があるという見方もある。汚職撲滅の大義名分のもとで粛正ともいうべき周永康の処分はすみやかに行われるだろう。江沢民一派の勢力をそぎ落とし、やがて江沢民が亡くなれば習近平の天下となる。習近平にとって共産党政権の存続と自身の権力の維持・安定が目下の最大の課題であり、北京から遠く離れた香港のことなど眼中にないであろう。
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