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May 02, 2014

台湾出兵から第二次世界大戦まで

 中国の「共産党・政府は昨年12月末の安倍晋三首相の靖国神社参拝を受け、「戦争の歴史を使って日本を孤立させる」(共産党関係者)政策を決定。内外に対して大々的にアピールしており、来年の抗日戦争勝利70周年に向け、反日機運をさらに盛り上げる方針とみられる。 」

 共産党理論誌「求是」は「「今年は日清戦争開戦120周年で、(明治政府成立以来で初の海外出兵となった)台湾出兵140周年でもある」と指摘。「1874年の台湾出兵から1945年の第2次大戦終了まで、近代日本が中国に対して行った70年余の侵略」について歴史的事実を明らかにする必要性を訴えた。」

 台湾出兵から第二次世界大戦まで、この間に日本が中国にやったことをあげつらわれるとなると、そうとうな数になる。

 大日本帝国は中国に対して、ほとんど全部「悪いこと」をやってきた。西洋列強も中国に対してそうした「悪いこと」をやってきただろ!と言うことは正しいが、だから日本もやっていいという理屈にはならない。では、あの時、日本が台湾出兵とかコレコレの「悪いこと」をやらないことができたかどうか、できたわけないだろ!と言うことは正しいが、だからやってよかったという理屈にはならない。戦前の日本人は、まさかこの中国が21世紀には日本を抜いて世界第二位の経済大国になって、自分たちのやっていることを謝罪せよと言ってくるようになるとは夢にも思っていなかっただろう。

 1972年に田中角栄と周恩来の間でかわされた日中共同声明で、中国は日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することになった。だから、日中共同声明で放棄するって決まったでしょうと日本側は思っているかもしれないが、一介の共同声明で中国側の恨みつらみがなくなるわけはなく、その後、この謝罪問題は日中間で何度も出てくることになり今日に至る。とうとう昭和の日中戦争どころか、その先の明治7年の台湾出兵から謝れと言われるようになるようだ。このままでいくと、さらにその遙かな先の室町時代の倭寇についても謝れと言ってくるかもしれない。ちなみに、倭寇というのは日本人だけではなかったのだが。

 普通、世界のどの国もこうしたことを政治家は国際的な場では言わない。というか「言わない人」が政治家をやっている。こんなことを言っても相手の国の国民感情を悪くするだけで、それはめぐりめぐって自国の益にならないということをよく知っている人が政治家をやっているものなのである。習近平がドイツで半世紀以上前に起きた日本による侵略を非難したが、そうしたことを言うということは、言うことが利益になると思っているから言ったのであろう。でなければ、普通は言わない。

 日本人が「我々は日本人である」という意識を持つようになったのは、欧米諸国が日本にやってきたからであり、最も衝撃を与えのが言うまでもアメリカであり、ペリー艦隊の来航である。欧米の対概念として「日本」という意識が生まれ、「我々は日本人である」「このままでは我々は侵略される」「清朝中国のようにはなりたくない」という意識を持つようになった。

 同様に、中国では日本に侵略されることによって「我々は中国人である」という意識を持つようになった。不幸なことに、「このままでは我々は日本に侵略される」と思い、近代国家となって日本や欧米列強の侵略をはねのける国になればよかったが、そうしたことにはならなかった。日本のような列島国家であれば、すばやく国がまとまり、ひとつの方向へ進むことができたが(それでも、それなりにいろいろなことがあった)大陸の広大な国である中国はそうカンタンにはいかなかった。清朝の末期から共産党による中華人民共和国の誕生の半世紀の時間はその混乱の時間だったと言える。中華人民共和国になってもその混乱はまだ続いていた。やがて工業化より経済成長の一途を辿っていった。一方、日本経済は落ちていった。21世紀になって、ようやく中国は日本を「見下す」ことができるようになった。

 日本の側もそもそも脱亜入欧で近代国家になった国である。戦後も脱亜入米で脱亜であることは変わりない。ようするに中国を「見下して」きた。ところが「見下して」きた中国が、大国として日本の前に現れる時代になった。近代日本の歴史的な感覚では「見下して」きた中国なのである。

 経済はもはや国がどうこうという世の中ではなくなっている。しかし、人々の意識は近代国家の枠の中にある。

 まこと日中はややこしい。

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