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May 18, 2014

ますます「普通の国」ではなくなっていく

 イラク戦争の時、時の小泉内閣で日本の自衛隊も派遣することになった時、作家の池澤夏樹さんがホームページに掲載していたコラムで、将来は自衛隊は米軍の支援で地球の裏側にも行くようになることを危惧することを書いていた。それを読んだ時、そうしたことになる日が本当に来るのだろうかと思った。まさかそこまでにはならないだろうという思いと、そこまでいくかもしれないという思いがあった。以来の自分の中のどこかで、どのようにしてこの国はそうしたことをやるようのだろうかという思いがずっとあった。今の安倍首相が集団的自衛権の行使容認の動きを見ていると、こうしてこの国はそうしたことをやるようになるのだと思っている。

 戦地から日本に避難する日本人の乗せた米軍艦が攻撃された時、自衛隊が守ることができない。だから守ることができるようにしたいと述べているが、自衛隊が守ることができるという前提でものを言っているのがまったく理解できない。この時の指揮権はどこにあるのだろうか。米軍の指揮下に入るということは、もはや米軍の一部隊であり、それであるのなら最初から「米軍の一部隊である自衛隊」を組み入れた行動になる。おそらく安倍首相が言っていることはそういうことではなくて、戦地から日本に避難する日本人の乗せた米軍艦が敵の攻撃を受けた。米軍だけでは十分な対応が取れないと思われる状況になった。そこで米軍は日本の支援を要請し、日本の自衛隊が駆けつけて米軍艦を助ける、具体的には米軍艦を攻撃している敵に日本の自衛隊が攻撃するということなのであろう。こんな想定はまったく話にならない空想の話だ。本気でこうしたことがありうると思っているのだろうか。

 集団的自衛権の行使せよという人々の根本のところには、アメリカは日本を防衛するのに日本はなにもしないのはおかしいではないかという考えがある。おかしいではないかと言っても、そもそも日米安保はそうなっている。何度も述べて恐縮だが、日米双方の合意のもとで日米安保は結ばれている。だから日本は国内の数多くの場所(特に沖縄県)に広大な米軍基地を置き、思いやり予算を払っている。日本はそのコストを払っているのだ。にもかかわらず日本はなにもしていないという声が上がってくるのは、日米安保の成立過程やこれまでの状況についての正しい理解がないからであろう。

 アメリカ政府から日本に公式に集団的自衛権の行使容認を求められたわけではない。しかしながら、アメリカの思惑は日本に集団的自衛権の行使容認をするようになって欲しいとしている。なぜならば、アメリカだけでの防衛負担に耐えられなくなってきたからだ。NATOに対してもそうであるように、なるべく各国は各国の手で防衛負担をして欲しいというのが今のアメリカの政策である。もはやアメリカ一国で世界を管轄できる時代ではない。日本は日本でやってもらいたい(ただしアメリカの管理の下で)という意図がアメリカにはある。しかし、これはアメリカ側の都合であって、日本の都合ではない。

 今の日本国は現在の日本国憲法と日米安保で防衛できる。外国での邦人保護や外交官護衛は現状の個別自衛権と警察権で十分可能だと思う。憲法解釈を変えことは必要ない。戦後の日本が、そうしたことができなかったのは政府と外務省の分析や判断が間違っていたからであり、日本国憲法第九条のせいではない。

 ところが、今の政府はこれを憲法のせいとし、では憲法を改正するのかというと解釈の変更でやろうとしている。安倍内閣は現行憲法を改正することなく、一内閣の政策として憲法の制約を無力化しようとしている。これがどれだけ危険なことかわかっているのだろうか。まともな近代国家ならば、こうしたことはやらない。これでますますこの国は「普通の国」ではなくなっていく。

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