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May 06, 2014

サムスン電子の収益低下

 韓国は今、危機的な状態にある。危機的な状態とは旅客船の沈没事故による韓国社会全体への信頼感の低下のことではなく(それもあるが)、韓国経済のことだ。

 4月29日のブルームバーグはこう報道している。

「世界最大のスマートフォンメーカー、韓国のサムスン電子 の1-3月(第1四半期)のモバイル部門の売上高は5四半期ぶりの低水準にとどまった。新興市場で中国メーカーが機能満載の低価格品で売り上げを伸ばしている。 」

 サムスン電子という韓国のいちメーカーの売り上げが減っているとしても、それが韓国経済全部の低迷につながるわけではないのではないかという声もあるだろう。ところが、今や韓国の経済を支えているのはサムスン電子と言ってもいい。韓国にはサムスン電子以外にも大きな財閥系企業は数多くある。その中でサムスン電子が韓国の経済全体に与える影響は大きい。サムスン電子の収益が伸びれば韓国経済の収益は伸び、サムスン電子の収益が落ちれば韓国経済の収益が落ちる。サムスン電子と韓国経済は一蓮托生なのである。このへん、ソニーや日立がどうなろうと、とりあえず全体の経済はびくともしない日本とは違うのだ。

 ブルームバーグの報道では「サムスンは高位機種ではアップル、低位機種では華為技術などの中国勢と厳しい競争に引き続き直面している」と述べているが、スマホの高位機種でのアップルとの競争にはまずかなわない。というか、サムスン電子は高位機種のスマホでの市場には入っていくつもりないし、入れない。サムスン電子は独自技術で商売をしているわけではないからだ。

 もともと日米の半導体摩擦により、日本は半導体の20%を輸入しなければならなくなったため、韓国企業に半導体製造のノウハウを教え、韓国製の半導体を輸入することにしたことで、サムスン電子は半導体事業で急成長を遂げ、後に日本の半導体産業を追い抜くようになった。半導体事業で成長して、日本企業との合弁で液晶パネルや薄型テレビなどに大規模な投資を行い、家電分野にシェアを広げていった。スマホがブームになるとGoogleのアンドロイドOSを搭載したスマホを開発し、低価格のスマホ販売で一気に躍り出た。

 家電の時そうだったようにスマホについても、先行企業の製品を徹底的に分析し、日本企業などから技術とエンジニアの両方を高給で引き抜き、巨額な広告宣伝費を投じていく、これがサムスン電子のやり方だ。財閥企業なので、そうしたことがトップダウンですばやく判断し実行できるのが韓国企業の強みである。

 しかしながらこのやり方では、当然のことながら中国の企業が性能的にそれなりのスマホを販売するようになれば、あとは価格競争になり、価格競争では中国には勝てない。日本企業がたどった道を、サムスン電子はもっと早く走り抜けていったようなものだ。日本企業には独自技術を作る技術力があるのでまだ未来への道があるが、サムスン電子にはそれすらもない。サムスン電子は日本の製造業以上に、基本的なビジネスモデルを転換させることの必要にせまられているのだ。

 そして、今回の旅客船の沈没事故であるこの事故により、イベントや団体旅行がキャンセルになり、韓国社会全体の消費心理が萎縮しているようだ。この事故により60%台を維持していた朴槿恵大統領の支持率は40%台に急落したという。興味深いの韓国メディアに「日本に学ぶべきだ」という声が出ているということだ。日本の安全管理の意識の高さと韓国のそれとを比較し、我々は大きく遅れていると指摘する意見がメディアにいくつか出ている。

 中央日報に東京特派員のコラムでこうしたものが載っていた。この記者が東京に赴任して間もなく、2012年のゴールデンウィークに石川県から東京ディズニーランドへの深夜バスが運転手の居眠り運転で壁に衝突し乗客7人が死亡、38人がケガを負った事故が起きた。事故後の日本の国土交通省のバス会社への厳しい対応やマスコミの報道を見て「東京赴任後まだ1年にもならない特派員の目には、日本社会の対応がとても大げさだという気がした」そうだ。ところが、今回、韓国での旅客船の沈没事故が起こり、2年前はオーバーだと思った日本の対応は至極まっとうな正しいものだったと述べ、日本を絶賛している。

 ある時は侵略者・略奪者としての日本を批判し糾弾する、またある時は先進国としての日本を賞賛し、日本から学ぼうとする。こうした韓国のマスコミの姿勢はおかしくはないと思う。本来、こうであるものなのだ。反日報道しかないというのは異常なのであり、実際のところ韓国のマスコミは反日だけではない。

 さらに韓国経済を支えるサムスン電子はスマホの低価格競争では、もはや中国の華為技術やレノボなどにはかなわなくなってきている。スマホに変わる主力製品として期待されている有機ELテレビの分野でも同様だ。有機ELテレビへの投資を中断したという。

 ハード的な技術を含めたいわゆる「独自技術」は一朝一夕では根づかない。となると、韓国が進むべき道はソフトウェアで優位に立つことである。しかし、GoogleのアンドロイドOSを使っているように、この分野でアメリカの企業に対抗するのは極めて難しい。日本から技術を低コストで導入できたようにいかなくなっている。サムスン電子も研究開発に多額の投資をしているが、なかなか独自技術が出て来ていない。韓国の基礎科学や科学技術そのものがまだまだのところが多い。韓国映画には優れた作品が多いが、これは日本にも中国にもハリウッドにもできず、韓国でなくてはできないものだからである。しかし、映画産業だけでは韓国経済は支えられない。

 韓国の社会と経済そのものが今、大きな曲がり角にきている。

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