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April 29, 2014

フィリピンの米軍再配備

 今回のオバマのアジア歴訪の最大の目的はフィリピンとの新軍事協定の調印だったのだろう。フィリピンでは1991年に火山の災害によって米軍基地の使用が不可能になり、さらに市民からの米軍の基地反対運動により米軍は撤退していた。それから約20年がたった今、アメリカは再びフィリピンに基地を置くことになった。

 ここで話を大ざっぱに広げたい。

 その昔、大文明帝国であった中国は海洋にはさほど関心は持たず大陸の内陸国家であった。その隣の日本列島にも高度な文明社会があったが、16世紀以後、この島国の政府(幕府)は鎖国政策をしていて、この国もまた海洋にはさほど関心を持っていなかった。そういうわけで、アジアの海洋はどこの国がどうということはなく、明確な国境線があるわけでもなく、複数の国々がおのおの独自のルールでやっていた分権的な場所だった。

 この海域に近代国家的な秩序をもたらしたのはイギリスである。19世紀にイギリス人のトーマス・ラッフルズがマレー半島南端の島に自由貿易港と植民地を創設した時から、アジアの海洋の近代史が始まったと言って良い。以来、アジアの海はイギリスが支配した。このインパクトから日本は明治維新を起こし近代国家への道を進み始める。20世紀のアジアにおける第二次世界大戦の発端の一つには、このイギリスの海洋覇権に対する日本の抵抗があった。その結果は日本の敗北に終わる。

 そして第二次世界大戦以後、アジアの海の支配者はイギリスからアメリカに遷り今日に至る。イギリスにとってシンガポールがあったようにアメリカは日本を置き、アメリカと日本がこの海域の覇権国になった。

 このアメリカの覇権に対抗しようとしているのが、経済大国になった中国である。当然というか、あたりまえというか、アメリカが作った今の世界秩序は欧米や日本にとって都合が良いようにできている。これに対して中国が異を唱えることはしごくうなずけることだ。

 そこに他国が作った秩序がある場合、これを変えるには二つの方法しかない。武力で無理矢理変えるか、合理的な論旨をもって変えるかのどちらかである。今の習近平がやろうとしているのは前者だ。海軍の増強に力を入れ、軍事力をもってこの海域に影響力を持とうとしている。欧米が作った秩序にのっとって時間をかけて合理的な論旨で変えていくより、武力で威圧して変える方が手っ取り早いと思っているのだろう。

 これに対してオバマは今回、アジアの同盟国を歴訪し、中国の行動を牽制した。中国は南沙諸島などでフィリピンの船舶の航海を妨害し、南沙諸島を自国の領土と宣言している。今回のフィリピンの米軍再配備はそれに対するフィリピンとアメリカの対応だ。

 アメリカ本国には中国と全面的に軍事対立する財政がない。従ってアメリカとしては同盟国を有効活用して中国に対抗するしかない。シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピンが共同して中国の前面に立ち、背後にオーストラリアと日本がいて、さらにその背後にアメリカがいるというのがアメリカのアジア戦略である。これはオバマ民主党政権の戦略というより、今後共和党の政権になったとしてもこの方向は変わらないであろう。

 さらにこのことは、もはや沖縄というか日本はフロントラインではないということを意味している。だから日本の在日米軍の実戦部隊は縮小、というかフィリピンやグアムやオーストラリアへ移動するのである。少数精鋭の部隊を配置して、全体的な規模は小さくしコストを下げるのがこれからのアメリカ軍の方向なのである。TPPでのアメリカとの交渉が決裂したことを見てもアメリカの日本離れは大きなものになっている。オバマの尖閣諸島は安保の対象になるという発言はなんら意味を持たない。むしろ中国側を重視した発言であった。オバマは結局、議会の承認がなくてはアメリカは出てきませんと言っていることになるのだ。

 ラッフルズがシンガポールを創設して以来、アジアの海洋の覇権を巡る争いは米中の争いになろうとしている。その一方で経済も科学技術も19世紀や20世紀とは違う世の中になっている。ボーダーレス・ワールドである今の時代は、もはや「覇権国」という概念自体が成り立たなくなっていることも事実だ。今の時代は一国でアジアの全域を支配することはできない。

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