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April 20, 2014

映画『パンドラの約束』を見た

 もととも反原発論者であったロバート・ストーン監督が撮影をしていくにつれ原発推進派になったという原発推進ドキュメンタリー映画『パンドラの約束』を見た。この映画は去年のサンダンス映画祭で上映され、かなりの論争を巻き起こしたということは知っていて、日本でも早く公開されないかなと思っていた。ようやく日本でも公開するということで、さっそく期待して見に行った。

 見てみると、この映画は原子力エンジニアリングの理想論の映画であった。この映画が言っていることを簡単に整理すると以下の5点だろう。

(1)地球温暖化を避けるためにはクリーンなエネルギーである原子力しかない。
(2)次世代の原発は全電源が喪失しても自動で停止する機能があるから安全である。
(3)廃棄物は100万年保存する必要はなく、次世代の原発は廃棄物を再利用し最終的には300年ぐらいの保管でよい。
(4)次世代の原発は核ミサイルの核弾頭を燃料にして稼働することができる。核兵器の拡散を防ぐことになる。
(5)太陽光や風力など再生可能エネルギーは今日の電力需要をまかなうことはできない。

 この映画を見ながら、これを福島の人々が見たらどう思うだろうかと思いながら見ていたが、きっとなぜこういうことにならなかったのかと思うのではないかと思う。この映画は原子力工学が描く輝かしい未来であり、この方向に向かって進んでいくのならば福島県だけではなく原発を誘致した各地の市や街や村は前途洋々たる未来が待っているはずだった。

 はずだった、ということがそうはならなかった、というところに原発の問題がある。カネと時間をかければいくらでも安全な原発を作ることは可能だ。ところが実際のところ、エンジニアの納得ができるまでカネと時間をいくらでもかけて良し、にはならなないではないか。こんなことは原発の話ではなく、世間の至るところである話だ。

 環境問題を解決する唯一の方法は、新しいテクノロジーに基づく原子力発電であるというのが、この映画の中心的な主張だ。この考え方が、そもそもオメデタイとしか言いようがない。電力発電だけ二酸化炭素をださないとして他はどうするのだろうか。この次世代原発の開発には、日本のメーカーも関わっている。日本が原発をやめることになれば、そうした日本の原子力工学の技術が消えてしまうということは事実だろうが、だからなんですかと言いたい。これまで消えた技術は他にも数多くある。

 かりに全電源が喪失しても安全を維持できるとか、廃棄物の処理に膨大な年月がかかることなどは工学的に解決可能であろう。311の原発事故は次世代原発の実用化を待つまでもなく、今の技術でも十分可能だった。しかしながら、工学的にそうなんだから、それですべてオッケーで、さあ原発を推進しましょうという話になるというわけではない。

 最新の原発は絶対に安全な仕組みになっていることが事実であったとしても、事故の可能性を排除することはできない。311以後、原発の事故は起こりえるという前提で考えなくてはならなくなった。事故が起きた場合の住民の避難計画や汚染対策や環境に与える短期的、長期的な影響への対応も必要になる。そうした事故が起きた場合のコストを、この映画は扱っていない。

 技術イノベーションによって原発の安全性は高まり、廃棄物の処理が簡単になったということはよくわかった。では事故が起きた場合のコストは少なくなったのだろうか。半分になったのだろうか。三分の一になったのだろうか。ゼロになったのだろうか。そうしたことについて、この映画はなにも語らない。風力や水力、地熱などでは十分な電力の供給ができないというのも、それこそ今後の技術革新でどうとでもなる話しだ。原発の未来のテクノロジーを信じろと言うのなら、なぜ再生可能エネルギーの未来のテクノロジーを信じろとは言わないのか。

 上記の5点で「私は原発には反対だったけど、よく考えたら原発は正しい、原発推進派に転向しました」と考える人は短絡的思考であるとしか思えない。

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