アメリカがアジアから撤退する日
来週の「核安全保障サミットの場を利用しての日米韓首脳会談で、韓国の朴槿恵大統領は就任後、初めて安倍晋三首相と正式に会談することになる。」
韓国と日本を同じテーブルにつけさせたいアメリカが、安倍総理に河野談話の見直しをしないと言わせることで韓国側に承認させた会談である。アメリカとしては、日韓が反目しあっているのは好ましくない。
以前、「アメリカが朝鮮半島から撤退する日」という記事を書いたが、そもそもよく考えてみれば、中長期的に見てアメリカはアジアそのものから撤退することが十分考えられる。
将来、日米安保が終わる日がくるのならば、それはアメリカ側の意向によるものになるだろう。このブログでは何度も論じているように、アメリカは中国に対して直接的、正面的に軍事力を向かわせる気はまったくない。日韓に中国の防波堤になってもらおうとしている。アメリカの意図は日韓の軍事力の増加であり、できることなら日本と韓国、台湾を防衛する義務から解放され、自国の実戦部隊は中国のミサイルが届かないオーストラリア辺りまでバックしようとしている。朝鮮半島や日本列島はあまりにも中国大陸から近すぎるのだ。
アメリカはもはや世界に自由と民主主義を広げるというイデオロギーで海外派兵をする国ではない。このことは今後、共和党政権になったとしても変わることはない。とにかく、アメリカには巨大な軍事力を行使できるカネがないのだ。
「ヘーゲル米国防長官は24日、2015会計年度(14年10月~15年9月)の国防予算案の概要を発表した。現在約52万人の陸軍兵力を第2次大戦後、最小規模の44万~45万人に削減する。」
もちろん、これらはアメリカの軍事力が弱体化することを意味するのではない。湾岸戦争やイラク戦争のように、大規模に歩兵部隊を運用することはなくなったからだ。実質的には、不用な人員と旧式になった兵器を捨て、改めて最新の兵器システムと少数精鋭の軍事組織に生まれ変わろうとしている。これからもアメリカ軍は世界最強の軍隊であり続ける。重要なのはその軍事力の使い方だ。自由と民主主義のために外国に介入するアメリカはもはや過去のものになったと言ってもよいだろう。
中国に対座するのは日本と韓国、アメリカその背後にいて影響力を及ぼす。東アジアの覇権は、アメリカと中国の双方が分担する。これがこれからのアメリカのアジア戦略になるだろう。イデオロギーありきの政策ではなく、現実的なバランスを重視した政策になる。
さらに言えば、これはアジアだけではなくヨーロッパや中東でも、今後こうした戦略に大きく転換することが考えらる。ヨーロッパ・ロシアはヨーロッパ・ロシアに任せ、中近東は中近東でやっていくようにする、アメリカは「世界」から手を引く。同盟国への遂行義務から解放され自由になる。その一方で、必要不可欠な事態が起きたらアメリカは地球上のいかなる場所にでも影響力を及ぼすことができる。良くも悪くも、これがこれからのアメリカになるだろう。
ところが韓国はそうしたアメリカのシナリオ通りにはなってくれそうもない。韓国の中央日報によると、朴槿恵大統領はハーグで習近平とも会談するという。このへんが韓国のアメリカ側にもつき、中国側にもつく二股外交である。米中の間でなんとかしていこうというのが韓国の対応だ。韓国としては米韓日というスクラムを組みつつ、中国への配慮を欠かすことはない。中国と地続きの隣国韓国としては、そうせざる得ない。
対米依存をこの先もやめる気はなく、日韓関係や日中関係を悪化させるだけの日本もアメリカは困りものだろう。日中関係は東アジアの安定の要である。だからこそ、アメリカは日本国内の政治動向やナショナリズムの状況、日中関係や日韓関係に介入してくるのである。こうした不安が解消しない限り、アメリカは安心してアジアから撤退できないのだ。
そして、徐々にではあるがアメリカは「世界」から手を引き、内政に専念するようになる。おそらく21世紀前半は、こうしたことが続くのだろう。
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