フランスでの「慰安婦漫画」展に思う
1月30日に開幕したフランス・アングレーム国際漫画祭で、元慰安婦がテーマの韓国政府による企画展が開催されたという。初日だけで約600人の見学者が訪れる盛況ぶりだったとのことだ。
しかしながら、どうもよくわからない。
例えば、私がこうした企画展をフランスで見たとしよう。するとどのように思うだろうか。韓国の人たちはわざわざフランスという欧州の地においてまで、旧日本軍が自国に行ったことをフランスの人々に伝えようとするのはなぜなのだろうかと漠然と疑問に思うであろう。
自国のある時代において、日本からこんなにひどい扱いを受けました、ということだけをわざわざフランスで企画展を開いてまで伝える必要がどこにあるのだろう。
歴史の展示なのであろうか。であるのならば、朝鮮史において朝鮮の人々を苦しめたのは李氏朝鮮の王朝とその制度である。他民族からの支配と蹂躙という意味では、中国の歴代王朝からの支配と蹂躙があった。もちろん日韓併合もあった。そのへんの「歴史の事実」はどうなのだろうかと思うだろう。
いや、そうした日本以外がなにをどうしたという話ではなく、日本が朝鮮にこのようなことを行ったということを伝えたいのだ、日本はこの事実をいまだに認めていない、日本はこんなに極悪非道な国なのであるとフランスの人々に伝えたいというのであろうか。しかしながら、伝えられた側は困るだろう。アジアの歴史にあまり詳しくないのフランスの人々は、こんなことが過去にあったのかと初めて知り、驚くだけだ。
せっかくフランスで開催したのならば、フランスでも過去に同じようなことがあった。そうした例をひもときながら、戦争下で起こる人間の異常な心理状態や行動を伝える企画展でもあってよかったはずだ。過去のある時代に日本が朝鮮で行ったことは、今の時代でも、どこでも戦争という状態になれば起こりうることであることを示唆する内容であってもよかった。日本統治下での抗日暴動を描いた台湾映画『セデック・パレ』は、これを見る日本人に感動と内省を与える。韓国映画でこうした映画がなぜできないのだろうかと思う。
この企画展に対して、日本大使館はこのような対応を行ったという。
「日本大使館は1月30日、韓国政府の慰安婦漫画は漫画祭の趣旨に反すると懸念を示す声明文を英語とフランス語で発表。日本政府が韓国側に「心からのお詫びと反省の気持ち」を表明している事実や、日韓政府間で補償問題が解決済みであることが書かれた文書を現地で配布するなどした。」
興味深いのは、日本政府が韓国側に「心からのお詫びと反省の気持ち」を表明しているということだ。これは具体的にはどのようなことなのであろうか。「河野談話」や「村山談話」のことであろうか。今の日本国内には「河野談話」や「村山談話」を認めない政治家、メディアが数多くいる。いまだに総理大臣が靖国神社に参拝をしている国である。こうしたことで「心からのお詫びと反省の気持ち」を表明していると言ってもなんの説得力もない。
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