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January 13, 2014

「靖国問題」が風化する日

 1月13日の産経新聞に岡崎久彦氏が「靖国問題」はこれきりにしようと書いている。日本の政治家の靖国参拝で中国・韓国が騒ぎ、アメリカが失望したと言ってくる、そうしたことをもうやめようと述べている。

 このへん、こうした人々にとって正直なところそうなのであろう。さらに言えば、尖閣諸島問題で中国がアレコレとやってきたりすることも「これきり」にしたいのであろう。日本人がもうこれっきりにしたいと言っても、相手には相手の言い分がある。これっきりにしたいのならば、相手を納得させることが必要なのであって、これきりにしようと言うだけではこれきりにはならない。これきりにしたいのならば、なにが問題であるのかを考えるべきだ。

 これきりにしたいのならば簡単だ。首相は靖国神社へ行かなければいい。これで中国・韓国が騒ぎ、アメリカが失望したと言ってくることは一切なくなる。

 あくまでも日本国の首相が靖国神社に行くことが前提なのであろうか。わからないのは靖国神社参拝にそれほどこだわりながら、太平洋戦争の実質的な総括をしないということだ。

 中国・韓国について言えば「靖国問題」は政治・外交カードであり、国をまとめるスローガン的な意味を持っていると言われているが、最近ではそうでもなくなってきている。中国も韓国も若い世代は日本の首相が靖国神社に行こうが行くまいがどうでもよくなってきている。靖国参拝に騒ぐ中国・韓国という図式はもはや古くなってきている。

 むしろ気になるのは、嫌中・嫌韓であることが愛国心の発露になっている日本の側だ。靖国参拝に中国・韓国が騒ぐことがなくなったら、こうした人々はどうなるのであろうか。

 中国・韓国が「靖国問題」で騒ぐことにより靖国神社が政治的にホットな話題の場所になっている。仮に中国・韓国が「靖国問題」で騒ぐことをしなくなるとしよう。するとどうなるか。マスコミは靖国神社を取り上げることはなくなり、「靖国問題」は話題にもならなくなる。靖国神社に参拝する政治的意味はなくなり、誰も関心を持たない靖国神社に政治家も参拝などしなくなる。個人的な意思のある人やごく普通の神社の感覚で来る人だけになる。かつての国策神社であった靖国神社は史跡的な場所になり、数多くある神社の中のひとつの九段下にある神社になり、日頃は静かで閑散とした良い場所になるだろう。早くそうなって欲しい。

 何度も繰り返すが、日本の首相は靖国神社に参拝しない。中国・韓国は「靖国問題」で騒ぐことをしない。この二つだけで「靖国問題」は風化する。靖国神社は英霊が眠る静かな場所に戻れる。

 「靖国問題」はもうおしまいにしよう。

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Comments

靖国問題について考える。

1.加害者側はすぐに忘れるが、被害者側は忘れることは無い。
例えば、「いじめ問題」。いじめた側はそもそもいじめという意識は持っていません。しかし、いじめられた側は心に傷を負い、中には自殺という悲劇につながります。
歴史を見ると、「豊臣秀吉の朝鮮出兵」。日本人の多くはどういう戦いがあったか詳しくは知りません。一方韓国では国民のだれもが詳しく知っています。
一部の日本人の中には朝鮮出兵を正当化する人がいます。スペインが明を征服し、日本に攻めてくるのを防ぐためとか(戦争当事者はいつの場合も防衛のための戦いといいます。)、町を焼き尽くしたのは朝鮮側であったとか(自分の城下町を焼き尽くすのは日本の戦国時代でも常套手段)、とにかく盲目的に日本を正当化する人たちです。
日中戦争も同じです。靖国問題を正当化する人は、他人の家(国土)に土足で入り込んだことをすっかり忘れているようです。父母や祖父母を殺され、国土を荒らされた被害者側は、末代まで忘れることは無いでしょう。韓国における豊臣秀吉の朝鮮出兵の様に。
このような、民衆の根幹のところにある“マグマのような怒り”を日本人は忘れるべきではありません。日本の総理大臣が戦争の首謀者が祀られている靖国神社を訪問し、中国政府がそれを非難する。そうするとこの“マグマのような怒り”が目をさまし、火がつくというわけです。
中国政府がこれを利用している側面もあるかもしれませんが、もともとの原因は、戦争の首謀者が祀られている靖国神社に訪問した総理大臣です。日本の総理大臣は民衆レベルの潜在的な“マグマのような怒り”を忘れるべきではありません。

2.A級戦犯
靖国問題を正当化する人たちは、そもそも東京裁判が不当なものであって、当時の国際法に照らして不当であったと主張しています。
それならなぜアメリカ、イギリス、中国など東京裁判の関係国に、東京裁判は不当なものなので、これを改めるよう働きかけないのでしょうか。江戸時代に締結されたいわゆる不平等条約を、明治政府は各国との交渉を何年もかけて行い改正してきました。そんなことは無理?そうです、無理なのです。無理と考えるなら、東京裁判(A級戦犯)を受け入れるしかないのです。
このような議論が日本国内で続くのは、日本が戦後処理をしてこなかったことに他ありません。先の戦争で日本は負けた。この敗戦責任をだれがとったのでしょうか。太平洋戦争開戦当時、アメリカと戦争して勝つとは、内情を良く知っている当事者はだれもが思っていなかった(一部軍部やメディアにあおられた国民は勝つと信じていたでしょうが)。
東京裁判を不当だとする人たちは、アメリカから徴発されて真珠湾攻撃を行ったという。だからといって勝てる見込みのない戦いにつき進んだ責任をだれも取らなくていいわけではない。
沖縄戦以降戦局が絶望的となり、だれの目にも日本が負けることを認識していた。それなのにソ連に仲介を頼むとか、ポツダム宣言を無視するとか、当時の政府として無策を続けた。これにより原爆や空襲により多くの民間の命が失われ、戦地では多くの軍人の命が失われました。この不手際の始末はだれがするのか。攻めを受けるのは当時の指導者に他ならないでしょう? ほとんどの指導者はA級戦犯とダブります。敗戦責任が当時の指導者(A級戦犯)にあるとことはだれの目にも明らかです。
ですから日本国内ではA級戦犯と言うのははやめて、敗戦責任者と言うべきだと考えます。敗戦責任者となれば靖国神社側も合祀する根拠がなくなります。

tsuneさん、

秀吉の朝鮮出兵もそうですが、倭寇の存在も(実際は倭寇は日本人だけではなかったのですが)東アジアの歴史の中での日本人のイメージ形成に大きく影響しています。歴史的に言えば、東アジアでの日本人、倭人、倭奴の一般的なイメージは「ずるい」「ひきょう」といったものです。日本人は日本には武士道があり世界でも特殊で高度な精神文化を持っていると思いがちですが、日本の武士道を高く評価するというのは西洋人ぐらいです。

当然ですが同じアジアの人々は、日本の文化も数多くあるアジアの文化のひとつであるというぐらいの認識しかありません。むしろ日本以外の東アジア圏は中国の儒教文化こそ最高の文化であると思っていましたから、日本の文化的地位は低いものでした。その倭人たちが20世紀になって「王道楽土」とか「五族協和」とか「大東亜共栄圏」とかいった儒教的なスローガンを持ち出してきたのですから、中国から見ればお笑いものだったでしょう。

明治の日本は、過剰なほど、とにかく外交に気をくばっていました。外交で失敗すると国が亡ぶとさえ思っていたと思います。司馬遼太郎がいうところの「小さな町工場みたいな日本」が、欧米列強を前にしてなんとか生き残ろうと必死に模索していました。徳川幕府を滅ぼし、明治国家を作った人々は自分たちが作ったこの国はいかに小国であり、弱くて脆いものであるのかをよく知っていたのだと思います。だからこそ薄氷を踏むかのような感覚で周囲の国々の動向や反応に気をくばり、日本に不利なことになることはできる限り避けようとしました。そうした痛々しいまでの現実感覚があったからこそ小国日本が日露戦争で大国ロシアにかろうじて負けることはなかったのだと思います。

そうした外交センスを、昭和になってこの国は失くしました。平成になっては影も形もなくなったようです。自分が参拝したいから参拝した。靖国神社に参拝するのは当然であり、当然なことを行ってなにが悪い、非難する国がおかしい、かのような総理大臣の行動や発言は明治の政治家なら考えもしなかったでしょう。

そうした尊大さ、横柄さ、驕り、周辺国への配慮のなさ、思考のなさ、現実感覚のなさ、国際的な外交のセンスの欠落が先の戦争での敗戦を招いたのです。私は安倍総理の靖国参拝を「こんなことをしているとまた戦争をやる国になる」とは思っていません。「こんなことをやっているとまた戦争に負ける国になる」と思っています。

中国がどうとか、韓国がどうとかではありません。中国・韓国がなにを言おうが言うまいが、平成の日本の首相は靖国神社には行かない。これが日本の安全を守り、先の大戦での英霊を敬い、日本国の平和への意思を世界に示すものであるとなぜ思えないのかと思います。

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