中国の防空識別圏問題
中国の防空識別圏について、11月30日の新聞では「そもそも同盟関係にある米国が中国の一方的かつ衝突を誘発するやり方で防空識別圏を設定したことに関し、日本と連携して反対することは当然のことだ。」とあり、「民主党政権で崩壊した日米関係を立て直してきた安倍晋三政権の成果の1つといえる。」と書いていた。
ところが翌日の12月1日、防空識別圏を通過するアメリカの民間航空機に中国側への飛行計画提出を促す方針を米政府が決めたことを知ると、一点して驚愕のムードとなり「日本政府は米当局の対応注視」になった。「日米対応割れる」なのだそうである。いかにもアメリカ様頼みの日本政府の右往左往ぶりが見えるようだ。安倍政権は親密な日米関係を立て直したのではないのだろうか。
このブログで何度も述べているように、安倍政権で最も離れたのは日中関係でもなく日韓関係でもない日米関係である。同然のことであるが、アメリカと日本でなにを国益とするかは違う。隣に中国がある国と太平洋で隔たれた国とは違う。
アメリカは民間航空機に中国側への飛行計画提出を促すことにしたとしても、それはアメリカの話であって、日本は日本で決めればいいだけのことだ。中国側はこの騒動で本気で日本・韓国とぶつかる気はない。
ただし、安倍首相が明日来日するバイデン米副大統領との間で識別圏騒動について日米はこれを認めないという共同声明を出せなかった場合、実質的には中国の防空識別圏の設定はアメリカが了承したということになり、東アジアにおける中国の影響力が一層増すことになるだろう。
もちろん、アメリカも中国の防空識別圏を認めることはない。しかし、ではどの程度の反対をするかということであり、アメリカは中国に対し強固な対抗措置をとることまではしないであろう。さらに言えば、アメリカの対中国政策のポリシーはこれまで通り変わっていない、一貫している、ぶれていない。
この防空識別圏のポイントは東シナ海ではなく、次に一方的に言ってくると思われる南シナ海の防空識別圏の設定である。いうまでもなく、これらは中国によるアメリカへの威嚇である。しかしながら、威嚇と言っても例によって国際社会の常識から見て幼稚な威嚇だ。その幼稚な威嚇を日本にではなく、アメリカに向けていることを意識する必要がある。
現在の防空識別圏のルーツは、第二次世界大戦以後アメリカが設定した。以前、中国は日本は第二次世界大戦以後の世界秩序に挑戦しているかのような発言をしたことあったが、第二次世界大戦以後のアメリカが作った東アジアの世界秩序に挑戦しようとしているのはまぎれもなく中国である。日本はこのことについて、国連で堂々とスピーチしても良い。日本は、おかしいことをやっている相手(中国)に対して、堂々とその非を咎めるべきであり、アメリカの威光にすがり、自分たちと同調しないアメリカに不満を持つようなことはやめるべきだ。
中国が防空識別圏の設定で相手にしているのはアメリカである。アジアの覇権をめぐって米中が争っている。その間にあるが日本や韓国なのだ。この防空識別圏の設定について、本来は日本と韓国が共同で宣言を出すべきだ。ところが、今の日韓関係ではそうしたことができない。こうした時こそ日韓の連携が必要なのにである。日本も韓国もそうしたことをしていない。朴槿惠をオバサン外交と笑っているいるが、オバサン外交で困るのは韓国自身もそうであるが、日本も隣国がそうしたことでは困るのだ。日本は韓国を笑っている場合ではない。韓国がしっかりしていなくては、日本は中国・ロシアと直接に対座することになる。それを恐れたが故に、日韓併合をしたのではないのか。中国がやっていることは幼稚で横暴なことだ。しかし、その幼稚な横暴さを助長させているのは脆い日韓関係なのである。
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