よくわからない日本の中国防空識別圏設定への対応
12月13日の産経新聞の記事によると
「政府は13日の閣議で、中国による防空識別圏設定に関し、日本の航空会社が飛行計画を中国側に提出しない場合でも、「直ちに安全上の問題はない」とする答弁書を閣議決定した。」
そうだ。この「直ちに安全上の問題はない」の根拠は中国の程永華駐日大使が「民間機を含め、飛行の自由を妨げるものでない」と言ったからだということのようだ。
いち駐日大使が「安全だ」と言ったから、中国の防空識別圏の中を日本の航空機が飛んでも「直ちに安全上の問題はない」とするのはいかがなものかと思う。ようは日本国は絶対に飛行計画を中国側に提出することはしない、したくない、のであろう。その理由はいち駐日大使の発言でも、なんでもよいのだろう。日本国政府の閣議は、いち駐日大使の発言で決定されるもののようだ。
この国の政府が言う「「直ちにナニナニの問題はない」というはまず信用できないと思っていい。なにしろ、政府は福島原発事故でメルトダウンの危険性はないと言い続けてきた。放射能汚染についても「直ちに健康上の問題はない」と言い続けてきた。そりゃあ軽度の放射能汚染は「直ちに健康上の問題はない」であろう。
この中国の程永華駐日大使の「民間機を含め、飛行の自由を妨げるものでない」発言を政府は公式発表していない。公式発表をすれば日本国民だけではなく国際社会が知ることになり、いち駐日大使の発言であっても中国政府は無視することはできなくなる。中国は、その通りにせざる得なくなる。こうなって初めて「直ちに安全上の問題はない」と閣議決定することができるはずである。
日本政府はなぜそうしないのか。なぜ隠していたのか。
アメリカが強行な反対をすることはなかったので今回の中国防空識別圏は事実上「認められた」という形になった。もちろん、中国にも勝手に防空識別圏を設定する権利はある。ただし、そうするにしても、あまりに唐突で一辺倒のものであったためアメリカを含む周辺国は認めたくなかっただけなのである。このへん、中国はやり方的に上手くなかった。
上手さで言えば、アメリカの対応は上手かった。防空識別圏を設定については遺憾を表しながら、その一方で事務的な処理としてこの空域を飛ぶ民間航空機の飛行計画を中国に提出するようにした。そして、アメリカが中国の防空識別圏を認めたわけではないというポーズだけはとる。ポーズだけはとって、中国に対して正面から反対することはしない。日中間のゴタゴタにも一定の距離をもって離れる。この対応は上手い。
韓国は当初は中国の防空識別圏の設定を認めないとし、日本と同じく航空各社に対し飛行計画を提出しないよう求めた。しかしながら、韓国政府は韓国と中国が領土権を主張する済州島を含めた新たな防空識別圏を設定し、飛行計画書の提出については航空各社の判断に任せることに変更した。これも、これである意味当然の事務的手続きであり、これも上手いと言えば上手い対応である。
唯一、日本だけは飛行計画書の提出は単なる事務的手続きではなく、国家のメンツにかかることになるらしい。これももちろん、日本はそうするのであるのならば、そうするでよいと思う。防空識別圏と領空は別のものであり、防空識別圏だからと「勝手に」入ってきた日本の民間航空機を中国は打ち落とすことはできない。
しかしながら、では、上記の話に戻るが、その「直ちに安全上の問題はない」とする根拠を、いち駐日大使がそう言ったからで済ますのはなぜなのであろうか。日本は中国に対して独自の対応をとる。それはそれで良いのであるが、その基盤となる部分があまりにもオソマツではないかと思う。
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