4月10日の産経新聞での岡崎久彦氏の特別寄稿「第2のニクソン・ショックはあるか」はたいへん興味深かった。対米従属論者の筆頭と呼ばれる岡崎久彦氏はこう書く
「第2期オバマ米政権の外交チームの最近の言動を見ていると、かつてのニクソン・ショックのような日本頭越しの米中接触が訪れそうな懸念を禁じ得ない。」
日米同盟の強化を言う人々にとって、日米の対中政策は一体でなくてはならない。日本とアメリカは密接に協力し、お互いの共通の「敵」である中国に対抗する。日本が中国に軍事的に威嚇される時に同盟国であるアメリカは速やかに日本を防衛してくれる、というのが彼らの主張である。
ところが、だ。何度も言うが、ところが、である。
対米従属筆頭の(しつこいか)(笑)岡崎久彦氏でさえもが、どうも、最近のアメリカを見ていると、アメリカは中国に対抗しようという意思はなく、日本のことなどほっといて、アメリカは自分たちで中国と手を組むのではないかと岡崎氏は言っているのだ。
岡崎氏は書く。
「オバマ、バイデン正副大統領、ドニロン大統領補佐官、ケリー国務長官の言動を見ていると、第2のニクソン・ショック、つまり日本に断りなしの対中接近がいつあっても不思議ではないように思う。」
アメリカには前科がある。ニクソン・ショックである。1971年にニクソンがソ連とは不和であった中国に、敵の敵は味方であるとばかりに訪中し毛沢東を会談した。アメリカは、それまでは国民党の中華民国を中国の正統な政府とし、中国共産党政府を承認していなかったが、この訪中で米中共同宣言を発表し、毛沢東の中国共産党政府を事実上承認した。このことは日本政府にはなにも知らされてはおらず、日本は対中政策においてアメリカと一体で共同して中国に対抗し、東アジアの秩序を維持していくものと思っていたが、このニクソン訪中により、それが幻想にすぎなかったことを日本は思い知ったのであった。
これと同じようなことを、オバマはやるのではないかと岡崎氏は危惧している。私に言わせれば、危惧するもなにも、そもそも日米一体なんてものは日本側の勝手な幻想にすぎないのだから、日本の対米従属の人たちから文句を言われてもアメリカは困るであろう。
岡崎氏は、相も変わらずというか、アメリカが台湾問題について中国に譲歩すると、すぐに中国が台湾を占領するかのように書いているが(だから、台湾問題についてオバマは中国に譲歩するなと岡崎氏は書いている)、経済的に見れば中国も台湾ももはやひとつであり、大陸中国が台湾を軍事占領した場合、大陸中国の経済、及び世界経済が受ける被害は計り知れないものがある。オバマが台湾について習近平になにを言おうが、言うまいが、大陸中国と台湾の関係は変わらない。
先日、古森氏についても書いたが、今や対米従属の人々からも、こうした見方、考え方が言われるようになってきている。対米従属の人々でさえ、アメリカの方向は中国との全面的な対立ではなく、対中協調であり、経済を重視する方向になっていることに触れざる得なくなっているということなのである。アメリカは対中関係を悪化させることは避けようとしている。だからこそ、アメリカは日本を無視して中国と接近する可能性は十分にある。
中国に対して日米は一体ではない。親米ポチであろうとなかろうと、今のアメリカを見ていれば誰でもそう思うだろう。これが真実だからだ。
私は問題はここ、つまり、日米は一体なのか、そうでないのか、ということではなく、中国に対して日米は一体ではないことをまず前提として、それで日本はどうするのかを考えるべきだと思う。はっきり言えば、アメリカの対中関係と日本の対中関係は本質的に、というか地政学的に、別のものなのである。日米は中国に対して同じにはならない。一体になりたくてもなれるものではない。
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