『サバイビング・プログレス - 進歩の罠』
渋谷のアップリンクでドキュメンタリー映画『サバイビング・プログレス - 進歩の罠』を見てきた。いわゆる「成長の限界」を現代文明に警告する映画である。
1980年代にNHK番組で『21世紀は警告する』という番組があった。このまま、この文明が今のままで進んでいくと様々なところで破局的な危機になることを述べた番組だった。当時、高校生だった自分にとって、この番組は衝撃的だった。もう21世紀はこの世界はダメだなと思っていた。
そのダメだなと思っていた21世紀になってもう10年以上がたった。
『21世紀は警告する』が放送された1980年代、さらに言えば1970年代の頃からこうした「成長の限界」論はあった。あったというわけで、つまり40年間同じようなことを言われ続けていたが、未だに人類は地球全体を「ひとつ」の「有限なワールド」と思うようになっていない。世界は、むしろアメリカも含めて自国のことで手一杯になっている。今、どの国も経済問題に直面している。世界のどの国の指導者たちも、自国の国民がどんどんものを買うようにするためにはどうしたいいかと悩んでいる。消費者の購買意欲が高まらなければ、この大不況からの脱却はないと言われている。その中で、この映画は消費を制限せよと言っているのだ。
もうひとつ、最大の問題は中国の経済成長だ。20世紀の後半あたりから、将来、中国が経済成長し、アメリカや日本のような暮らしをするようになったら地球資源は枯渇すると言われていたが、それが本当になる時代になってしまった。この映画でも、中国の映像が数多く出て来る。
中国の観光ツアー業者の人が、映画の中のインタビューで出てくる。お金持ち相手に、車を何十台も連ねて大陸奥地への観光ツアーを行うビジネスのようだ。ものすごい山岳の景観の中とかを車が延々と続いて走っていくのだ。風光明媚な場所で停まり、ツアー客たちは記念撮影をばしゃばしゃと撮っている。ツアー業者の人は先頭車を運転し、カーナビを完備した車の中で、時には携帯電話で指示を出す。携帯電話かけまくりである。いわば、自動車、カーナビ、携帯電話というテクノロジーを使いまくり観光案内ビジネスをやっているわけだ。子供頃は貧乏だったが、今では豊かに暮らしていると言う。こんな暮らしができるようになるとは思っていなかったと言う。
映画のシーンは、この人の実家に移る。この人の父親は大学の教授だそうだ。このお父さんが、今の中国は経済発展はしているが環境破壊がひどいということを言うと、息子はそんなことを言うと不機嫌になると言う。この息子は、自分たちがやっている「豊かな暮らしになること」が、その一方では環境汚染を招いているという事実を知ってはいるのだろうが、考えたくはないのだろう。このシーンは印象深かった。ようするに、今の中国の13億とも14億とも言われる人々は、みんなそうなのだろうと思う。ある意味において、この映画で述べられているその当事者のひとつは、紛れもなく中国なのであるが、仮にこの映画を中国で上映したとして、見る人がいるのか、というところにこの問題の深さがある。
豊かな暮らしになることが、なぜ悪いと言われるのかというと、別に誰もあんたが豊かな暮らしになることが悪いと言っているわけではないのだが、みんながみんな、豊かな暮らしをやろうとすると、結果的に有限な地球資源を食いつぶすことになる、というわけで、じゃあ、あんた、地球資源がなくなってみんな滅んでもいいつーのか、というわけで、話は堂々めぐりになる。
先進国の経済に規制をかけることは、まず不可能だろう。資本主義は規制、規則、制限を嫌う。自由経済のイデオロギーは強い。
映画では、生物工学による食料の人工製造や劣悪環境でも生きていけるように人間がなることや、他の惑星を植民地にすることが挙げられていたが、そんなことはこれまで何度も繰り返してきたことと同じだ。解決にはならない。映画もこれらが解決策だみたいなことはいっていない。結論はなく、映画は終わる。
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