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March 29, 2013

NHKスペシャル『ロボット革命 人間を超えられるか』を見て

 先日の日曜日の17日に見たNHKスペシャル『ロボット革命 人間を超えられるか』は興味深かった。というのも、つい最近『機械との競争』(日経BP社)という本を読んだばかりだったからだ。エリク・ブリニョルフソンというMITのスローンスクール経済学教授が書いたこの本は、失業者が減らない原因は技術の進歩が進み、人の労働が機械が行うようになり、結果的に人々の就業機会を奪い失業をもたらしているのだと述べている。

 雇用の低下は、人々の購買力を下げる。では、一部の高給取りがじゃんじゃん消費をすればそれでいいではないかと思うかもしれないが、数少ない者たちが高額の消費をするよりも、数多くの人々がそれなりの消費をしていくことの方が経済全体の規模が広がっていく。一部の高給取りよりも、社会の大多数を占める中間大衆層がどんどん消費してくれた方がいい。昭和の高成長時代の日本はそうだった。

 しかしながら、今の日本はそうはなっていない。ならないところに問題がある。

 なぜ消費が増えないのかといえば、賃金が上がらないということと、非雇用者にとっての雇用機会が少ないからだ。雇用機会が少ないということについて言えば、むしろある。ありすぎる程ある。コンビニとかいった接客業や、福祉や介護の現場の現場では慢性的な人手不足になっている。では、なぜ人々はそうした職業にシフトしていかないのか。それは賃金が安くて、労働環境が良いとは言えないからだ。では、そうした職業の賃金を上げ、労働環境を改善すればいいではないかということになるが、そうはカンタンにはいかず、ここで社会全体的に賃金が上がらないという壁にぶつかる。

 基本的に、ITを使った組織改革や業務改善は人が増えるようにならない。むしろ逆にある作業についている人を減らし、その人を他の仕事に向けることができるようにする。他の仕事があれば良いが、なかった場合、だからと言って日本の会社はその人を辞めさせることはできない。とりあえず他の仕事をしてもらうということで、会社としては今の雇っている正規社員の職は守り、かつ大量の新規雇用は行わないということになる。かくて、正規社員は職はあるが賃金は増えることはない。新規雇用の枠は広がらない。

 今の日本では、新規ビジネスが生まれていくことと、人々の労働の移り変わりができなくては経済成長はない。アベノミクスとやらで、円安にして株価を上げればそれで良いというものではない。

 その意味で、NHKスペシャル『ロボット革命 人間を超えられるか』では、福島原発事故などといった大規模災害に対応できるヒューマノイド型ロボットが数多く出ていたが、そうしたロボットよりも工場の工作ラインでラジオ体操するロボットが一番印象深かった。

 原発事故対応については、事故が起こった今から、その修理をするロボットをこれから開発するなど話にならんなと思った。現状では、事故対応ロボットは使い物にならない。まさに、泥縄だ。事故対応には30年から40年かかるので、この先30年でも40年でもかけて開発して下さいとしか言いようがない。

 むしろ、注目すべきは工業ロボットだった。これほど進歩しているのかと思った。ファーストフード店で販売カウンターに立って客の相手をするロボットももうまもなく出て来るという。まさに『機械との競争』の世界がここにある。番組の中のでロボット学者たちは、ノーテンキな未来を語っていたが、急速な技術の進歩が社会に与える影響について考えなくてはならない。もちろん、それはロボット工学者の仕事ではないが。

 番組で出ていたある企業の工場に導入された工業ロボットは、まだ実験的に数台導入しているだけであったが、すぐにでもひとつのラインを全部ロボットでやることになるだろう。もちろん、ロボットを管理する人とメンテナンス要員は必要だ。そしてうまくいくようだったら、工場内でロボット化できるものは全部ロボットにするだろう。かくて、工場から人はほとんどいなくなり、ロボットが24時間延々と作業を行っていく光景がみられるようになるだろう。当然、すぐにそうなる。

 そうした時代がもうやってきている。

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