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December 2012

December 30, 2012

大河ドラマ『平清盛』とは何だったのか

 2012年の大河ドラマ『平清盛』の平均視聴率は12.0%(関東地区)と、大河ドラマ史上、過去最低を記録したという。ようするに不人気な番組だった。

 不人気な番組だった理由のひとつに多くの人々がよく知らない時代だったということが挙げられるだろう。「よく知らない時代」というのがあるということは「よく知っている時代」もあるということだ。では、「よく知っている時代」とは何かというと、言うまでもなく戦国時代と幕末であろう。

 では、なぜ戦国時代と幕末が「よく知っている時代」なのかというと、大河ドラマで一番多く扱った時代だからであり、つまり、何度もドラマになっている時代であるということだ。それらのドラマを数多くの人々が見てきたが故に「よく知っている時代」になっているというわけだ。言ってみれば、ただそれだけのことだ。

 歴史ドラマが「よく知らない時代」を扱うことができないのならば、永遠に戦国時代と幕末しか扱うことができず、従って、永遠に「よく知っている時代」と「よく知らない時代」はそのまま変わらないということになる。もちろん、「よく知らない時代」の歴史ドラマをやってはいけないというわけではなく、大いにやってかまわない。ところが、どうも視聴者の大多数が「よく知らない時代」であるのならば、視聴者の大多数がわかるようにしなければならないという暗黙の常識みたいなものがあるようだ。

 おもしろかったのは、『平清盛』にはそんな意識はまったくなかったということだ。テレビ番組という表現である以上、数多くの人々に見てもらいたいという意識は当然あっただろう。それはごく普通の感覚だ。その一方で、『平清盛』の制作側はこれまでにない新しい試みをやるという意識があったと思う。新しい試みである以上、良かった回もあれば、なにがなんだかわけのわからない回もあった。いわゆる、お茶の間で家族みんなで安心して見ることができる安定した古き良きNHK大河ドラマではまったくなかった。

 後に日本と呼ばれることになるこの国で、なぜそれまでの院政や摂関政治では世の中が成り立たなくなったのか、なぜ武士の政治権力が出現したのか、天皇王権と武士権力の関係はどうだったのかなどといった疑問から見ると、『平清盛』はそれらがよくわかるドラマでもなかった。

 しかし、大河ドラマは日本史の講義ではない。後はこのドラマ見た各人各人で、あの時代がこういう時代だったようだという漠然とした感覚を持てば良いし、さらに興味と関心がある人は自分で勉強していけば良い。

 もはやテレビは「見たい人が見る」「わかる人はわかる」番組であっていいと思う。視聴率がどれだけ低かろうと、ツイッターでは番組スタッフと固定ファンの視聴者が盛り上がっていた、でいいと思う。今の時代は、テレビは数多くのメディアの中のひとつのメディアにすぎない。そのことを視聴率が大河ドラマ史上最低のこのドラマは身を以て示していたのである。

 平清盛は、これまで日本史の中で悪役という扱いだった。最初の武士政権を樹立したのは源頼朝及び関東武士団であり、平家一門は貴族化した堕落武士のように扱われてきた。それは鎌倉時代以後の軍記物語、特に「平家物語」と一連の義経ものが作ったイメージだった。宋を中心とした東アジア経済圏に着目した場合、悪役であった清盛が実はグローバルな世界観を持った希有な人物だったということになり、日本の歴史観が一変する。これがリアルな世界では、中国が日本を抜いて世界経済第二位になり、中華経済圏が大きく発展していることと重なり、歴史観と世界観がこれまでのものとはまったく違う新しいものへと変わる。

 『平清盛』には、その新しい世界観を示すきっかけがあったと思う。2012年の大河ドラマ『平清盛』は終わったが、21世紀の大中華圏はこれから本格的に発展していく。800年前、この経済圏に着目した男がいたということを教えてくれたのが『平清盛』だった。

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