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November 03, 2012

洋上の岩っころのこと

以下のrobitaさんのブログ「幸か不幸か専業主婦」の2012年10月28日 (日)の記事「目をさませ」へのコメントです。長くなったので、自分のブログに載せました。

robitaさん、

 村上春樹さんは「東アジア地域における最も喜ばしい達成のひとつは、そこに固有の「文化圏」が形成されてきたことだ。そのような状況がもたらされた大きな原因として、中国や韓国や台湾のめざましい経済的発展があげられるだろう。」と書かれていますが、これはなにも中国や韓国や台湾がめざましい経済的発展を遂げた現代だけの話ではありません。

 私たち日本人が倭人と呼ばれ、穴を掘って住居にして暮らしていた時代から、東アジアには中国文明を中心とした広大な中華文化圏があり、今日に至るまでずっとあり続けていました。東アジアでそのことを知らなかったのは私たちだけです。その文化圏の中に日本国の経済と文化を組み入れ、広く交易を行い、さらなる発展をしようとしたのが平清盛や足利義満です。

 この数千年間、東アジアに脈々と続く中華文化圏に住むみなさんが、これまで漠然と思い続け、今もなお思い続け、これからも思い続けていくだろうということが「釣魚島は、どこの国ものかと言えば、こりゃやっぱ中国だろうよ」ということです。

 昔から中国のものってどこに書いてあるですかとか、島の上に表札とか置いてあったんですかとか、しかるべき組織に書類を出したんですか、まず証拠を出せよ!!とか言われるかもしれませんが、そんなものはありません。あるわけがありません。

 とある洋上に小さな無人島があり、その付近の漁師さんとか船乗りさんとかが目印にしてきて、その近くの大文明国がたまたま中国だったから「この島は中国のもんだな」と思いましたという漠然とした庶民の感情です。その近くの大文明国がインドだったら「この島はインドのもんだな」と思ったでしょうし、ペルシャだったら「この島はペルシャのもんだな」と思ったでしょう。アジア的な領土概念というのは、そうしたなんの根拠もない漠然としたものです。

 その、アジア的領土概念というものが良くない、そういう根拠もない漠然としたものでは困ります。きちんとした近代の国際法に基づいての話をして下さい、というのはよくわかります。領土問題は近代の国際法に基づくべきですし、尖閣諸島についてもそうであろうとしているわけですが、その一方で、大陸中国だけではなく、東アジアの中華文化圏に住むみなさんには、そうしたアジア的な感情が漠然としてあります。日本人が「そんな感情など知ったこっちゃない」と言いましても、我々が倭人と呼ばれ洞窟の中で原始的に暮らしていた(しつこいか)(笑)その昔から、尖閣諸島は海の上にあり、みんなでその島々を営々と使ってきたのですから。

 そして、そうした漠然とした意識がある上で、21世紀の今日、日本が尖閣諸島を実行支配しています。別に尖閣諸島が日本の領土であろうと中国の領土であろうと、大陸中国とか香港とか台湾とかシンガポールとかに住むみなさんは別にどうでもいいなと思っているんですけど、それでもやっぱり大声で「尖閣諸島は日本の領土だ!!おまえ達、勝手に入ってくるな!!」って言われると、なんかムカッ腹が立つな、ということなんだと思います。

 だから、戦後60年間、自民党政権は、国内的には「尖閣諸島は日本国の領土である」としながら、中国には「どの領土かわからないので、お互い正面から扱わないようにしましょう」でやってきました。中国側もそうです。国内的には「尖閣諸島は中国の領土である」としながら、日本に対しては「お互い正面から扱わないようにしましょう」でやってきたんです。日本も中国もこれは難しい問題であることがわかっているので、周辺諸国に向かって「尖閣諸島はうちの領土である」と堂々と言うことはしてこなかったんです。

 何度も申しますが、尖閣諸島は日本国が実行支配をしています。尖閣諸島は日本国の領土になっています。このことは石原都知事が「東京都が買います」と言う前からそうでした。石原都知事が何を言おうと、尖閣諸島は日本国が実行支配をしていました。尖閣諸島は日本国の領土になっていました。では、都知事はいったいなんのために「東京都が尖閣諸島を買います」と言ったのでしょうか。これは「東京都が尖閣諸島を買うぞ!!どうだ!!文句あるか!!」と言いたいがためにやったとしか思えません。実際、ワシントンでこのことを最初に言った時、石原さんはそう言っていましたね。文句ありますか、と。

 この、アメリカのワシントンDCで、しかも日本語で言っていた「文句ありますか」は、一体誰に向かって言っていたのでしょうか。当然のことながら、アメリカ人に向かってとか、国際社会に向かってではありませんね。中国人に向かってでもない。これは、同じ日本人に向かってこう言ったのだと思います。

 中国に対して、なんかこー外交的弱腰な態度の政府に向かって言ったのだと思います。軟弱なおまえらとは違って、オレは毅然とこういうこと(東京都が尖閣諸島を買うこと)やるぞ、文句あっか!オレはこうやって尖閣諸島は日本の領土だと公言してはばからないぞ。どうだ、オレ様はすごいだろう、ということです。ようするに石原さんの私憤ですね。石原さんの私憤から始まったのが、今回の日中間の騒動です。

 政府はこの東京都による尖閣諸島買収に慌てふためき、事態を収拾するために国が国有化するということになったわけですが、結果的にこれが中国政府のメンツをつぶしたことになり、今回の日中間の不和を招きました。その後、中国各地で反日デモが起こり、日系企業は多大な損害を受けたことはマスコミで報道されて、よくご存じのことだと思います。

 石原都知事は何が間違っていたのか。中国を怒らせたから間違っているわけではありません。石原都知事は日中関係に不必要な混乱を招いたから間違っているのです。石原さんいち個人の私憤で日中関係が悪化しました。竹島にやってきた韓国の李明博大統領と同じですね。迷惑以外のなにものでもありません。

 日本政府は「尖閣諸島は東京都が買おうと買うまいと、日本国が実行支配しています、文句あるか!騒ぐんじゃねえ!」とむしろ石原さんにそう言うべきだったのではないのですか。中国のメンツを保ちつつ、日本国の実効支配を粛々と続行していけばいいのです。

 なんで中国のメンツを保たなくっちゃならならないのか、日本の領土であることを公言して何をはばかることがあるのかと言う声があります。特に民主党政権になってから、この声が強くなりました。要するに、この領土問題の実情を知らないのです。その意味では、民主党政権も石原都知事も同じです。みんな、「ここはオレの土地だ!おまえ達、勝手に入ってくるな!文句あるか!」と言いたいのでしょう。

 中国の兵法書「孫子」に次の一節があります。「利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず。」利益のない争いすべきではない、得るものがない争いはすべきではない、さしせまった危険がなければ争いはすべきではないということです。しかしながら、今の日中間は、双方にとって利益のない争い、得るものがない争い、さしせまった危険のない争いをやっています。いっそのこと尖閣諸島で日本と中国の政治家を集めて、孫子の勉強会でもやったらどうでしょうか。中国のみなさんはご先祖様に学ぶべきだし、日本人は倭人の頃の昔に戻って中華に学ぶ意識を持ってもらうのがいいのではないでしょうか。そうすれば、ああっこんな洋上の岩っころのことで、日中双方が争い合うのは愚かしいことだなと気がつくことでしょう。

 台湾は領土権の主張というよりも、漁業権の主張をしています。この海域は、日本の排他的経済水域内になっているので台湾が操業することができないのです。これはへんな話ですね。この場所は、昔っからみんなで漁業をやってきたのですから。「おまえ達、勝手に入ってくるな!!」と言われると、やっぱりムカッ腹が立ちますよ。先祖代々漁をやってきた海で、なんで漁ができないんですか。

 地下の埋蔵資源はどうするのですかと言えば、これは本当に埋蔵資源があるのかどうか不明です。あるのかどうか。あったとしても、どのくらいの量なのか。よくわかっていないものをあてにして、他国と戦争をするのですか。もし周辺海域で原油などの資源が出たら日本と中国の企業がビジネスとして話し合えばいいんです。国がしゃしゃり出る話ではありません。ナショナリズムの話ではありません。

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Comments

こんばんは。
一読しての印象は、日本への悪意が感じられるということです。
まず文体からして、日本の言動にやたらと「!」をつけ、いかにも傍若無人であるかのように印象づけていますね。ところが中国に関しては「日本の乱暴な態度に困っている」みたいな印象を持ちます。逆でしょう。中国のほうが明らかに乱暴なのはみんな知ってることですよ。

>「釣魚島は、どこの国ものかと言えば、こりゃやっぱ中国だろうよ」ということです。<

これめちゃくちゃですよ。
アレキサンダー大王がアジア・アフリカまで支配していたからといって、「トルコやエジプトはマケドニアのものだろうよ」って通ります?
ローマ帝国が広大だったからといって、「ヨーロッパのほとんどはイタリアのものだろうよ」とはならないですよねえ。
帝国として東アジアに君臨していた時代の中国と共産主義中国は別物ですよ。
世界中のあちこちで戦争を含むさまざまないきさつがあって近代的領土版図ができあがったんですよね。それを根拠にしなければ、現実の秩序はどうやって保てばいいのでしょうか。

>大声で「尖閣諸島は日本の領土だ!!おまえ達、勝手に入ってくるな!!」って言われると、なんかムカッ腹が立つな、ということなんだと思います。<

日本は粛々と海上警備をしていただけではないですか。こっちが実効支配しているのを知っているにもかかわらず向こうが入ってこようとするから出て行ってくださいと勧告しているだけですよね。それが「お前たち、勝手に入ってくるな!」という怒号なんだ、と仰るなら、「実効支配」っていったいなんなんですか。

>だから、戦後60年間、自民党政権は、国内的には「尖閣諸島は日本国の領土である」としながら、中国には「どの領土かわからないので、お互い正面から扱わないようにしましょう」でやってきました。中国側もそうです。国内的には「尖閣諸島は中国の領土である」としながら、日本に対しては「お互い正面から扱わないようにしましょう」でやってきたんです。<

老獪な共産党指導者の策略ってこんなもんですよ。日本の経済協力がぜひともほしい時には都合よく「棚上げ」を言い、世界第二位の経済力を誇るようになるととたんに自分のほうから棚上げ論を反古にしましたね。

>では、都知事はいったいなんのために「東京都が尖閣諸島を買います」と言ったのでしょうか。これは「東京都が尖閣諸島を買うぞ!!どうだ!!文句あるか!!」と言いたいがためにやったとしか思えません。<

これはひどい。認識不足も甚だしいですよ。中国の暴挙に耐えかねて声を上げたんじゃないですか。
中国政府の人間が尖閣の地主に何度も接触して莫大な金額を提示して執拗に売却を持ちかけていたらしいですが、そうだとしたら地主さんの心が動いたとしても不思議ではありませんね。
中国人に売却されるのを阻止するのは日本としては当然の行動でしょう。

>実際、ワシントンでこのことを最初に言った時、石原さんはそう言っていましたね。文句ありますか、と。<

報告の最後に「文句あっか」と冗談めかしてくっつけた特に意味のない言葉にそんなにこだわるのはおかしいですよ。
それに「文句ありますか」と日本政府に対して言ったとしても、私はヘンだとは思いませんね。

>ようするに石原さんの私憤ですね。石原さんの私憤から始まったのが、今回の日中間の騒動です。<

私憤? 尖閣問題って石原さんの個人的ことがらですか?
まるでこの問題で憤っているのは石原さんだけだ、みたいな言い方ですね。

>日本国の実効支配を粛々と続行していけばいいのです。<

この「粛々」が中国の乱暴なふるまいによって事実上不可能になってきたのです。

>中国の兵法書「孫子」に次の一節があります。「利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず。」利益のない争いすべきではない、得るものがない争いはすべきではない、さしせまった危険がなければ争いはすべきではないということです。しかしながら、今の日中間は、双方にとって利益のない争い、得るものがない争い、さしせまった危険のない争いをやっています。いっそのこと尖閣諸島で日本と中国の政治家を集めて、孫子の勉強会でもやったらどうでしょうか。中国のみなさんはご先祖様に学ぶべきだし、日本人は倭人の頃の昔に戻って中華に学ぶ意識を持ってもらうのがいいのではないでしょうか。そうすれば、ああっこんな洋上の岩っころのことで、日中双方が争い合うのは愚かしいことだなと気がつくことでしょう。<

そうですよ。中国人にこそ、それ言ってください。
中国人は絶対聞きませんけどね。だって尖閣諸島は中国にとってぜひとも「得るもの」なんですから。

台湾との漁業協定の話し合いは比較的簡単に進むことでしょう。台湾は領土というより漁業を安全に行いたいだけなんですから。日本の漁民と同じです。

尖閣の地下資源に関しては中国もそれほど執着していないかもしれませんよ。それより軍事戦略上、東シナ海、南シナ海を中国の海にすることが目的です。

真魚さんの言う「アジア的領土感覚」を中国は持っていません。
持っていない国が尖閣諸島を手に入れたらどうなるか。
排他的になります。それこそ「勝手に入ってくるな!」と、下手すると撃ち殺されます。

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