被災地でのNPO活動が資金不足になっている
東日本大震災の被災地でのNPO活動が資金不足になっているという。
「東日本大震災の被災地で、地元の人たちが多くの復興支援NPOを作って活動している。震災から1年以上たった今も地域に根付いて被災者を支えるが、知名度が低く、寄付を集めるノウハウもないため、多くの団体が運営費不足に頭を悩ませている。団体を支援する仕組みをどう作ればいいのか。」
毎日新聞 2012年05月01日 東京朝刊
震災が起きた当初は、とりあえずというわけで集まってきたボランティアのみなさんが自費でやっていたわけであるが、長期にわたって活動していくためにはどうしても経済的基盤を作る必要がある。つまりは、お金の話である。お金をどう集めるかの仕組み作りが必要だ。
では、どうやってお金を集めるか。当然のことながら、NPOは非営利団体である、つまり、非営利なことをやっている。つまり、やっていることから、その代価としてお金を得ることはできない。
となると、基本、これは寄付でお金を得るしかない。では、寄付でお金を得るにはどうしたらいいのか。
寄付でお金を出すところなんてあるのですかと思うかもしれないが、お金は銀行の口座とかに預けて金利で増やすということだけではない。お金は流通している。
まず、純然たる寄付というものはある。リターンを求めないお金の提供である。税金対策のために寄付を行うということもある。投資、ビジネスとしてお金を出すということもある。この活動にお金を出すことは、めぐりめぐって自分の利益になるということだ。このように出す側には、そうした様々な理由なり背景なりがある。こうした諸々をきちんと把握して整理する必要がある。
「お金をもらう」側、つまりNPO側はどうすればよいのか。これはもうとにかく情報提供であり、情報発信をする。「お金を出す」側に伝わるように伝える必要がある。
しかしながら、NPO側には、こうしたことを専任で行うスタッフがいない。人材がいない。上記の記事にも、このようにある。
「「寄付を集めなければ思うように活動できない」と分かっていても、忙しさに追われて資金を集める余裕がない。」
「「自分から『寄付してください』とも言いにくいんです。自前でなんとかしなくちゃと思ってしまう」
「「どこも目の前の被災者の支援に精いっぱいで、寄付につながるような活動報告をブログにアップする時間もない。こうした団体を側面支援する仕組みが必要だ」」
まさに、「こうした団体を側面支援する仕組みが必要だ」と思う。「お金を出す側」と「お金をもらう」側の間を取り持つ作業が必要だ。そうしたパブリシティ担当、コミュニケーション・ディレクターのような仕事を行う人が必要だ。
なにゆえ、もっと多くの人々、若者たちがこの分野で活躍しようとしないのか不思議でならない。これは、いわゆる従来のメディア業界とは違う。アニメとかデジタルイメージ技術とかも違うし、従来の放送・マスコミ・出版とも違う。いわば、従来の放送・マスコミ・出版業界では扱えない情報の流通が必要になってきている。こういうことをやる人間がもっと増えるべきだと私は思うし、増えなくてはおかしい。
この分野こそIT技術が威力を発揮する分野であり、この分野はここ数年でものすごく進歩している。こうした新しい、個人や小さな組織が社会とコミュニケーションするための技術としてITはこの世に生まれてきたと言ってもいい。
そして、この分野は日本は遅れている。
この遅れているということと、例えば被災地の人々が政府に対して説明がないという感じを持っているのも同じだ。政府と被災地の方々の間に、コミュニケーションができていない。今の時代に対応したコミュニケーションの仕組みができていないからだ。政府もメディアもネットは「放送」「テレビ」「新聞」「出版」とは違う別のものだという認識がない。「放送」「テレビ」「新聞」「出版」の側からネットを見て、ネットは自分たちに付属するもの、補完するもの、みたいな程度の認識しかない。
お金の流通に合わせた情報の流通が必要だ。NPOの活動を、お金の流通の中に位置づけ、活動と情報のコミュニケーションとお金の流れのフロー全体を管理するモデルなりフレームなりを作ることから始めなくてはならない。
しかし、それは新聞社や放送局や出版社などといった従来のメディア産業ではできない。アメリカの場合だと、例えば、NPOならNPOの内部からそうしたことが生まれてくる。本来は、個々の業界の内部から自発的にITを使った動きがでてくるものなのであるが(例えば、ホームページなどはそうだった。アメリカでは自発的に個人や団体や企業が勝手にどんどんやっていったが)、日本ではそうした動きがないか、少ない。このへんに、日本ではこの分野が進んでいない原因がある。
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